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027 政治家の悪夢

 あの会議の日からテラⅡは変わった。 特に宇宙港すら無かった外連合国の人々は日々の変化を受け入れるのに必死だ。


 

 十色達は、既に宇宙港が有り船団の支援を受けているこの大陸については、仕組みを変えるだけなので船団の一部の力で十分に対処できると考え、ロイド船団長の下で改革を行い、船団に所属する艦船の整備作業等を順番で行う事にした。

 そして、この大陸以上の人口を抱える別大陸へは十色の艦隊が向かった。

 

 文明社会から捨てられた外連合国では、一部の重要な機関で石油燃料を使って内燃機関が使われていたが、殆どの所では石炭による蒸気機関が一般的な動力として広まっていた。 この様な社会である為、メディアもテレビが極一部にしかなくラジオ主体と、細かな情報伝達に難が有った。 その為人々は艦隊の支援を受け、国の改革を行う話は聞いていても、内容の想像がついていなかった。

 そんな所に、空が数え切れない程の宇宙船によって埋め尽くされた時の人々の驚きが、どれほどのものであったか・・・ ラジオによる国民への必死の呼びかけと、各地に散らばっていた5000個の黒球から流れるアナウンスが無ければ、大きなパニックなっていただろう。

 そして、数え切れない程の宇宙船から飛び立つ無数の搭載艇と作業機械群・・・ 空を埋め尽くすほどの機械、機械、機械。



「司令、よろしかったのですか? 地上はかなり混乱しているようですが・・・ 」


「ああ、地上の人々には悪いが、心を折らせてもらう。 我々のやる事に異を唱える者を無くすのが目的だ。」


「それは・・・ 効率的ではありますが、非人道的過ぎませんか? 人々の恨みを買うかと・・・」


「分かっている。 しかし人は愚かな生き物だ将来的に良くなると言っても、今ある利権を手放したりはしない。 手放すにしても説得に時間を取られ、見返りも要求してくるだろう。 そんな事に時間と手間を取られれば、改革がその分だけ遅れることになる。 なら、我々を逆らってはいけない存在として彼らの心に刻む事が最終的には彼らの為になるというものだ。 それに、私を恨むのは一部の権力者だけさ、殆どの人には訳が分からないうちに全て終わるさ。」


「確かにコンピューターとしての私はその考えを支持していますが・・・ 何でしょう?止めさせたいという気持ちが・・・ 」


「成程、バイオコンピューターの特性か・・・ そして、ふじは優しい心を持っているのだな・・・」


「「・・・」」


「さて、富士を庁舎裏の広場に降ろせ。 国主に会いに行く。」


「はい。 富士の進路を庁舎に向けます。」



 空には無数の宇宙船、そして向かって来る大型艦・・・ 庁舎に居る人々は混乱しすぎて動きを止めていた。(茫然自失)

 しかし、さすがは国主と言うべきか、大型艦が広場に着陸するとみて取ると外連合国大統領自ら広場に出て来た。 警備の人が後から駆けつけて来る所を見るとなかなかに行動力が有る。 そして大型艦の艦底部の一部が斜めに下がり坂道が出来上がると、周りの人が逃げていく中で逆に近づいて行った。


「ようこそおいで下さいましたと言いたい所だが、これは一体どういう事だ!? 国家の主権を何だと思っている。」


「失礼、こちらの国では国主のことを大統領と呼ぶのでしたかな?」


「その通りだが、タロスと名前で呼んでもらって構わない。 で? これは何のまねかね?」


「タロス大統領、正直に言うとですね・・・ 船団の支援を受けた生活をするためには、船団の構築するシステムの一部として組み込まれることになります。 外連合国は今後、地域を示す名称としては残りますが国としては解体され、主権もありません。」


「なっ、そんな横暴な事が許されるとでも? ふざけているのか?」


「ふざけてなどいません。 枢密院がいい例ですが、船団と民衆の間に人による統治機構が入ると公平性を失うだけでなく、余計な資源と時間を使う事になる。

 今後、この星全体は最低限の公平性を保つために船団の直接制御下に入る。 言っておくがタロス大統領の政治が良い悪いではなく、政治そのものがこのシステムには必要ないのだ。」


「それでは我々はどうなる。 ロイド船団長が言っていた市場の自由経済を行うと言うのは嘘か!」


「貴方は何を聞いていたのですか? ロイド殿はちゃんと頭に『ある程度の』と言っていましたよ? あくまでシステムが許容する範囲内での事です。 その為にもシステムの一部としてこの国を組み込み、この星の全てを画一的なシステムで制御する必要があります。」


「今後あなた方の様な政治家は外連合国と言うの名の行政地区の行政局長や局員として働いてもらうことになるでしょう。」


「・・・」



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