085 月へ
思わぬ被害を出してしまった第104囮艦隊は艦隊を再建する為、月面ドックへと向かう事になった。
ここには浸食から生き残った972隻が残り、一時的に第409捜索隊の指揮下へと・・・ 今後は小惑星監視の任務を続ける事に・・・ それこそ、寿命で廃艦になるまで・・・
今回の事で、対ナノマシン戦における今までの研究と結果ではまだまだ不十分であった事がはっきりとした。 又、研究の続行が決定されたものの・・・ 頭打ちの現在、小惑星で手に入れようとしていた技術の入手に失敗した事でその道のりは・・・
「ふじ、今回は散々だったな・・・ 特に小惑星の正体を知る事が出来なかったのが如何にも・・・」
「はい。 まさか艦隊の3分の1を失う事態になってしまうなんて・・・ 正直思ってもみない事でした。 ここまでの被害は『ファースト』相手の戦いでも出した事がありません。
ナノマシン関係の技術は秘匿すると言っていましたが・・・ 各国への警告はどうなさいますか?」
「そうだな・・・ やはり今回の件は他言無用とする。 警告もしない。」
「はい、了解しました。」
「それと・・・ ふじ、今回の件についての全データをコピーして老人達にも送ってくれ、そして艦隊が月に戻るまでの45年で失った艦船の代わりを月面ドックで建造しておくように言っておいてくれ。 他国へは秘密にする事も忘れずに伝える様に。」
「はい、了解しました。」
こうして、今回の一連の出来事は闇に葬られた。
金星同様、この小惑星も謎が増えただけの様な事件だった。
そして十色は、月に向かう間に各報告を受けていた。
「そうか・・・ 『ファースト』艦隊の観測を始めてから150年、未だに艦隊のアップデートが行なわれた気配が無いか、鑑みるに・・・ 400年前の『ファースト』との戦いで行った電波妨害によって、敵通信システムを上手くジャミング出来た可能性が高いと見ていいな。」
「はい。 戦闘から既に400年以上が経過していますので、ここまで反応が無い事を考えますとほぼ間違いないかと・・・ 今後は『ファースト』との戦闘時には電波妨害が必須と考えますが。 各国への情報共有はいかがなさいますか?」
「ああ、これは直ぐにでも情報を共有する事にしよう。 各国とも少しは緊張が和らぐはずだ。 何せこちらは前回の戦いを基に戦力アップが出来ているが、向こうは以前のままだからね。」
「はい、了解しました。」
「後は、ジャミングに特化した『電波妨害艦』を作ろう。 機能を限定する事で工程を減らし大量生産に向いた物を設計すれば各国と共有した後、直ぐにそれなりの数が作られるだろう。」
「はい。 大戦時代の電子戦機が残っていますが、そちらを基に艦載機になさった方が更に数が作れるかと思われますが・・・」
「そうだな・・・ 電子戦機は作るのが大変だが、ジャミングだけに機能を絞ればそうでもないか・・・ しかし出力が低いしな・・・ 敵に鹵獲されやすい事を考えると・・・ しかし、数が作れるのは魅力だし・・・
よし、『電波妨害艦』と『電波妨害機』両方を作ろう。 下地となる基礎設計を何通りか用意してくれ。」
「はい、了解しました。」
こうして、対『ファースト』用の新戦術と新型艦の開発が始まった。
老人達の乱入が無ければいいが・・・




