031 軍事同盟?
テラⅡに戻って来た第104囮艦隊だが、艦橋に居た十色はモニターに映し出された大型の建造物に驚いていた。
「20年ぶりにテラⅡに来たが・・・ 随分と変わった物が出来てるな。」
「はい。 形状からすると戦艦と言うよりも要塞に近い感じでしょうか?」
「そうだな、しかも赤道の軌道上をぐるりと1周・・・ 何隻あるんだ?」
「はい。 星の裏側が見えないので推測になりますが、約2万隻程と推測されます。」
「そんな大量に健造していたら、テラⅡに住む人々への生活支援が殆どできないんじゃ・・・ 」
そんな時、第18次避難船団旗艦『バルミィ』からの通信が、
「久しぶりだ十色司令、元気な姿を見れて嬉しいよ。」
「ええ、そちらもお元気そうで何よりです。 ロイド団長。 で、随分と様変わりしましたね。 生活支援の方は大丈夫なんですか?」
「正直なところ、市民の生活にかなりの影響が出ている。 しかし、そちらから送られてきたデータ。 特に人攫いの可能性についての話は、人々の心に大きな影響を与えることになった。 生活よりも安全を求める声が大きくなり、軍拡に万進する事になった。」
「そうでしたか、それであのような形の艦が?」
「ああ、限られた資源を攻撃と防御に集中させた。 移動能力なんて殆ど無いし、コアブロックも5隻に1隻の割合でしか付いていない。 コアの無い4隻は遠隔で操作されている。」
「成程、艦隊運動を行わない固定砲台としての運用なら、1つのコアで5隻ぐらいコントロール可能ですね。 しかし、機動防御を捨てるとは思い切った設計をしましたね。」
「何せ市民の盾だからね。 敵の攻撃を避ける事は無いのさ。 まぁ、後は直接会って話すとしよう、バルミィに招待させてもらうよ。」
「分かりました。 では後ほど・・・」
通信が切れた後、十色はふじに、
「ふじ、バルミィと予定を調整しておいてくれ。」
「はい、了解しました。」
その後、第104囮艦隊は指定された泊地へ順次投錨していった。
そしてバルミィで行われた話し合いには各行政局長も同席し、様々な事が次々と決められていった。
事件から約1000年、シングルナンバーは滅びているかもしれないし、逆に力を付けているかもしれない。 敵の姿が明確でない分、より大きな不安を感じているからの即決だと思われる。
その中でも、地球とテラⅡの軍事同盟及び両宙域を結ぶ安全航宙路設置工事の工期短縮計画はその大きな現れだろう。
他にも、第17次避難船団の御遺体については地球圏に運ぶが、艦船の残骸はテラⅡが受け取る事になった。 これらは今後、第3囮艦隊の非道と、そして第17次避難船団の悲劇の象徴として永久保存が決まっている。
今回の会議の結果を受け、十色は『国際連合宇宙軍 第104囮艦隊 第11護衛隊群』を編成、テラⅡ防衛の一翼を担う事になり、部隊新設の為に暫くこの場に留まる事になった。
ーー軍事同盟の説明-ー
第104囮艦隊は正式には『国際連合宇宙軍 第104囮艦隊』と言い、今は亡き地球の政府から宇宙軍の艦隊として認められている正真正銘の地球の軍隊である。
対して、第18次避難船団は正式名称『国際連合移民局 第18次避難船団』と言い、地球の政府から軍隊として認められていない。 今回、地球からの独立とテラⅡ政府の樹立、そしてテラⅡ政府から軍隊として認定された宇宙艦隊を創設した訳だが、地球軍とは別組織となる。
その為、今後の協力体制を維持する上で軍事同盟の形が取られた。(書類上の必要に駆られた感じである)
ちなみに、現在地球圏を守っている部隊は『国際連合宇宙軍 第104囮艦隊 第1~第10護衛隊群』となっており、第104囮艦隊の司令である十色の戦地での略式任命権で編成されている。
今の地球に第104囮艦隊と同レベルもしくは上位レベルの部隊を任命する組織は存在しない。
ちなみに、シングルナンバー艦隊は地球圏から姿をくらました時に戦地行方不明、後に損失扱いとして軍籍から外されている。(本当は反逆罪なのだが、政府として都合が悪いので損失扱いになっている。)
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