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008 遠隔調査

 そして時間になり、十色がモニター越しに見守る中、プローブドローンによる精密調査が始まった。


「先ずは戦艦からか・・・ どんな秘密が見つかるのかな?」


「おそらく、楽しいものでは無いと思いますが?」


「まぁ恐らくはね。 でも何かを期待してしまうんだよ。」


 などと、ふじとの会話を楽しみつつモニターを見ていた十色がいきなり叫ぶように、

「回線切断! プローブとのデータ通信をブロックしろ!」


「はい。 回線閉じました。 現場艦隊は・・・  今、回線切断完了の報告が来ました。」


「ふぅー よし、全艦コア及びデータベースをスキャンしウイルスが混入していないかチェックしろ。」


「司令、大丈夫です。 念の為スキャンも実施していますが、入り込んだ時点でウイルスは隔離しました。 現場艦隊も同様です。」


「あぁ、やはりウイルスか・・・ プローブからの映像のみ一瞬ノイズが入ったからな・・・ ノイズに紛れるタイプかな? バイオコンピューターには効かなかったようでなによりだ。」


「はい、ありがとうございます。 現場の艦1隻のみプローブとの通信回線を再接続、ウイルスの除去とデータのサルベージを行いたいと考えますが宜しいでしょうか?」


「許可する。 慎重にな?」


「はい。 現場艦隊に指示を送ります。」


 その後、全ての艦艇に対する一次調査が終わり、調査結果を纏めた報告が届いたのはお昼を少し回った頃だった。

「やはり戦艦はコントロールを乗っ取られていたか。」


「はい、間違いないかと・・・ ただ、ウイルスを作った者はさほど優秀ではなかった様です。 戦艦は端末から直接ウイルスを仕込むことで乗っ取りに成功しましたが、通信回線を通して他の艦船を乗っ取る事には失敗しています。」


「う~ん 微妙だな・・・ どうせ失敗するなら全部に失敗すればいいものを・・・ なまじ戦艦を乗っ取れたことでこの惨状か・・・ それで乗っ取ろうとした理由は判明したか?」


「はい。 痴情のもつれのようです。 戦艦勤務の技術士官の元カノが輸送船内のコールドスリープ装置内にいたようで、力づくで奪うつもりだった様です。 ただウイルスの出来が良くなかったのか作戦目標の輸送船を破壊目標の一つとして戦艦が攻撃、その為撃ち合いが起こりこの事態になったのが事の真相と思われます。」


「愚かとしか言いようがないが・・・ 恋は盲目、ダメだと判っていても自分じゃ止められなかったのだろうな・・・」


「何か実感がこもっていますが、司令にもその様な経験が?」


「ノーコメント」


「・・・」ふじが見つめる。


「ノーコメントだ!」


「何も言っていませんが?」


「・・・」十色が視線を外す。


「大丈夫、司令には私がいますからネ」


「・・・」

 無言でふじの頭を両手でグリグリする。


「ふっふっふっ~  司令、引っ掛かりましたね。私の頭脳はこの艦のコアユニットに有ります。 頭をグリグリされても全然平気です。」


「ほぅ・・・ ではもっとグリグリしてやろう。」


「ごめんなさい。 そこに頭脳は無いけど痛みは感じるんです。 謝るから許して下さい。」


「まぁいいだろう。 で、避難船団についての情報は?」


「それについては、現在第2次調査として精密調査を実施しているので今しばらくお待ちください。 明日の朝までには報告を纏めておきます。」


「別に朝までなどとタイムリミットを授ける必要はない。 時間はたっぷりとあるのだ、できるだけ多くの情報を集めてくれ。」


「はい。 現場部隊に伝えます。」


「それとな・・・ ご遺体を1か所に集めるよう指示してくれ。 地球で眠ってもらうつもりだ。」


「はい。 現場に伝えます。 ・・・他には何かありますか?」


「そうだな、現場到着までにこの艦隊から10隻程度分離して特別任務部隊を編成しておいてくれ。 内訳は・・・ 資源採取・精製船を2隻、整備・作業船2隻、輸送船2隻、製造船(工作艦)と補給艦は1隻づつとして、後は護衛戦力をつけてくれ。」


「はい、了解いたしました。 もうよろしいですか?」


「ああ、これで止めておこう。 数百年ぶりの手掛かりに少し興奮していたようだ。 時間は幾らでも有る、慌てて指示を出す必要も無いと頭では理解していたのだが・・・ 今日はもう寝るよ、明日は0800に上がって来る。」


「はい。 ゆっくりお休みください。」



 十色は部屋の前に着くと周りを見渡し、ふじがいない事を確認してから扉を開けた。


 すると中から、ふじの声が・・・

「おかえりなさい、御主人様。」


「何でそこにいる・・・ 」


「? もちろんお出迎えする為です。」


「いや、艦橋に残ったんじゃないのか? どうやって俺より早く部屋に?」


「ふっふっふっ~ ふじのバイオロイド端末が1体だけとは言っていませんよ。 仕事用とプライベート用に2体あるのです。」


「そういう事か・・・ ところで、部屋の外に荷物が置いてある。 重たいので私の代わりに部屋の中に運んでくれ。」


「はい、わかりました。」

 ふじが部屋から出ると。 「バタン」、「カチャン」、扉が閉められ、ロックされる。

「はっ、酷いです。 だまされたです。」


 上手くふじを部屋から追いやった十色は、今日一日興奮して疲れたからかすぐに眠りに就いた。


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