093 移住開始
その後も話し合いが続けられ、既に1年が過ぎたが・・・ 大方の予想通り、『希望』の人々は未だに結論を出せずにいた。
もっとも十色は、遅かれ早かれ彼等は地球への移住をするだろうと考え、幾らでも悩めばいいと内心にやけそうになるのを我慢していた。
ただ、最近になって本国に帰ろうと言い出す輩が増えてきていて、静観しているわけにもいかないか・・・ と、思い始めてもいた。 (この考えは、十色にとって一番都合が悪い。)
「なぁふじ、このうわさ消せないかな?」
「はい。 ・・・声高に叫んでいる一部の議員を消せば、自然に収まるかと思いますが?」
「えっ・・・ それは社会的に? 物理的に?」
「はい。 司令の望まれる方で対処いたしますが?」
「そうか・・・ もう少し穏便な方法がいいのだが・・・ 何かないかな?」
「はい。 それでしたら、スキャンダルのネタで脅して口を噤ませる方法が・・・ 何でしたら地球への移住を後押しさせる事も可能ですが?」
「おっ、そういうやつを待ってたよ。 それで対応してくれる?」
「はい、お任せ下さい。 但し、この方法には1つ問題が・・・ 我々の関与がばれた場合、反感が生まれ地球移住の話が無くなってしまう恐れがあります・・・ 」
「「・・・」」
「そのリスクは犯したくないな・・・ 他の方法は? リスクの少ない方法で・・・」
「はい。 ではスキャンダルの一部をマスコミにリークしましょう。 そうすれば邪魔な議員は身動きが取れなくなって、移住関係に口を挟む暇なんかなくなると思います。」
「それだ! 地球への移住を後押ししなくても、本国への移住話さえ無くなれば結果は決まったも同然だ。 早速、スキャンダルをマスコミに・・・ 後は上手くやってくれ。」
十色達はこの様な地味な努力続け、話し合いを始めて10年目、遂に『希望』の全住民の移住が決定した。
この事を見越して支援部隊内でコールドスリープ装置を増産、各空母に配備してあったので、早速全住民の収容を始める第104囮艦隊。
以前のプラネット国移住の経験もあり、100万人と数が少ない事もあって、たった1ヶ月で準備を終えて旅立って行った。
そして55年後、艦隊は目的の惑星に到着。 各空母は、移住先の大陸へと降下していった。
「おかしいな・・・ こんなはずではなかったのだが・・・ ふじ、何が原因だ?」
「はい。 『希望』から早く住民を追い出そうと『ファースト』の脅威を多めに語って聞かせたせいかと・・・」
「それか・・・ だから『ファースト』に場所がばれている地球への移住者がいないのか・・・」
「はい。 艦隊に守られているのはどちらも同じ、なら敵に知られていない方が安全と考えるのは・・・」
「そうだな。 地球よりテラⅡを選ぶよな・・・」
そう、十色の頑張りもむなしく・・・ 『希望』の人達は全員テラⅡへ移住したのだ・・・
十色の頑張りが足りないのか、頑張りすぎたのが悪いのか・・・
因みに『希望』各所に埋めてあった宇宙船については、足が遅く第104囮艦隊についてこれないとの理由でテラⅡに来ていない。
これらの宇宙船は、『希望』政府からテラⅡ移住の船賃代わりにと十色が譲り受けたので、付近の捜索隊が月面ドックに回航中である。
「はぁ~ 地球の住民を増やす事には失敗か・・・ 代わりに増えたのはオンボロ船のみとは・・・ 」
十色の努力が報われる日は、果たして来るのかこないのか・・・
雪、降りますね・・・
去年までは、家と隣の空き家2軒分の雪かきでしたが、今年は空き家が増えて3軒分の雪かきをしているので腕がパンパンです。
さて、年末年始ですが・・・
家族で温泉旅行等をする事になっていますので、12月27日~1月3日辺り投稿を休ませて貰います。 よろしくお願いします。




