041 会談①
「失礼ですが、十色司令は随分とお若く見えますが?」
「ああ、この身体は義体です。 実際は100歳越えのじーさんですよ。 あの戦争から約1800年、コールドスリープを多用してもそれなりに歳をとりますから・・・」 (バイオロイドに記憶をコピーしている事は秘密なので、この様な説明になった。)
「義体ですか・・・ 凄いな、とてもそうは見えない。 それにしても1800年ですか、想像もつかないですが、もしかして当時の戦争体験者ですか?」
「ええ、そうです。 あなた方の避難船団の出発にも立ち会いましたよ。」
プラネット国主席と星団連盟主席が、
「貴方は生きた歴史なのですね。 時間が有れはそのあたりの事もぜひお聞かせ貰いたい所ですが・・・」
「そうですね、私もぜひお聞かせ願えれば・・・ しかし、その前に第104囮艦隊の目的をお教え願いたい。」
「分かりました。 第104囮艦隊の目的は、避難船団を見つけ出し、地球への帰還を促す事です。」
「地球への帰還ですか・・・」
両国の反応はいまいち悪い・・・
「もちろん、強制ではありませんよ。 希望者が居ればの話です・・・ 正直に言えば他の船団を見つけた時に断られた事があります。 一度行ってみたいとは思っても住みたいとは思わないと、今住んでいる星が故郷だと。 あれから1000年以上経っている事を考えれば、当然の事だと納得もしています。」
「そ、そうですか。 こちらの事情も配慮して頂けると知って安心しました。 もちろん希望者が居ないか国民全てに問いかけましょう。」
「我が国も希望者を募りましょう・・・ しかし、今の生活を捨てる判断ができるかどうか。」
「ええ、理解しているつもりです。 それに地球も昔のままとはいかないのです・・・」
十色は地球の現状と敵について、ワープ装置や再侵攻の可能性等の話をした。
「そうでしたか、本当の意味での戦争は終わっていないのですね。 そして地球が最前線になりうると・・・ 」
「そうなると希望者は・・・ 」
「「・・・」」
すると話を変える様に外務大臣が、
「それでこちらの戦艦が凄い理由が分かりました。 敵の再侵攻に備えて戦力の増強をしているのですね。」
「それは、私も思いました。 我が軍の戦艦がまるで子供に見えます。」
「そうですね・・・ 戦後100年が過ぎた頃、今の標準型戦艦であるタイプ46重レーザー砲搭載艦を造りました。 これは従来型の2倍の大きさで、この旗艦の両サイドの船体と同じものです。 更に戦後1500年頃、従来型の6倍の大きさでタイプ51重レーザー砲を搭載した重戦艦を開発しました。 ちなみにこの旗艦の中央船体がそれにあたります。 ですから、戦時規格の戦艦から比べるとこの旗艦は10倍の大きさになります。」
「なるほど・・・ もしもの時に備えて戦力は減らさない方がいいみたいですね・・・ 」
「残念ですな、今回の停戦で軍事費を削減出来ると喜んでいたのですが・・・」
「敵の出現に備える事は大事だと思います。 ちなみに、今の地球圏の防衛戦力は100万隻に達しています。」
「そんなにですか!?」
「・・・」
「両国にこちらの建造システムをお譲りしてもいいですが・・・ 見た所、両国とも独自規格の戦闘艦を運用している様子、自国の技術力の発展や各製造業の保護を優先されるなら、技術データの提供だけしましょう。 正直なところ同じタイプの艦船ばかりだと、弱点が見つかった場合一気に劣勢になってしまう可能性があるので、独自の違うタイプを運用してもらいたいのです。」
「なるほど、これは即答できるものではありませんね。 閣議を開く必要があるので時間を頂きたいのですが・・・ 」
「我が国も同じく・・・ それと参考までに聞きしたいのですが、提供頂ける艦船のデータはどの程度の物になるのでしょうか?」
「基本的に制限を付けるつもりはありません。 今まで地球で造られた全ての艦船データをお渡しします。 ただし、タイプ51重レーザー砲を搭載した重戦艦は他国との共同開発したものなので、我が国の一存でデータをお渡しする事はできません。」
「「他国?」」




