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処刑された彼女の晨光(しんこう)の物語  作者: コトウラ セツ
2章 シャンタル・ブランシュ公爵令嬢誘拐事件
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13話 異変3

 椅子の下に放置されていた遺体は、あまりにも惨たらしいもので悲鳴すら喉から出てこなかった。

 頭で叫んだまま生き絶えたのだろうか。彼は苦悩の表情を浮かべたまま、絶命していた。


 あまりにも惨すぎる。彼にこんなことをする必要はあるのか。いや、回帰する前にはこんなことはなかった。何でこんな風に変わってしまったんだ?


 私の頭は現実から逃避するようにそんな疑問を次々と投げかけてくる。こうでもしていないと正気を保てない。

 なぜ、いったいなぜこんなことになってしまったのか。回らない頭をフル回転させて考え、考え、そして考え、そうして見つけ出した答えはーー。


 ーーマーニーを使いに行かせたことと、アルバド付近の橋が壊れたことが原因なのか?


 前回もアルバドの橋は壊れていたのかは正直覚えていないものの、前回とはっきり違うことはマーニーを使いに行かせたことしかない。

 私にいつも仕えてくれていたマーニーがおらず、アルバドの橋が壊れてこの道しか使えないことを知っている誰かが、このタイミングで私の命を狙いにきた。そうとしか考えられなかった。

 ならば、誰なんだ。誰が私たちをこんな目にあわせてハミルトにこんな酷いことをしでかしたんだ?

 

 耳を澄ませても馬車の後ろをついてきていたと踏んでいたはずの騎士が追いかけてくる気配はない。騎士もコイツの仲間だったか、買収でもされたのかはわからないが、敵はかなり用意周到にことを運んできたんだ。

 いったいいつから、どうやって、誰が、どこで、情報を入手し、計画を練っていたのか見当もつかない。もしかしたら、私を処刑に追いやった奴らの仕業なのか。

 凄んでしまってはいけない。この空気に飲まれてはいけない。彼をこんなに凄惨な姿にしたのに訳というものがあるのならば、それは私たちが萎縮することを望んでのことだろう。負けてはならない、たとえどんなことがあろうとも。

 そこまで考えて、私はふとした考えが頭によぎった。マーニーの不在や私が王都へ行くことをいち早く知ることができた人物に心当たりがあった。


「なあ、シルパ」


「は、はい。お嬢様」


 頼むからそうでないでくれ、と思いながら私は乾いた口を開いた。私の問いに彼も緊張した面持ちで、答える。


「し、シルパは、私の味方、だよな?」


 私は天に祈るような気持ちで彼女に問うた。

尋ねた途端、涙がぼろぼろと溢れてきた。

 彼女がどう答えたところで、裏切り者ではないと断定することはできないのに。

 袖で溢れ出る涙を拭っていると、目の前にいた彼女が膝をつき、私の目線に合わせたのち、私の両肩に彼女の大きな大人の手を置いた。


「お嬢様。安心してください。私はお嬢様の味方です。一緒に脱出しましょう」


 ーー信じられないと思っていたのに。そんな目で言われたら信じるしかないじゃないか。


 私はさらに溢れる涙を一生懸命拭った。

 真っ直ぐな瞳で、力強くそういった彼女。そんな彼女のことを私は信じるしかなくなっていた。

 そうして数秒の沈黙後、私は頷いた。

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