032 テラⅡ
十色は第11護衛隊群新編にあたり、当初地球圏の部隊と同じ標準編成にしようと考えていたが、大型艦思考のテラⅡの艦船(要塞艦は地球の標準型戦艦の5倍の質量が有る。)と見比べると如何にも見劣りしてしまう。
そこで久しぶりに、艦船設計・改造システムを使って新型艦の設計をしていた。 一時期設計にはまり時々改装程度はしていたが数百年ぶりの新規設計、慎重に作業を進めていた。
最初は試しに、標準型戦艦の胴体部分を2隻分縦に繋ぎ両側に駆逐艦の船体を繋げてみたが・・・ 余りに見た目が悪い。
これにより従来のユニットを繋げるだけではダメだと判断した十色は、大型ユニット群の開発から始める事とした。 又、テラⅡとの共通規格のユニットとするためテラⅡ側の担当者も呼び寄せた。
それから1ヶ月後には大型艦用ユニットの設計が終わり、3ヶ月後にはプロトタイプの重戦艦が建造され、さらに半年後には問題点の洗い出しと、それを基にした設計の見直しがおこなわれた。 その後、先行量産型の重戦艦が10隻建造され、十色とテラⅡ側で5隻ずつ運用試験がおこなわれる事になった。
結局のところ、従来型標準戦艦に比べ質量や建造に必要な資材は3倍になったが、攻撃力と防御力は2倍程度とコストパフォーマンス的にはいまいちな出来であった。 が、それでも単艦で見た能力が高い事から重戦艦と言う新しいジャンルの共通標準艦として採用された。
十色の第11護衛隊群についてはこの標準型重戦艦を多数配備した大型艦中心の艦隊となり。
テラⅡでは標準型重戦艦もそれなりに造られたが、推進装置を半分に減らした廉価版の重戦艦がより多く造られ防衛任務にあたる事になった。
ちなみに、『国際連合宇宙軍 第104囮艦隊 第11護衛隊群』に整備補給等を行う専用基地はテラⅡの2つ外側に位置する巨大ガス惑星ジュピターⅡの衛星の地表に作られていて、基地専用の作業船が資源採取や精製、製造などを常に行っている。 護衛隊群は純粋に戦闘艦隊だけで編成されているので、後方支援の基地なり部隊なりが必要となる。
富士の艦橋から補給基地を眺めながら、
「さて、テラⅡに戻って来て1年、やっと艦隊用のインフラが整備されたな・・・」
「はい、後は第11護衛隊群の編制ですが、現在新規製造艦100隻の訓練を行っています。 これら艦艇のAIの成長をもって第11護衛隊群・第A01護衛隊の中核を編成します。 第A01護衛隊の定数1万隻まで建造を続けながら、中核艦の100隻によって訓練とAIの教育を行い、この1万隻の教育訓練が終わった時点で、1000隻ずつ10個のグループに分け、それぞれを第A01~第A10護衛隊の中核として編成します。 後はそれぞれの護衛隊が定数の1万隻になるまで建造と教育訓練を続け、総艦艇数10万隻となった時点で第11護衛隊群の編制完了となります。」
「そうか、我々本隊は最初の100隻の教育訓練が終わり次第出発するので後はAI任せになるが・・・ それでも100年とかからずに部隊編成が完了しそうだな。」
「はい。 ジュピターⅡの基地能力ならイレギュラーな事態が起きなければ85年程で10万隻の建造が完了します。 もし起きても、通信回線越しに遠隔指揮が出来るので、ある程度の事案には対処可能です。 大幅な遅延は起きないと考えます。」
ーー護衛隊群の説明ーー
第104囮艦隊には防衛用の護衛隊群が有ります。 1つの護衛隊群は10個の護衛隊で編成されていて、護衛隊は1万隻の戦闘艦で構成されています。 よって1つの護衛隊群には10万隻の戦闘艦が所属しており、地球圏には第1~第10護衛隊群がいる事から、100万隻の戦闘艦が地球を守っている事になります。
今回新たに編成される第11護衛隊群は、軍事同盟に基づきテラⅡの守りにつく予定。
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こうしてテラⅡの防衛戦力は着実に増強されていった。
並行して地球とテラⅡをむすぶ安全航宙路の設置作業も進めていたが、テラⅡ側の建造能力は防衛戦力の増強に極振りしているので、安全航宙路に設置するセンサー衛星やパトロール船、掃宙艦艇の建造は地球圏側での建造のみとなり、地球側からの作業しか進んでいない。 テラⅡ側からも作業が出来れば工事期間を半減出来るのだが、そのめどはたっていない。




