004 新型艦
更に月日は過ぎて・・・
十色は既に目覚め、艦隊旗艦の艦橋にいた。
「司令、センサーが中継基地を捉えました。 現在、我が艦隊は減速作業を実施中、基地周辺のデブリの状況から最微速での進入になります。 接舷は約9時間後を見込んでいます。」(十色の艦隊は商船を改造した物ばかりなのでシールドの強度が低く、速力が早いままデブリに衝突すると簡単にシールドを抜かれ船体に穴が開いてしまう。 その為基地にはゆっくりとしか近づけない。)
「了解した。 ところで・・・ 連絡のあった新艦隊は捉えたか?」
「いいえ。 ステルス性能が高いか、デブリの陰になっている可能性が高いと思われます。」
「そうか・・・ 楽しみは後に取っておくか。」
結局、センサーが艦隊らしい物体をデブリの向こうに捉えるころには接舷作業に入っていて、詳しく確認する時間は無かった。
「敬礼!」1人が号令をかけ、8名全員が敬礼する。
接続チューブから出て来た十色はニヤリとしながら答礼を返す。 と、「なおれ!」号令のもと敬礼を止める。
十色は皆を見渡しながら、「皆元気だっ・・・ 皆老けたな。」
「何でそこで言い直しますか。 もしかして照れ隠しですか?」
「司令も変わらないですね。 しかし、今更私達に人見知りしなくてもいいでしょう。」
「ほんとに、そんなんでよく司令なんかやってられますね。」
「たしかに・・・ 」
「まったく・・・ 」
皆の怒涛のツッコミが・・・
見た目は年寄り達の中に若者が1人と違和感を感じるが、そんなことを微塵も感じさせない確かなつながりがそこにはあった。
一息ついたところで、皆で交通艇に乗り込み新艦隊の泊地に向かった。 が、途中会話が途切れることは無く、特に新型艦の自慢話に大いに盛り上がっていた。
そして、新型艦の格納庫に交通艇が収容され、区画の与圧がなされるとキョロキョロとする十色を先頭に降り立ち、艦橋へと上がって行った。
艦橋から見える艦隊の威容(約200隻程)に十色は少々興奮気味に「凄いな・・・ こんなにたくさん造ったのか。」 思わずといった感じに口にすると、皆が顔をそむける。
それを見て十色は、「なんだ? どうした? 隠し事か? 俺たちの仲じゃないか、ちゃんと言ってくれよ。」 話を促す。
「実は・・・ ここにあるのは艦隊の一部なのです。」
「ほぅ・・・ で、何隻造った?」
「いや、その~ 1万隻程かな~ なんて・・・」
「おい、ジジィがそんな言い方しても気持ち悪いだけなんだよ! 何やってんの? バカなの?」
十色から呆れた視線を向けられて皆が言い訳をしだす。
「事前に送っておいた資料にも書いてありますが、今回の新型艦はユニット構造の船体とユニット等を製造したり、修理・交換する為の製造船や整備・作業船、そしてユニットや燃料・弾薬を製造する為の原料を集める資源採取・精製船、そしてその他の支援船を纏めることで出先での艦隊の整備補給を実現し、いちいち整備の為、基地に戻る必要をなくしたことが特徴です。」
「それで、月面基地の造船所で完成した艦船を自立行動のAI学習を兼ねて順次稼働さていたのですが・・・ 今回初めて導入したバイオコンピューターの自己学習能力が高かったと言うか、とても優秀だったのです。」
「我々は、地球圏の資源などとっくの昔に掘り尽くされているので、たいした量は集まらないと思っていたのですが・・・ AI船は次々と付近に漂う艦艇の残骸を敵味方関係なく回収、分解、再構築をして行ったのです。 鉱石等から資源を集めるのに比べ、既に金属の塊になっている残骸からの回収はレアメタルなどを含め、とても効率が良かった・・・」
「そうしたら・・・ あっと言う間に大艦隊が・・・」
「そうそう、だからわしらは悪くないんだもん。」
「 ・・・「もん」じゃないよ! 1万隻?そんなにたくさん1人じゃ面倒見切れんよ!」
「大丈夫、大丈夫。 1万隻といっても戦闘艦艇はその内2000隻程ですから、その2000隻の戦闘指揮さえ出来れば問題ありませんよ。 普段はAI任せでいいんです。」
「そうか? 本当にそうか? そこはかとなく不安を感じるのだが・・・」
とは言え、既に造られてしまった1万隻、要らないとも言えず十色は受け取ることに・・・