066 作戦会議
敵艦隊の近くまで来て派遣艦隊は足を止めていた。
さて、何のひねりも無く正面から戦って良い物か・・・ 十色は敵艦隊の索敵範囲の外で空間圧縮通信を使い各派遣艦隊の司令官と作戦会議をおこなっていた。
「さて、お二人にお送りした最新の観測データと2000年前の地球圏でのデータを見比べてもらうと判ると思いますが、戦艦、巡洋艦等の艦種毎の隻数はほぼ同じです。
又、各艦の艦型もほぼ変わりありません。 この事から、これが『ファースト』の標準編成なのだろうと考えられます。
ただし、艦型の差異についての懸念が有ります。 ただの製造時期が違う事による小規模アップデートなのか、昔の戦争経験を基に各種の強化なり変更なりを行った大規模アップデートなのか・・・
もしこれが過去の戦争を基にしたアップデートだった場合、『ファースト』は倒すたびに強くなっていく事になります。 その場合は、出来るだけ手の内を見せない戦いをしなければこの先立ち行かなる可能性が大きくなると考えています。」
「・・・」
「根拠も無いようですし、正直なところ十色司令は心配し過ぎではないかと・・・ よしんばそうだったとしても、圧倒的な数の差で押しつぶせば良いのでは? 標準編成が1万隻ならば、強化などでは対抗策足りえないだけの数で戦えばいいのです。 我々にはその数を用意する力があります。」
「確かに根拠は有りませんが、ある推測をしています。 もし敵が推測通りの考え方をしていた場合。 各艦のアップデートだけでは無く、艦隊総数も対応して来る可能性があります。」
「それこそ心配のし過ぎだと思いますが?」
「お待ちください。 私は十色司令の言われる推測に興味があります。 考えをお聞かせ願いたいのですが?」
「そうですね・・・ 私は2000年前の戦いで敵の生命体を一度も見かけませんでした。 そして敵艦隊の動きはパターン化されており、機械仕掛けのロボットの様な印象を受けました。
そして、もし私がその様な艦隊を用意するとしたら、どの様な行動をプログラムするかを考えてみました。 その場合、相手に合わせた自己進化能力を盛り込むなと・・・ それに艦隊の艦艇数も相手に合わせるようにするだろうと・・・」
「なるほど、その場合こちらが30万隻で襲い掛かれば、今回1万隻で現れた敵艦隊は次回艦艇数を増やして来ると・・・ それこそ、30万隻以上で来るかもしれないと心配しているのでしょうか?
それでしたら数の優位性が無くなりますが、同数の艦隊による攻撃を行って、敵艦の実際の能力を計ってみるのはいかがでしょうか?」
「そんな余計な手間を・・・ 」
「そうですね。 実際に試してみるのが確かかな・・・ では1護群の101護隊1万隻で『ファースト』に仕掛けます。
各派遣艦隊の皆さんには残りの地球艦隊と共に包囲網を敷き、こちらの攻撃のタイミングでジャミングを開始、戦闘終了迄続けてください。
もし敵がこちらの艦隊情報を仲間に送っていたとしても、これで防げるかもしれません。 まぁ、気休め程度ですが・・・」 (空間圧縮通信を使用している人類側の艦隊にはジャミングは影響を及ぼさないので、最大出力で遠慮なく出来る。)
「正直、そこまで慎重になる必要は無いと思いますがね・・・ 星団連盟艦隊了解です。」
「テラⅡ艦隊了解。 包囲網に参加します。」
「では、これより敵の索敵範囲の外側に気づかれないよう包囲網を展開します。 1週間程を見込んでいますので慎重に行動して下さい。 包囲網が完成しだい第101護衛隊で攻撃を始めます。」
こうして、2000年ぶりの『ファースト』との戦いが始まろうとしていた。
※ 作中では分かりやすく2000年と言っていますが、正確には2200年になります。




