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023 冷静に考えてみれば

 皆が言葉を失う中、ロイド団長が声を荒げる。

「ほ、本当か? 本当なのか!」


「ええ、本当です。 地球は今も我々人類の物です。」


「あぁ、そうかー そうなのかー 地球が・・・ 貴公も人が悪い、私が覚醒した時に教えてくれればよいものを・・・」


「それについては、枢密院の一件が有りましたからね。 気を散らさない方がいいと思って黙っていました。」


「それにしたって・・・ しかし、また地球に・・・ あの景色を見ることが出来るのか・・・」


「あっ、すいませんが1つ問題が・・・ 地球は一度完全に敵の手に落ちてしまい、人類は全滅、動植物は死滅してしまいました。 ですから当時の景色はもうどこにも・・・

 しかし、地球を取り戻してからは環境の改善に努めてきましたから、人が住むのに問題の無いレベルまで回復しています。 皆さんを地球にお迎えするにあたって、何の問題もありません。」


「そうですか、一度敵の手に・・・ それを奪い返して環境の再生まで・・・ 地球圏に残った方々の努力と苦労には頭が下がります。」


 頭を下げる団長に、「よして下さい」と言いつつ頭を上げるよう促し、そして周りの静けさに気が付く。


「・・・」


「どうやら私とロイド殿ではしゃぎ過ぎた様だ。 他の人達がついてこれませんでしたね。」


「ああ、どうやらその様だ。 いい歳して恥ずかしいな・・・」


「いえいえ、お話を聴いていて並々ならぬ苦労と喜びについては分かっているつもりです。 決して恥ずかしがる様な事ではありません。 

 しかし、我々は地球を見たことも無いものですから、どうしてもイメージがしにくくて・・・ 」


「なるほど、こちらの思慮が足りなかった様です。 地球は私とロイド殿にとっての故郷ですが、あなた方にとっての故郷はこのテラⅡなのですね。」


「確かにそうだな。 十色殿から話を聞いてつい興奮したが、冷静に考えてみれば地球出身だからこそだな、そうなると・・・」


「はい、そうなると、この地に住む人々は地球に行きたいとは思わないでしょうね。 ここが故郷なのですから。」


「ええと、すいません。 お二人の喜びに水を差す様で申し訳ないのですが・・・ 一度行ってみたいとは思っても住みたいかと聞かれれば・・・ 」


「そうですよね。 そんな単純な事にも気が付けないとは、やっと合えた同胞を前に舞い上がっていた様です。」


「「・・・」」


 皆が、押し黙ってしまう中、ロイド団長が、

「十色殿、今の地球や人類がどうなっているのか聞いてもよいだろうか? それに敵の事も・・・ 地球に行く行かないに関わらず皆知りたいと思っているはずだ。」

 

 周りの人達が頷いているのを見て十色が、

「そうですね。 これは皆さんも知っておくべき事でしょうから・・・

まず地球ですが、今現在誰も住んでいません。 地球圏で確認されている人類は11名に過ぎず内8名は老人です。 今は地球に再び人類が繫栄する事を夢見て月面基地の地下でコールドスリープ装置に入っています。」


 皆が顔色を無くす中、十色の話は続いてゆく

「それで私は人類(避難船団)を呼び戻す為、船団の捜索を開始したのですが約1500年探してきて、生きている人類に会えたのは今回が初めてでした。

 私はやっと地球を復活させられると思ったのですが・・・」


「そうでしたか、1500年・・・ しかし、地球がその様な状態だとは、なかなかにショックですな。 私は十色殿の大艦隊を見て、てっきり地球が繁栄しているものとばかり思っていました。」


「ええ、あの艦隊は特別です。 あの当時、艦隊も104番目になると人を集めようにもまともな軍人や船乗りは残っていなくて、代わりに機械系の技術者や研究員を大勢乗せて運用していました。 そのせいで戦後、我が艦隊では500人程生存者がいたのですが、ほとんどが研究職や技術畑の人達でした。 

 彼らは自分達の能力を活かして、敵テクノロジーの解明、残された人類の技術や資料の収集及び整理、そして人が住めなくなった地球の再生を始めたのですが、次々と寿命を迎えていきました。 そこで最後まで残っていた者達が集大成として最新の技術で造り上げたのがあの艦隊です。」


「そうでしたか、しかし500人も居たならば自分達で人類の再生を始めても何とかなったのでは? 女性は居なかったのでしょうか?」


「そうです。 最初から男だけの艦隊でしたので・・・ 厳密には途中で救助した民間人の女性がいましたが、父、母、娘の親子でしたからね。 本人達の希望で早々にコールドスリープ装置に入りました。 生物学や遺伝子系の専門家が居れば何とかなったかも知れませんが、地球の生態系の修復に四苦八苦しているレベルの者達しか居なかったので自力での解決は早々に諦めました。」


「そうなのですか? 艦内で私の世話をして下さった女性達はいったい・・・ 」


「あれらは人ではありません。 船の制御AIの作業端末です。 最初の頃は作業用ロボットをつかっていたんですが、大きすぎて邪魔になるので何時しか今の形に・・・ 」


「そうなのですか!? てっきり人だとばかり」


「ええ、昔とはAIのレベルが違いますから、今の艦隊に人間は私だけです。(小声でボソッと、本当は私のこの身体も人間じゃないけどね)」


「そうでしたか、では十色殿はずっとお一人で・・・ 」


「えぇまぁ・・・ さて、話もまだ続きますし皆さんは少し休憩を取られては? 」


「えっ、はい、そうさせて頂きます。 正直、今の話だけでもいっぱいいっぱいです。」


 20分後に集まる事とし、一旦解散する事に・・・


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