089 威圧?
このままでは埒が明かないと、十色は艦隊を動かした。
惑星軌道上には『富士』から分離した『まち丸』と中核部隊2500隻が待機、そして・・・
残りの6万隻を率いて大気圏へと突入していった。
空を埋め尽くし、昼を夜へと変えるがごとく陽の光を遮る 船、船、船 希望と言う名の星に住む人々は・・・ 今、絶望を感じていた。
そして、その中ひときわ大きな宇宙船が地上に降下、街外れに着陸した。
その頃、この星の秘密の部屋では、
「局長! 何事だ! どうなっている!?」
惑星首相がSPと共になだれ込んでくる。
「判りません。 数日前に本国からの密偵と思われる男女の目撃情報がありましたが、この件に関わっているかは・・・ 現在、かの人物の捜索とこちらの宇宙船の起動準備を行っています。」
「あれが本国の艦隊に見えるのか? 大きさも規模も違い過ぎる。 宇宙船の起動準備も準備のままだ! 下手に起動して相手を刺激する事になったら・・・」
すると、やっと部屋に宇宙船が着陸したとの情報が・・・
「直ぐに向かうぞ、何としても話し合いで・・・」
「危険です。 首相はこの場で待機を 現場には私が・・・」
「今、この星に危険で無い所など何処にもない。 それに代理の者では先方の機嫌を損ねる恐れがある。」
こうして惑星首脳部は着陸した大型宇宙船の下に・・・
そして着陸した大型宇宙船『富士』の艦橋では、
「司令、マーカーが艦の周辺に集まりました。 頃合いかと・・・」
「よし、では行くとしよう。」
惑星首脳部が集まる中、大型艦の艦底部の一部が斜めに下がりスロープが出来上がった。
そして中からは男女の2人組が・・・
それを見て顔色を変えた局員が局長の下へ、
「局長、例の男女です。」
「あれが? どういう事だ? 先ずは首相に・・・」
だが、その情報を首相に伝える前に相手が動き出してしまう。
「皆さん、初めまして。 私は『国際連合宇宙軍 第104囮艦隊』、艦隊司令の十色・寺内です。 代表者との話し合いを求めます。」
「ようこそ希望へ。 私は首相のスサルト・シェクターです。 話し合いをご希望との事ですが、それにしてはこの艦隊は少々・・・ 市民も怯えますし、もう少しご配慮頂ければと・・・」
「そうですね。 私もそう思い先日彼女と2人で伺ったのですが・・・ 攫われそうになりまして、今回は護衛を引き連れての訪問となりました。」
「そ、そうでしたか。 早速警察に言ってその者を逮捕させましょう。 今回は出会い方が・・」
ゼスチャーで話を止めた十色が、ある一角を示し、
「現場で見た顔が居ますね。」
そう言われたスサルト首相は振り返り、顔色を青くしている秘密警察の局長達と目が合った。
一瞬で状況を理解した。 理解できてしまった首相は思わずフリーズしてしまう。
すぐ横で交わされていた話など1ミリも頭に入って来なかった。
「司令、人が悪いですよ。」「これも外交だよ、ふじ。」
待つ事数分、再起動した首相が謝罪をしつつ状況説明を始め、犯罪ではなく事故である事を強調し始めた。
そこで十色は、
「お互い状況を整理する必要が有りそうですし、一旦解散しましょう。 明日、また同じ時間に話の続きを行いたいと思います。 この艦は残りますが、艦隊の方は衛星軌道まで引かせましょう。」
「わ、分かりました。 こちらも時間を頂けるのは非常に有り難い。 お言葉に甘える事にしましょう。」
こうして一旦解散となり、街の上空から宇宙船が姿を消したことで騒ぎが収まりつつあったが、秘密の部屋ではこの件が深く追求されていた。
それは日を跨いでまで続けられたが、冷静さを取り戻した一同がそれどころではないと、慌てて出ていった。
そして、その場に残された秘密警察の面々は目が死んでいた。
その頃十色は、悪い顔をしていると思ったら・・・ ふじとイチャイチャし始めて、だらしない顔になっていた。




