15話
ズキズキと痛む頭を横に、どうにか視線を動かし、辺りを観察すると見覚えがありすぎる鉄格子がぼんやりと見えた。どうやら私は牢屋か檻に閉じ込められているようだ。
私はそうして自分に割り当てられた部屋を一巡し、シルパがいないことに気がつき、声を荒げた。
「シルパ! どこにいる!」
口枷はつけられていなかったようで、簡単に発声することができた。それに少し驚きつつ、私は思っていたよりも大きな組織に捉えられてしまったことを気がつく。
小さなギルドでは、主に資金面が理由で被害者が大声を出しても問題ないようなところにアジトを構えられない。違法に他人名義の山の中の人があまりうろつかないような場所に小屋を勝手に建てていたとしても、いつ誰が立ち入ってくるかわからないため口枷をするのが一般的だ。街の中なら尚更、口枷は必須だ。
というか、公爵家または王城の中から情報を入手できるルートを持っている時点でかなり大規模であることは間違いなかった。街道からどれほど離れた場所にアジトがあるのかわからないが、王都からほど近い場所のその辺の山でも名義人や用途をカモフラージュした状態で購入しているんだろう、と当たりをつける。
思考が一区切りついたところで、もう一度彼女の名前を呼ぶと、私の隣の牢屋からうめき声が聞こえてきた。
「お、お嬢様」
「大丈夫か!」
「ええ、なんとか。お嬢様はご無事ですか?」
「ああ! 私はなんとか平気だ!」
よかった。シルパも近くにいたのか、と安堵するものの、彼女の体調はすこぶる悪いらしく、掠れた声だった。
大人ということもあり、私よりも強い力で殴られたのかもしれない。早く帰って、シルパを医者に見せなければ、と考える。
期待薄だということはわかっていたが、周りを見渡し何か脱出の糸口になり得るものはないかと見渡した、その時だった。
私の目の前の牢屋の中に入れられた少年が目に入ってきたのだ。
水色の髪と目に褐色の肌、私は彼を知っている。そうして私はほくそ笑んだ。彼ならば、絶対にここから逃げおおせる算段をつけているに違いない、と。
紛れもない絶対的自信を私に抱かせるほどに彼のことを信頼している。
彼の名は、ハノーヴァー。のちに、脱獄王にして闇ギルドの覇者と呼ばれる男だ。