071 新たな運用法
月面基地では老兵達が敵艦の残骸に群がっていた。 派遣艦隊が戦場から戻って来る間にプローブドローン等を使い徹底的に調べてあり、技術解析も済んで自軍のアップデートも始まっているのだが・・・ それでも元技術屋の血が騒ぐのか、自身の目で確認しなければ納得できないと集まっていた。
「お前ら何やってんの? 皆には新兵器の開発をお願いしたはずだけど?」
「お帰りなさい、司令。」
「気にしなくていいですよ、ただの気晴らしですから・・・」
「いやいや、データだけでは分からない事もあるのです。 実物を確認しなければ・・・」
「あーだこーだ・・・」
「・・・」
「・・」
「・」
「ホントお前ら自由だよな・・・ で、俺が要望を出していた件はどうなった?」
「グループシステムならテスト艦が完成しています。」
「大元の技術を星団連盟が既に完成させていますからね。 簡単でしたよ。」
「武器などのシステムは従来型ですが、そんな物は何時でも新型に換えられますし・・・」
「そうそう、船体自体データが取れたら作り直すしね。」
「わしら、造れても使えないから・・・ 後は司令に任せます。」
「・・・」
「・・」
「・」
「はぁ~ 分かった。 データ取りはこちらでするよ・・・ 」
こうして十色は新たなシステムの運用テストをする事に・・・
十色は『富士』がアップデートの改修中の為、月面基地のVRルームに来ていた。 早速テスト艦の艦橋と相互リンクを確立すると遠隔指揮を始めた。
「コンピューター、これより運用試験を行う。 システムグループ全艦起動、訓練宙域E-18に進出せよ。」
「了解しました。 全艦、指定訓練宙域に向かいます。」
こうして、各種のテストが始まった。
ーーシステムグループの説明ーー
十色は星団連盟国艦隊が採用しているグループ方式 (10隻を1グループにして1隻に複数のコントロールルームを設置、残りの9隻を遠隔操縦している。)と、テラⅡの第18次避難船団の旗艦『バルミィ』に搭載された3基のバイオコンピューターによる合議制行政システムを参考に今回の方式を考えた。
重戦艦×1隻、戦艦×2隻、巡洋艦×3隻、駆逐艦×4隻を1つのグループとし、重戦艦に2~3基のバイオコンピューターを搭載してグループ全艦のコントロールを行う。 又、残りの艦には旧来型の機械式コンピューターを搭載し、ある程度の自立行動が可能となっている。
因みに、重戦艦と戦艦はコントロール方式と一部の武装以外通常艦と変わらないが、巡洋艦と駆逐艦は大きく様変わりした。
先ず駆逐艦だが、主砲として搭載していたタイプ10やタイプ12といった小口径レーザー砲が全部撤去された。 残されたのは防御用のパルスレーザー機銃のみと徹底して武装を無くした。
船体の大きさはほぼ同じだがジェネレーターを2基から3基に増設し出力を1.5倍、推進機装置の改良で推力を1.2倍、各スラスターは増設などして出力を5倍とし、兵装関係へのエネルギーもシールドに回した事で、シールドの強度は約2倍となっている。
そして、船体内を多くの水密区画で区切り特殊粒子を混ぜた水が封入してあった。 これは敵レーザーにシールドと装甲を撃ち抜かれても、この区画1つで1発のレーザーを相殺する事を目的に新開発された液体防御層である。
次に巡洋艦だが、こちらは主砲として搭載していたタイプ15やタイプ20といったレーザー砲が半分以上撤去され、タイプ20の連装砲×3基の6門と防御用のパルスレーザー機銃が残された。 装備を減らしたことで船体内の空間に空きが出来たので、ジェネレーターを5基から10基に増設し出力を2倍、推進機装置を改良し、スラスターの大幅増設により機動性を向上させると共に、駆逐艦同様シールド強化と液体防御層が装備された。
又、船体中央にレールガンが1門、船体を前後に貫通する様に設置された。 (前にも後ろにも発射可能) 基本的に新開発のステルス弾頭を使用する。 レーザー攪乱膜等の大量散布によりレーザー砲が使えなくなった時の活躍が期待されている。
グループ各艦は集中コントロールされているので、シールド周波数の変調も同期が取れており、密集隊形を取る事でシールドを重ねて強化する事も可能となっており、今回は駆逐艦や巡洋艦を遠隔砲台や追加装甲として使っている。
今後、色々なタイプの艦船を造り、組み合わせを変える事であらゆる事態にも対処出来る様になる事が目標である。
ーーーーーーーー




