056 引っ越し祝い
テラⅡに来て翌朝、軽巡の中では、
「皆様おはようございます。 昨日はお疲れ様でした。」
「「おはようございます。 ローズさん」」
「おはよう。 ローズ」
「昨日は遅くまで歓迎会が続きお疲れではありましょうが、本日は周辺市街地と太一さんの勤め先である『バルミィ記念大学』の見学が予定されています。」 (山田家の構成、父:太一、母:よし子、娘:えり子)
そうして、朝食等を終えた山田家の皆さんは、ローズの案内で下部格納デッキに降りてきていた。
「今日は念の為、私が運転しますので皆さん車に御乗り下さい。」
そこにはスバラ社製、マイサイトXYZ搭載のレボォーゲが・・・
車に乗り込みつつ太一が、
「テラⅡではスバラの車が使われているのですか?」
「いえ、この車は地球のご老人達からの引っ越し祝いで頂いた物です。 スクラップからレストアしたそうで、暇つぶしで造ったので使ってくれとの事です。 約2000年前の車ですから、もはやクラシックカーですが、テラⅡの交通管制システムとリンク出来る様に改造してあるので安心してください。」
「ええ~ そんな貴重な物頂くわけには・・・」
「気にしなくて大丈夫です。 500年前に十色司令が初めてテラⅡに来たときに軍用装甲車を使って周りから浮いたという話しをしたら、使ってない車が有ると言って倉庫でほこりを被っていたものを持ち出してきたものです。 レストアしたはいいが、走らす所も燃料も無いと言ってほったらかしでした。 テラⅡならガソリンが手に入るとの事で頂きました。 最悪、電気だけでもそれなりに走ります。」
「はぁ、この車も軍用装甲車並みに目立ちそうですが・・・ テラⅡの車を購入する訳にはいかなかったんですか?」
「「・・・」」
「さて、ゲートオープン。 車を出します。」 (スルーされただと・・・)
案の定、車は悪目立ちをした。 特に大学では出迎えの人達が、テラⅡの歴史よりも古い車の登場に驚愕していた。 (うちの博物館に有る車より古い車だと!?)
そして本人達は気が付いていなかったが、警察が山田家の警備に付けていた黒球の数が増えていた。 (警察では、自家用車が国宝並みと分かって慌てて警備を強化したのだ)
職場案内が予定通りに終わり、次にえり子の通う学校見学に来ていた。
「ようこそおいで下さいました。 お嬢様が本校に通われるとの事で・・・ 」
この時代、勉強をするだけなら学校に行く必要が無く、対人関係や道徳と言ったものが必要だと考える一部の人達向けの施設である為、学校としては生徒獲得に必死である。
その後、スーパーマーケットやデパートを回り (基本的な買い物はネットで注文するので、買い物に来るかどうかは分からないが・・・) 病院や警察署、行政庁舎などで市民証や免許証の書き換え、登録といった手続きを行った。
その頃、十色はロイド船団長達と会合をおこなっていた。
「なるほど、火星人となった連中は侵略者と言うほど物騒では無いと・・・」
「ああ、分かったところでは、彼等は住んでいた星の資源が枯渇した時点で別の星に移り住むのだが、枯渇するまで数億年の期間がかかるし、一つの星にしか移住しない為、極端に数が増えたりしないと言ってる。 我々が危惧する様な、際限なく増殖し星々を侵略しいてく事などないそうだ。」
「確かにそれならば、侵略者と言うほどではないですかね・・・」
「で、今回は資源の枯渇前に気候変動で住めなくなって、慌てて星から飛び出した所を何者かに襲撃された為、ほぼ全滅してしまったと言った所なのだが、この何者かが問題だと考えている。」
「なるほど、十色司令はシングルナンバーだと・・・」
「最初は間違いないと思っていたんだが・・・ データの解析が進むと気候変動自体が作為的に行われたみたいで、シングルナンバーにはそんな技術力は無いし・・・ 本当に正体不明だ。 もしかしてだが、我々が地球圏で戦った相手と同じかもしれないと思い始めている。」
「それは・・・」
「「・・・」」




