095 先行偵察
艦隊は順調に航宙を続けていた。
「ふじ、月の老人達・・・ 性格変わってないか?」
「そうですか? 昔から茶目っ気が有りましたけど・・・ でも、そうですね・・・ 義体に精神が引っ張られて若返っている感じがしなくもないですね。」
「どうにも落ち着きがな・・・ 任務優先が怪しい感じ? になっているような・・・」
そんな事を言いながらも艦隊は進み続け、その後100年以上これといった出来事も無くまったりした日々を過ごしていた。
因みに最近の十色は『ふじ』や『まち』などに幼馴染や同級生の役を割り振っての学園生活がマイブームになっていた。
そして、遂に先発していた捜索隊が目的の星系に到着する時が・・・
いきなり校内放送が始まり、
「司令、第2捜索隊群の第273捜索隊が目的の星系に到着しました。 現在、ステルス偵察機の準備を進めているとの事です。 通信のタイムラグは約10分です。」
「了解した。 艦橋に上がる。」
十色は早々と支度を済ますと、教室から出ていった。 そしてコア端末のバイオロイド達も一斉に待機ルームへと・・・
少しして艦橋では・・・
「300年前までの通信や暗号規格が判っているのだ。 最初は通信の傍受と暗号解読に力を注いでくれ。」
「はい、了解しました。 近づき過ぎないように注意しつつ、通信電波・放送電波等の傍受信をおこなわせます。」
そして273捜隊は、内惑星軌道まで侵入すると、ステルス偵察機の発進を開始した。
途中、宇宙船やステーションらしき物も発見したが、全体的に数が少なく迂回コースを取る事で接触を避ける事は簡単だった。
そうして情報の収集を始めて数十年、何度目かになる検討会を実施していた。
「どうだった? ふじ・・・ 何かそれらしい情報は見つかったか?」
「はい。 どうやら一時期多数の移民船団が出て行ったようです。」
「ふむ、それが人口が2億程しかいない理由として1番理にかなっていそうだな・・・ 最初は隠れ里の様な場所があるかと思ったのだが・・・ 」
「はい。 そちらの方は可能性としては殆ど無いかと、宇宙船の数が少ないのも移民船として使われたための様です。 何度か大規模増産を計画した様ですが、資源や生産能力を生活基盤の維持に回さざるを得ない事から遅々として進んでいない様です。 全体的に余裕の無さが見えます。」
「今まで集めた情報を見るに、政治がそれ程悪いと言う訳でも無い・・・
生活が苦しいからと、星から出て行く人々にもそれなりの支援をしている。 まぁ、それが原因でもあるが。」
「はい。 それが元で本星の輸送能力が下がり、生産能力に負荷がかかる事で本星の生活が良くならない原因にもなっています。 私から見れば甘すぎですね。 切り捨てる事が出来ないだけかと・・・」
「私も政治向きではないと思うが・・・ 嫌いではない。 少し支援するか・・・」
「はい。 支援可能ですが、地球へ移住する様に誘導しないのですか?」
「「・・・」」
「それなんだが・・・ 今後は地球への移住は気にしない事にした。 勿論、移住希望者がいれば受け入れるが、無理して集める必要は無いと考えている。」
「はい。 それが司令の命令とあらば・・・ しかし、何故とお聞きしても?」




