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37話 お祭り3

「それは、危険だね。早くなんとかしないと。確認のため、南国に使者を送ろう」


 先程までののほほんとした雰囲気とは打って変わり、彼の表情は真剣そのものだった。


「いえ、それではもう手遅れかと。あの花をご覧いただくとわかるように、綿毛なのです。風が吹けば種が飛んでいき、人々の服に付着します。今日はバザールのために津々浦々からやってきている人も多いため、その人々に付着すればこの国中であの花が芽吹くことになるでしょう。そうなると、被害は計り知れません」


 そう、この花の厄介なところはこれだ。

 前世では、その危険性が明らかになる頃には各地にこの花が咲き乱れていた。慌てて国を挙げてその花を根絶させようと動いたが、抜いても抜いても咲く花に対処のしようがなかったのだ。

 しかし、抜かなければこれ以上の量の花が咲いてしまうということもあって、その花を無視することはできず、かなりの兵力を動員していた。

 その結果、国力は右肩下がりとなってしまっていた。


「しかし、学者でもない君の発言だけを鵜呑みにするわけにはいかないんだ」


「ええ、承知しております。……そうだ。王宮に南国出身の使用人や官僚はおりませんか? 彼らなら、知っているやもしれません」


 ここは私が譲歩する。当たり前だ。どこに王族も知らないような危険な植物に詳しい令嬢がいるというのか。しかも、私の家は南国と繋がりもないため、その花を知っていることがおかしいのだ。

 彼も疑問に思っているはずだろうに、それを言わずにとりあえずは私の言葉を信じてくれているというだけでも驚くべきことだ。


「なるほど、最近登用した者にエリゴバルト出身の者が確かいたはずだよ。すぐに確認させよう」


「ええ、そうしてください」


「マルティン、騎士を導入しここを封鎖しろ」


「御意」


 実物があったほうが良いだろうということで、私が花をもらいに行き、ハンカチに包んだものをマルティンに託した。

 マルティンがいなくなるが、さすがに王族と公爵令嬢を2人きりにさせることはできないため、私たちは近くの警備兵が使用する休憩場に預けられることとなった。



 そうして数時間後にはその花が全て回収されるという騒ぎに発展した。

 マルティンが王宮勤めのエリゴバルト出身の者にその花を見せた途端、顔を思いっきり顰めたそうだ。話を聞くと、私が話したこととほぼ同じようなことを言っていたという。

 そういうわけで、緊急にその花が回収される運びとなったのだ。

 規制対象外であるが故に、花を持っている者たちからその花を回収する際の説明はかなり慎重に行なったそうだ。それに、危険ではあるものの現在この国では規制対象外であるため、配っていたサーカス団の者たちを強制的に捕えることは難しく、任意同行という手段を取ることになった。

 こうして、あの花による被害は最小限に食い止めることができたのであった。

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