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34話 居酒屋3

「その件は置いておくとして、それで? 俺の話は終わったが、なんか話があるみてぇな顔してるな」


 どう切り出そうかと思っていたが、彼から話を振ってくれるとはと、私は身を乗り出した。


「ああ。実は、この前お前が私に何かした後、私が一時的に魔法を使えるようになっただろう。その話について知りたいんだ」


「あー、やっぱりそれか」


 彼ははじめから当たりをつけていたようで、少しの間を置き首を横に振った。


「なんでだ?」


「そんなもん、まだ信頼関係結べてないからに決まっているだろ。あんたも感じているだろうが、これが口外されればヤバイことになる。まあ、今回の件が本当だったら信用度は上がるかもな」


 私から彼への信用度と、彼から私は向けられる信用度のギャップに驚く。私は結構彼を信用しているのに、と頬を膨らませた。

 まあ、ここで食い下がっても無理だということだけはわかっているので、気持ちを切り替えることとする。


「本当なら教えてくれるのか?」


「いやあ? 教えるとなると相応のもんを払ってくれなきゃな」


「た、対価。例えば?」


 エリオットが隣でピリついた雰囲気を発しているのを感じ、私の背中に冷や汗が伝う。


「そうだな。あんたもダリアが監禁されている場所の特定に協力するってのはどうだ?」


「それ以外は無理なんだろう……はあ、わかった。協力する」


「おう、よろしくな」


 彼は私に手を差し出した。私はそれをきつく握る。

 エリオットはその握られた手を睨みつけていた。


「それで、今わかっていることをまとめるか」


 その一、ギルド『赤い放浪者』にコーラルは脅されて、彼の祖母のダリアはどこかの地下に監禁されている。コーラルは定期的にダリアに会いに行っていたが、往復と滞在含めて数時間であるため、会いに行っていた場所は王都もしくは王都近郊である。


「これ、ダリアはいつも別のところにいて、コーラルと会いに来る時だけ、この王都に来ていたとは考えられないのか」


「いえ、あまり良い手だとは思えません。ここの都市は検問所が設置されています。しかも、かなり厳しくチェックされますからね。そんな中、ダリアさんを隠しながら何度も往復するのは難しいはずです」


 私の問いに、王都に詳しいエリオットがそう答える。私はそれを聞き、エリオットが来てくれて正解だったかもしれないと感心して、話を進める。


「じゃあ、ほぼ王都内で決定なのか」


「ええ、そうなります」


「……やけに詳しいんだな? その従者」


 じとっとした目に見られ、私は視線を逸らし慌てて弁明する。


「ええ? ええ、うん。そうだな? 私の近くにいることが多いから、色々と覚えるんだろうな? あはは」


 ーーごめんエリオット、適当な設定を増やしてしまって! 矛盾しないように覚えてくれ!

 私は心の中で彼に謝罪しながら、話を続ける。


 その二、ダリアが閉じ込められている場所では体の先端から硬化するという奇妙な病気が流行っており、ダリアの救出が急がれる。


「まとめるとこれだけか」


「ああ、そうだな」


 シーンとした静寂が私たちを包み込む。

 私は居心地の悪さを感じるも、何もハノーヴァーに振る話題が見つからず口を開閉するにとどまっている。

 そんな折、ハノーヴァーが口を開いた。


「でもやっぱり、聞いたことねえよ。先端から硬化なんて」


 ハノーヴァーがちらりとエリオットを見やるも、エリオットは首を横に振った。知らないということだろう。


「……私が帰った後、医者に尋ねてみよう」


「そうしてくれ」


 私たちはキリもいいのでここで話を切り上げ解散することとなった。

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