062 特別捜索隊からの緊急報告
「・・・さてと、ではテラⅡに向け出発するか、挨拶回りだ。」
「はい。 山田家ですか?」
「そうだ。 プラネットからの移住者を運んで来る時は、ちゃんと挨拶する暇もなかったからな・・・ それに、我々がテラⅡに着くころには山田家のご夫婦は80も半ば過ぎる事になる。 その次は無いだろうからな、ちゃんと会っておきたい。」
「はい、了解しました。 テラⅡに向かいます。」
「ああ、山田家がテラⅡ移住して40年、我々がテラⅡに着くころには55年だ・・・ やはり時間の流れが違い過ぎるな・・・ 」
「はい。 それでも生きている内に会えるのですから・・・ 安全航宙路が無ければ1000年以上掛かる道のりである事を考えれば・・・」
「随分とマシにはなったな。」
こうして、第104囮艦隊はテラⅡまでの15年の旅を始めた。
しかし、5年が過ぎた頃・・・
「司令、火星人の元母星に向かっている特別捜索隊からの緊急報告です。 重要案件B項目に該当の恐れあり、現在慣性航行によるステルス行動実施中・・・ 指示待ちですが、タイムラグが約1時間有ります。」
「・・・このタイミングでか、データを正面モニターに!」
「はい。 現在もデータ受信中、受け取った分から表示します。」
そこには超長距離からの撮影と思われる光点が・・・ すぐさま補正を受けた拡大画像に切り替わり、ボンヤリとした艦影が多数映し出されていた。
「司令。 艦型識別の結果、敵艦との一致率30.7%。 シングルナンバー艦隊との一致率17.2%です。 今後、詳細な情報が入手出来れば正確性が上がりますが、今はこれが精一杯です。」
「敵、敵ってあの敵だよな?」
「はい。 ファーストコンタクトの相手です。」
「敵も増えて分かりにくくなったな・・・ 今後、この敵を『ファースト』と呼称する。 その旨を関係各所に通知してくれ。 ついでに、この未確認艦隊のデータも一緒に送れ。」
「はい、了解しました。 現場部隊はどうしますか?」
「そうだな・・・ ん? 現場部隊は後発の2個捜索隊か? 先発した3個捜索隊は会敵しなかったと言う事は、事故現場か?」
「はい。 後発の2個捜索隊には火星人の母艦が原因不明の爆発事故を起こした宙域を経由するようにしていましたから・・・」
「ふむ、奴らは火星人を追って来た追跡艦隊だな・・・ 火星人が全滅したと判断して引き返してくれれば良いが、脱出したカプセルの痕跡が見つかればこっちに来るな・・・ 現場部隊は慣性航行のまま現場を離脱、十分に距離を開けてから減速し遠距離からの偵察を実施せよ。 決して気取られるな!」
「はい。 指示を送ります。」
「あの宙域からだと、真っ直ぐに向かってきたとしても星団連盟国の宙域まで200~300年はかかるな・・・ 同盟各国には慌てないよう注意してくれ。 それと、太陽系の第1~第3護衛隊群の30万隻を順次、星団連盟国の中継補給基地に送ってくれ。」
「はい、了解しました。 でもよろしいのですか? 地球防衛の100万隻に手を出して・・・」
「ああ、今度こそ絶対に地球を守ると誓って用意した100万隻だ。 本音では動かしたくないが、今の地球圏に居る人の数は1隻の船で運べる程少ない。 避難は容易だ・・・ だが、星団連盟国にはプラネットからの移住者も居て、10億近くまで人口が増えている。 避難しようにも船が足りない・・・ ならば人類を守る為にやれる事をするまでだ。
・・・だから、テラⅡにも第4~第6護衛隊群を送り込んでくれ。 1人の犠牲者も出さずに『ファースト』を撃退する。」
「はい、司令。 私達にお任せ下さい。」
「本当は、お前達にも犠牲は出したくないんだが・・・ 」
「大丈夫です。 其の為のバイオコンピューターのバックアップ技術です。 皆元通りに出来ます。」
「ああそうだな。 期待しているよ。」 (バックアップが有るとは言ってもそんな体験させたく無いんだがな・・・)
十色は笑顔を見せつつも心の中では・・・




