051 地球人
5時間程経って十色はコールドスリープ装置から出て来た。
「ふむ。 少し体が重く感じるな・・・ 後、思った以上に頭痛が酷いな・・・」
「はい。 重く感じるのはその体がコールドスリープから覚醒したばかりの為かと・・・ 頭痛については、今回記憶の上書きを2時間で行ったのが原因の様です。 負荷が大きかったみたいですので、次回からはもっと長く時間をかけて負荷をかけない様に作業してみます。」
「まぁ、最初だから仕方が無いね・・・ みんなの覚醒までまだ時間があるし、1時間程部屋で休むよ、時間になったら起こしてくれ。」
「はい、了解しました。」
そして1時間が過ぎ、十色とふじは基地の地下に来ていた。 ここでは11基のコールドスリープ装置が覚醒作業中であり、最終工程にはいっていた。
「ふじ、うちの隊の生き残り8人、バイオロイド複製体へコピー出来るかな?」
「技術的には可能だと思います。 ただし、見た目が違うと精神に異常をきたす可能性が高まりますし、運動能力が違い過ぎると本物の体との違和感で事故や精神的負荷が・・・
見た目もですが、皆さん高齢で運動能力が落ちている事を考え、バイオロイドも老人そっくりに仕上げる必要が有ると考えます。
そもそも、条件の整った人でもバイオロイド複製体へコピーが成功かるかどうか・・・ 司令の場合は、バイオロイドへの偏見も無く、精神的、肉体的に繋がりが大きかった事が成功に大きくつながったと考えられます。」
「ええー ふじ・・・ 俺のコピーって100%大丈夫なのかと思ってたよ・・・ 失敗したらどうなるの?」
「失敗はあくまでも複製体に異常が出るだけで、本体は100%安全です。 失敗は千差万別で、最初っから目を覚まさない場合も有れば、途中から精神に異常をきたす場合も十分にあり得ます。
司令を見るに、彼等のバイオロイドへの忌避感を無くせれば、失敗の可能性が減るのではと考えています。」
「そうか、バイオロイドへの意識改革か・・・ 月面基地や地球の温泉施設に居るバイオロイド達に頑張ってもらうか。」 (各施設に居るバイオロイドは、地球圏を守っている護衛隊群の各艦が操作している。 特に艦齢の高い艦が積極的に参加している。)
そうこうしている内に、11名の覚醒が終わり待合室にぞろぞろと・・・
「皆さん、覚醒したてで体調が万全ではないでしょうから手短に説明します。 皆さんが希望していた地球の復興はまだ達成されていません。 しかし、いくつかの惑星への入植に成功しており、それぞれが数億の人口を抱えています。
山田家を始め、皆さんには今後どうするかを再度確認する為覚醒させていただきました。 詳しい話は明日行いますので、今日はゆっくりと休んでください。
それと、施設内の女性は全てバイオロイドです。 分からない事があったら彼女たちに聞いて下さい。」
「はぁ」
「・・・」
「・・」
「・」
覚醒したてで辛いのか、皆はバイオロイドに付き添われ部屋へと・・・
そして翌日、十色は山田親子と部下の老人達を連れ、富士に乗り込んでいた。
「全員体調はいいみたいだね。 これから地球の温泉施設に行くから楽しみにしていてくれ。 特に山田さん一家は長い時間をコールドスリープしていたので、リフレッシュになればいいが・・・ 」
「はぁ ありがとうございます。 ところでどの程度眠っていたのでしょうか?」
「山田家は約2000年コールドスリープしていました。 昨日少し話しましたが、地球の復興こそできていませんが、人類が暮らしている複数の星が見つかっていますので、地球にこだわらなければ普通に生活していけます。」
と、老人の一人が話しかけ、何人かが続いた。
「山田さん、移住した方がいい、あなた方が眠りに就くときに500人以上居た我々隊員たちも皆年老いて死んでいった。 残っているのはここに居るメンバーだけだ。 うちの司令が何か所も人類を見つけていながら地球の復興がなされていないのは、誰も来たがらないからだろう。 ここに未来は無いよ・・・」
「そうだよ、お子さんも居る事だし、ちゃんとした所で暮らさないといけないよ。」
「まぁ、悔いのないようにね。」
「で、司令。 ダメそうですか?」
「はぁ~ お前達は・・・ あぁ、避難民達の子孫にとって、生まれ育った星が故郷だからな・・・ 誰も来てくれなかったよ。
山田さん、資料も揃っているのでよく検討してください。」
「はい、ありがとうございます。 家族でよく話し合ってみます。 所で無人の地球に温泉施設が有るのですか?」
「ええ、今後避難民の子孫達が仕事で一時的に地球圏に来る事が増えそうなので、地球の良さを知ってもらおうと作ったばかりです。」
「地球ですか、久しぶりです。 楽しみではありますが、少し怖い感じもします。」
「そうですか・・・ そうかもしれませんね・・・」
「「・・・」」




