087 地上へ
こうして第104囮艦隊の再建を済ました十色は、新たに人類が見つかった星を目指し旅立った。
「ふじ、情報を纏めてくれ。」
「はい。 第137捜索隊により集められた情報を表示します。」
すると正面の大型モニターに、
・惑星の環境は地球に酷似。
・遺伝子サンプルを調べた結果、人類との一致率99.9%以上
・人口は約100万人。
・居住範囲は星のごく一部にとどまる。
・使用言語が英語と酷似している。
・文明レベルが高い。 (星の現状と技術レベルが不釣り合い)
「不自然なくらい、集まった情報が少ないな。」
「はい。 星系内の他の惑星や周辺宙域の捜索に力を削がれたのも一因では有りますが、探っても出てこない情報が多いのです。」
「なるほど・・・ 直接見に行くか、遠隔義体をステルス機で送り込んでくれ。 服装は惑星の平均に合わせてくれ。」
「はい。 義体は司令と私の分、2体でよろしいですか?」
「そうだね、多いと目立つし・・・ 2人だけで行こう。」
こうして街外れにステルス機が降り立った。 早速十色とふじは義体とのリンクを確立させ、機の外へ・・・
「ああ、あちらが街の様だね。 行くとしようか?」
「はい。 司令。」
「ふじ、司令じゃないよ。 十色と呼ばなきゃね?」
「はい。 お約束ですね。 でも、様を付けてはダメですか?」
「うん、不自然だからダメだね。」
「はい、了解しまし・・・ はい、分かりました。 十色。」
「さすがふじ、いい感じだよ。 では改めて行くとしようか?」
「はい、十色。 お供します。」
そして2人は街の中へと・・・
「照明は白熱電球ばかりだね。 LEDどころか、蛍光灯も無い・・・」
「はい。 ネオン管も無いので、全体的に単調で暗いですね。」
そこは舗装された道と裸電球の街灯・・・ そして何処かで見たような古臭い自動車達の姿があった。
「ふむ、自動車が有るな・・・ 内燃機関が有るのか、しかもアスファルト舗装・・・ しかし、調べたところ原油の採掘施設は見当たらない・・・ どっから燃料やアスファルトの原料を?」
「はい。 この街の謎は尽きません。 しかし、今の観測方法では・・・」
「厄介なのは、怪しい施設や建物が見当たらない事だな・・・ 調べる場所が分からなければ、調べようも無いからな。」
「そう言えば、航空関係の物も見当たらないと言っていたな・・・ 現地人に聞いてみるか?」
「はい。 それは御止めになった方がよろしいかと・・・ 相手を警戒させる事になってしまっては、今後の調査に支障が・・・」
「まぁ、普通に考えれば地下に秘密が眠っているんだろうが・・・ 出入口が見つからん。 見事な偽装と言える。」
「はい。 それなのですが・・・ 何ヵ所か街外れに穴を掘り、地中レーダーを使って調べたのですが・・・ 付近に空洞らしき物が見当たらないという結果が・・・」
「そうか・・・ 地下じゃなかったか・・・ となれば、どこかから運び込んでいるはずなんだが・・・」
「はい。 過去100年の観測では外部からの出入りはありませんでした。」
「「・・・」」
「得体が知れんな・・・ 食堂にでも入ってみようと思っていたが、帰るとしよう。」
こうして、早々に帰る事にした十色達だが、人気のない所で複数の人達に囲まれる事に・・・
向こうから手がかりがやって来た喜びを隠しながら、
「何のようだ!」
「お判りでしょう? 本国の連中にウロチョロされては迷惑なのですよ。 一緒に来ていただきましょうか。」
と、突然強い光が周りを照らし皆が目をかばっている隙に十色達は姿を消した。
視力の戻った人達の前にあったのは、
「アダムスキー型UFOだと、宇宙人だとでも言う気か!」
そして、次の瞬間にはUFOの姿も消えていた。 そしてその中では、
「司令、あそこは捕まって秘密基地に連れていかれるのが、お約束と言うものでは?」
「なに、奴らにはマーカーを仕込んだ。 後は奴らを監視すればいいだけだ。 わざわざ捕まってやる必要は無いさ。」
つき合いの悪い十色であった。




