表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
処刑された彼女の晨光(しんこう)の物語  作者: コトウラ セツ
2章 シャンタル・ブランシュ公爵令嬢誘拐事件
12/45

11話 異変

 結局のところ、『シャンタルに一番似合う紅茶の香りは何だろう』という彼からの話題でお茶会は終わりを告げた。そんなこと私にわかるはずがないので適当に相槌を打ちつつ、早く終われ〜と念じていたのだった。

 年々、彼の紅茶愛好家としての気質はなりを潜めていたことが理由で忘れてしまっていたが、紅茶に関して熱の入った彼の話は彼にお熱だった当時の私も少々苦手だったことを思い出した。当時の私が少々で済んでいたことに現在の私は驚くばかりである。


「シャンタル、今日はすまなかった。また、近々会おう」


「ええ、楽しみにしていますわね」


 名残惜しそうに見つめる彼になんとも思わなかったわけではないが、そろそろ出ないと夜になってしまうため、私は会話もそこそこに馬車に乗り込んだ。


「次は絶対楽しませて見せるから!」


「ええ、楽しみにしていますわ」


 そう意気込む彼に、ああ、私は彼のこういうところが好きだったんだな、と思い起こされる。もし、あんなことがなければ、私は今頃彼と結婚し幸せに過ごしていたのだろうと思うと、どうしてもやるせなさが優ってしまう。

 契約結婚をしているのだから結婚することになるのは百も承知だ。だから、少しでも良い関係性を気づかなければならないんだ、と痛む心を見ないようにして、私は彼に笑顔を向けた。



 城を出てしばらくしたところで、シルパがバスケットを膝の上に乗せ口を開いた。


「お嬢様、サンドイッチはいかがでしょう」


「ああ、いただくよ。お腹が空いていたんだ」


 卵とハムのサンドイッチを手に取り、かぶりついた。


「美味しい」


「それはよかったです」


 シルパは笑みを口に含んだ。

 シルパからもらったサンドイッチは塩味が程よく、口の中に広がる。空きっ腹の私にはちょうどいい塩加減で、食が進んでいく。

 そしてそのまま卵とハムのサンドイッチとベーコンとキャベツと卵のサンドイッチを平らげる頃には、城下街を抜け街道に入っていた。

 シルパと談笑すること数十分、辺りが暗くなる頃私は異変に気づいた。


「なあ、シルパ」


「はい、お嬢様」


「何か辺りがおかしくないか」


 従来、この街道は馬車の往来が激しいはずだ。確かに行きの道でもブランシュ領へ向かう何台もの馬車とすれ違っていた。

 なのに、帰りの道ではここ三十分ほど一台ともすれ違っていない。


 ーーおかしい、何が起きている?


 けたたましい警鐘が頭の中に響き渡る。

 そう、そしてその数分後、私たちは何かが起きていることに気付かされることになったのである。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ