052 スペースポート札幌
富士は順調に降下を続け、無事地上に降り立った。
北海道は比較的被害が少なく、地形が変わるほどの攻撃を受けていない事から、元札幌駅付近一帯を宇宙船の発着場として整備しており<スペースポート札幌>として使用する事になった。
ちなみに、温泉施設は元定山渓の辺りに作られていて、低空飛行する小型機で行き来出来る。 (札幌ー定山渓間の快速スペースポートは作らなかった。)
将来的にはスキー場等も作り、観光地として発展する計画も・・・
早速、一行は富士の発着甲板で小型機に乗り換え定山渓へと向かい、施設に降り立った。
「気のせいか空気が違う気がします。 緑が多いせいですかね・・・」
「おそらくは、それに温泉地の影響も有るかもしれないですね。」
「ああ、言われてみれば少し匂うかな・・・」
「さて、山田家の皆さんは部屋へご案内します。お風呂は部屋だけでなく、大浴場も24時間使えるのでご自由に・・・ 何せ我々以外居ませんから・・・ 食事もお部屋の方へ用意しますので家族だけでゆっくりしながら今後についてよく相談して下さい。」
「はい。 頂いた資料を良く見て今後について決めたいと思います。 こんなに良くして頂いて本当に感謝いたします。」
「「 ありがとうございます。」」
「いえいえ、気にしないで下さい。 我々はこれでも軍人です。 民間人の保護は当然のことですし・・・ 数少ない地球の生き残り同士ですからね、出来るだけの事はさせていただきます。」
そうして山田家と別れた後、十色達は地下に造られた管理者スペースに有る会議室に来ていた。
「司令、いきなり仕事の話ですか? 少し温泉を楽しんでからではダメなんですかね。」
「すまないが我慢してくれ、とても大事な話だ。 仕事の話ではないのだが万が一にも山田家の皆さんに聞かれるとまずいのでここに来た。」
「なるほど・・・ で、話とは?」
「 ・・・お前達、人間を辞める気ないか?」
「「・・・」」
十色はバイオロイドによる技術の進化やバイオロイド複製体について、年齢による制限や失敗の可能性などを説明した。
それを聞いて老人達は、
「ほぉ、そんな事になってたとは・・・ 記憶の複製に上書きとは、随分と凄い事に・・・」
「バイオロイドが新しい技術を開発するようになるとは・・・」
「まぁ、本体が安全なら試すくらいは・・・」
「・・・」
「・・」
「・」
「で、司令はバイオロイドに対して忌避感どころか、イチャエロで親和度UPして人間辞める事に成功したと・・・ ニヤニヤ」
「なるほど、司令はムッツリさんだったと・・・ ニヤニヤ」
「・・・」
「おやおや、司令のお顔が赤くなっていますが大丈夫ですか?」
「今は元の体なんですから、血管が切れないよう注意しないと・・・」
「ふ、ふん。 揶揄いたければ幾らでもすればいいさ。 既に枯れてるお前達じゃムリな芸当だしな。 いや~ ハーレムを堪能できないなんて、可哀想だな~ 」
「「・・・」」
「「・・」」
「「・」」
「フゥ~ まぁ、そっちの話は今は止めよう・・・ で、どうだ? 人間辞めないか?」
「そうですね・・・ 本体に危険は無いみたいですし・・・」
「やるだけやって見ても・・・」
「でも、どうせやるなら少しでも可能性を・・・」
さすがオタク系の老人達、誰も拒絶しなかった。 しかし、試すなら少しでも成功の可能性を上げようと、あーでもない、こーでもないと夜通し議論が続けられ、その日は誰も温泉に浸からなかった。
そこで十色が、
「議論する暇あったら、その分バイオロイドと風呂にでも入った方が成功の可能性上がるんじゃないか?」
「「し、しまった~」」
そう言うと皆、相手をしてくれるバイオロイドを探しに飛び出して行った。
まだまだ元気な老人達だった。




