009 第22次避難船団と判明
翌朝目を覚ました十色は、またいつの間にか布団に潜り込んでいるふじを見つける。
十色が起きだすのに合わせて布団の中から出てくるふじに、
「何でいちいち布団の中にいるんだ?」
「御主人様の温もりを感じ、布団に包まれる・・・ こんな素敵空間、入られずにはいられないに決まっているじゃありませんか。」
「そ、そうか・・・ そんなに気に入っているのか。 でもな・・・ 世間体てものがあるからその姿で一緒の布団はちょっとな・・・ 相部屋でもいいからせめてベッドは別にしないか?」
「むしろ私は、ベッドさえ一緒なら部屋なんかどうでも・・・ それに世間? もう無くなっているのだから気にする必要無いのでは?」
二人の話は平行線のままだった。 会話しながらも身支度を整え食事を終えた十色は艦橋へと・・・
そしてふじが出迎える。
「お待ちしておりました司令。 資料は纏まっておりますのでどうぞこちらへ。」
「わかった。 で、こちらが仕事用のふじか?」
「そうです。 司令呼びと、司令の為なら何でもやるのが特徴です。 ちなみにプライベート用は、御主人さま呼びと、御主人様に甘えるのが特徴です。」
「そ、そうか・・・ さすがバイオコンピューター、キャラの使い分けまでしていたのか・・・ しかし、それだけの能力、もっと別の事に使った方が有意義なのではないか?」
「私達は司令に仕える為に存在します。 これ以上(十色に仕える以上)に有意義な事などありません。」
「 ・・・・・・そうか よし、資料を見せてくれ。」
「はい、こちらです。 それと、モニターには地球からここまでの避難船団の航路と、事故事案等が発生したポイントを表示しています。」
「急造の船団だからか? やたらと事故が多いな・・・
ご遺体を運ぶための特別任務部隊の編成を増強してくれ、任務部隊にはこの航路を逆にたどって地球に帰還してもらう。 その途中、難破船を見つけたら遺体を捜索させろ、一人でも多く地球に帰す。」
「了解しました。 後、事故が多いのは急造の船団ということも有るかとは思いますが、一番の理由は速力の出し過ぎです。 限界速度の倍以上で航行しています。」
「ずいぶん無茶をしたな。 いや、それだけ早く敵から遠ざかりたかったという事か?」
「おそらくは・・・」
ーー限界速度の説明-ー
理論上加速を続ければ速力は上がり続ける。 しかし、速すぎるとデブリと衝突した時に自滅してしまう。
そこで、センサーとスラスターの能力(大きな物体や小さな物が密集しているのをセンサーが捉えてから艦のスラスターで避ける)とシールド出力と装甲の厚さ(センサーで捉えられない微小な物や単体の小さい物はシールドで蒸発させるか、装甲で弾く)で出せる速力の上限を決めている。
出せる速力の上限を限界速度と言い、安全係数をとって通常は限界速度の半分を速力の上限としている。
この避難船団は性能が低い民間船どころか、高性能の軍艦ですらデブリを回避出来ないような高速力で航行していたため、デブリとの衝突事故が起きた。
もっとも、何も無い宇宙空間での衝突事故が起きる確率など無いに等しく、本来なら無視してもいいのだが、運が悪いとしか言えないような事故だ。
この様に何事にも絶対は無いので速力の上限を設定して運航している。
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「そのおかげか、敵との遭遇無しに此処までたどり着けた事を考えるとこの船団・・・ 第何次だ?」
「はい。 残された資料から第22次避難船団と分かっています。」
「そうか、此処までたどり着けた事を考えると第22次避難船団は無事である可能性が高いな。 当面はこの避難船団の捜索を第一目標に定める。」
「了解しました。 では付近捜索隊の配置の見直しを検討します。」
「頼む。 元々の捜索宙域には後々で構わん、新しく捜索隊を編成して送り込んでくれ。 今は此方に集中する。」
「はい。 その辺も加味して見直しを行います。」
その後も各資料を基に話し合いが続けられ、気が付けば夜間タイムになっていた。