055 山田家
そうして1週間が経ち、十色は山田家の人達と話し合いをしていた。
「そうですか。 テラⅡへの移住をご希望との事ですね。」
「はい。 頂いた資料には仕事についても良く書いてあり、一番不安を感じないで済みましたので・・・」
「ああ、客員教授ですね。 まぁ、地球出身の山田さんが地球について教えるのはある意味ピッタリな仕事と言えますね。」
「はい。 しかし、考古学の中に地球学があったのはびっくりしました。 地球は過去の物なのですね。」
「それについては、山田さんご一家に地球人として頑張って貰って、過去のものでは無いと知らしめてもらえれば・・・ 」
「それは・・・ やっては見ますが・・・ 」
「話をしておいて何ですが、そうなったら良いな~ 位の気持ちですので、まぁ軽い気持ちで・・・」
「はい、そういう事でしたら。」
「では、今の地球も見ておいた方が良さそうですね。 軽巡洋艦の試作艦を1隻、専用艦として付けます。 ご家族で1ヶ月程地球を巡るといいでしょう。 軽巡にもバイオロイドがいますので、何かあれば言っていただければ大丈夫です。」
「はい。 ありがとうございます。」
こうして山田家の予定が決まり、1ヶ月後に第104囮艦隊も一緒にテラⅡへ移動する事になった。
それに伴い、部下の老人達は地球圏に留まる事を選び、好きなタイミングでバイオロイド複製体になれるようにと、月面基地に複製システムを設置する事が決まった。
この決定に老人達は、これで何度失敗しても大丈夫、成功するまで続ければいいと大喜びであった。 (十色はそれを聞いて、えっ1回失敗したらもうダメだと思ってたよ・・・ と、驚いていたが、それは内緒である。)
更に月防備隊が新編され、老人達と仲良くなったバイオロイド端末の艦船が護衛隊や補給基地の支援隊から配属替えで編入された。
月防備隊は護衛隊みたいな戦闘艦だけの集まりじゃなくて支援船も所属するマルチ編成にしてあり、部隊だけでの長期行動が出来る様にしてある。 (非常時には、老隊員達の本体が入ったコールドスリープ装置を持って逃げる為。)
そうした準備などをして1ヶ月後、第104囮艦隊本隊は山田家と共にテラⅡに向かった。 十色は老隊員達にくれぐれも自重する様に注意していたが、何処まで言う事を・・・
又、本隊には試作軽巡洋艦が同行していた。 この艦は山田家の一人娘 (えり子)が一月の間ローズと呼んでいたので『国際連合宇宙軍 第104囮艦隊 開発隊群 次世代艦研究局 CL-0001 ローズ』が正式名称となり、えり子が離れたがらない為一緒に行く事に・・・ (実は、次世代艦開発局に所属する1隻だったが、テラⅡへ移動するにあたり管理のしやすさの為、ローズ1隻だけの研究局が作られた。)
移動の途中何の問題も起き無く、十色が複製体に入り直したりしながら15年、艦隊はテラⅡに到着した。 そして惑星の宇宙港に旗艦『富士』と軽巡『ローズ』の2隻が着陸した。
そこには、ロイド船団長を始め関係者が集まっており、
「十色司令お久しぶりです。 ようこそテラⅡへ・・・ と言っても普段コールドスリープしているから、あまり久しぶりの気がしませんが・・・」
「コールドスリープあるあるですね。 さて、今回はテラⅡに山田家の皆さんを受け入れてもらえ、感謝します。 本人達はそちらの医療機関に直接届けました。 予定通り免疫抗体などの検査中で、後ほど紹介させて頂いています。」
「はい、分かりました。 ところで、今回初めて見るタイプの船がいますね?」
「ええ、試作軽巡『ローズ』です。 山田家専用の支援艦です。」
それを聞いてロイド船団長と共に出迎えてくれた人達がザワザワと・・・
「えっ、普通の家を軍艦が支援するの?」
「地球じゃそれが当たり前なの?」
「何かあったら一面火の海になるんじゃ・・・」
「そんな非常識な事は起こしませんから安心してください。 ほら、船に住めば家を買ったり、借家の家賃払ったりしないで済むじゃないですか、その程度ことですから。」
十色の話を聞いて余計にザワザワと・・・
「えっ、軍艦に住むの?」
「地球じゃそれが当たり前なの?」
「家を買うより軍艦の方がよっぽど高くつくんじゃ・・・」
軍艦暮らしが約2000年の十色と一般人の感覚の違いが・・・




