026 午後
さて、午後の部が始まると午前中程の混乱は見られなくなった。 昼休みが良い方に作用したようだ。
ロイド船団長の存命とコールドスリープからの覚醒方法が忘れ去られた事、枢密院の設立時からの大きな変化、テラⅡ入植時と比べ使われている技術レベルの低下、そして別大陸への移民問題等、各事案の原因調査をする必要が有る。
しかし今は現状を何とかする事を優先しなければならない。 と、言う事で話が纏まってきているが、その方法について、特に別大陸の生活レベルの是正については話し合いが続いていた。
ロイド団長と十色は、事態の対処には第104囮艦隊の支援が必要としながらも、船団とテラⅡの力のみで対応出来るのが一番だと考えていた。
何もかもを与えていては、枢密院の様な輩が又出てこないとも限らない、現状は移民船団の対応能力以上に人が増えたことで人々の生活レベルが低下しているが、レベルを上げ過ぎない様にする見極めがほぼ手探り状態の為、力は有っても使い方に迷っていた。
そして会議の話し合いもその部分へと・・・
「今のこの現状がロイド様の意図したところではないという事は理解しました。 しかしながら我が外連合国(別の大陸に作られた国)の人口は此方の国の何倍にもなります。 物理的にこれだけの数の人々の生活レベルを改善する事は不可能なのではないのですか?」
「その懸念については、船団の支援レベルを下げる事である程度対応可能と考えています。 生活の全てを船団の支援だけで行う事は枢密院の様な輩を生み出す温床になる可能性が高く、生活の健全性を保つためには、ある程度の労働や市場の自由経済を行うようにすべきと・・・
そうする事で一部に偏って集中されている船団の支援を広い範囲に行えるだろうと・・・ 但し、先ずはこの大陸以外(外連合国)への宇宙港の建設や船団の増強等を行う必要があるでしょう。」
「確かに、支援を受けるための宇宙港は必要でしょう。 そして増えた人口を支える為に船団の強化が必要なのも理解出来ます。 ですが・・・ それでは我々の生活が良くなるのは何時になるのでしょうか? 10年先ですか、100年先ですか? それまで我々に我慢しろと?」
「確かに第18次避難船団の力だけであれば、皆さんの生活レベルの向上に何十年もの年月が必要になるでしょう。 そこで今回は外部の力を借り、1年以内の改善を目指します。」
「 ・・・外部とは? 初耳なのですが?」
「昨日の枢密院が起こした事件の後始末に追われ、公表していませんでしたが、テラⅡには地球からの艦隊が来ています。 私はこの艦隊によりコールドスリープから覚醒され、枢密院を排除する切っ掛けにもなりました。」
「地球? ・・・伝説の星の地球ですか? 滅びたはずでは・・・ 」
「そう船団出発の地、あの地球は異星人との戦いにぎりぎりで勝利し今も人類の物だと・・・ 私も昨日初めて知ったばかりです。 この場にはその知らせと共にやって来た艦隊の司令をお呼びしているので、紹介します。」
ロイド団長と場所を変わった十色は壇上に上がると周りを見渡して、
「私が地球からやって来た『国際連合宇宙軍 第104囮艦隊』の司令、十色・寺内です。 この様な地球から遥かに離れた遠方の地で同胞と出会えた事を嬉しく思います。
私の登場で、地球の事などに対する疑問など知りたいことが一杯あるでしょうが、公式発表まで待って下さい。 ただ1つだけ言わせてもらいます。 私の艦隊ならテラⅡへの十分な支援が可能です。」
「「・・・」」




