044 拠点建設用の資源採取
昨夜の事を思い出し頭の痛くなる十色だが、さすがはバイオロイドの体、体調は万全だった。
早速艦橋へと上がり、サンドイッチを頬張りながらこの宙域の何処に拠点を建築するか、ふじと検討していた。
「中々悩ましいね・・・ 出来れば安全航宙路の出入口に拠点を作りたい。 しかし、安全航宙路が出来上がるのは何百年も先、測量だけでも後50~60年、そんなに待ってはいられない。 かと言って、さっさと拠点を構築して人類探索の旅に出発しても、拠点から離れた所に安全航宙路の出入口が出来たら目も当てられない・・・」
「はい。 でしたら、仮設基地にするか移動用の大型スラスターを搭載してみてはいかがでしょうか?」
「後の手間を考えると基地にスラスター付ける方が良さそうではあるね・・・ しかし、それだけ大きな推進装置は前例が無いから、新規設計になるけど・・・ 大丈夫かな?」
「はい。 既存の技術の延長線上ですから・・・ 開発の許可を頂けたら半年で仕上げて見せます。」
「分かった。 他にも転用できそうな技術だし、開発を許可するよ。」
そうこうしているうちに時間となったので、十色は空間圧縮通信による会談を行った。
両国からは昨日の今日で全てが決まるわけも無く、幾つかの細かい合意が得られるに終わった。
こちらからは、移動の準備に時間が掛かる事を伝え、移住希望者の募集を止めてもらった。 ただし、200年後ぐらいに移住希望者の募集を改めて行う事を伝えた。
更に、両国に残存する移住時代の古い艦艇の調査許可を貰い、当時の情報を集める事に・・・ 集められた情報は、既に得られている情報と統合され、残りの船団や囮艦隊捜索の手がかりとして使われると共に、両国やテラⅡへは貴重な歴史的資料として渡されることになった。
また、同盟の可否に拘らず安全航宙路の設置と第104囮艦隊の基地建設の同意を得た。 (基地建設場所は両国の領域外であり、安全航宙路出入口も同様であることから、両国議会の承認の必要無し、国家主席の同意を得たのみ)
そして急ぎ伝える必要がありそうな案件については伝え終わったものとして、今後は首脳会談にかわり担当者協議にシフトする事が決まった。 プラネット・星団連盟同士も停戦したばかりで、今後についての話し合いや取り決めなどする事が多く、両国は暫くは会議と調整の毎日になりそうであった。
第104囮艦隊の基地建設には、研究開発に半年、組み立てに半年の約1年を見込んでおり、それに合わせて両国の最終回答期限を1年後とした。
そこで十色は、この宙域に移動してくる際に、大量消費した艦隊資源の補充をする事を決定。 (艦隊戦力増強のために戦闘艦を2000隻造りその分資源を消費した)
付近宙域の掃宙を兼ねて、基地建設予定宙域や、両国の間の小惑星帯での資源採取を始めた。 (両国主席の同意済、作業中に両国の艦船の残骸や御遺体が発見された場合、第104囮艦隊は所属国への通報と回収部隊到着までの現場の保全を約束している。)
最終的に消費分だけでなく、半年後の基地建設に必要になるであろう分も含めての採取となり、支援艦船群と護衛艦が忙しなく動き出した。
そして、旗艦『富士』は『まち丸』と再びドッキングし、偽りの街が息を吹き返した。
「ふじ、今回の作戦に投入された11個捜索隊だけど、プラネット・星団連盟それぞれに1つ残して元の任務に戻しても大丈夫かな?」
「はい。 問題ありません。 こちらで選別と再配置を手配しておきますか?」
「そうだね、後はお願いするよ。 さて、飯でも食べに行くとするか?」
「はい。 お供します。」
二人は偽りの街へと・・・
「あ、ご主人様私を置いて行っちゃダメですよ。」
「そうですよ、私達も待ってたんですよ。」
「お楽しみですね。」
「いや違うよ、ご飯だよ! お楽しみって、まだ昼飯だよ!?」




