020 皆さん、初めまして。
「皆さん、初めまして。」高さ2メートル直径60センチのガラス状の円柱が降りてきながら挨拶を・・・
「よ、ようこそテラⅡへ。 歓迎いたします。」あっけにとられながらも何とか挨拶を返し、よくよく見てみれば薄暗い円柱の中に人の姿が・・・
「この様な姿をご不快に思う方もおられるとは思いますが、お互いの為ご容赦願いたい。」
「いえいえ、不快などと・・・ そんなことはありませんが、お互いの為とは?」
「私達は同じ人類に連なる者ですが、袂を分かち1000年以上過ぎています。 免疫システムも変容しているでしょう。 お互いが保有するウイルスや菌の類が、相手の人体へ対し安全なのかそれとも悪影響を及ぼしうるのか・・・ 下手をすれば星の生態系への影響も考えられます。 その為の隔離措置です。」
「な、なるほど。 御配慮に感謝いたします。 改めまして、私は行政局長のショーン・デ・ロウと申します。 以後お見知りおきのほどを 」
「これはご丁寧に、『国際連合宇宙軍 第104囮艦隊』、艦隊司令の十色・寺内です。 十色とお呼び下さい、ロウ殿。」
「では十色殿と呼ばせて頂きます。 私の事はどうぞショーンと・・・ 」
「はい。 ショーン殿。」
「それで・・・ 十色殿の訪問理由をお聞かせ頂きたいのですが、此処ではなんですね・・・ あちらに見える管制塔の下に会議室があります。 ご足労願えますか?」
「かまいませんよ。 ただ私はこの姿ですから、そちらの車には乗れません。 艦から私が乗れる装甲車を降ろすので少しお待ち下さい。」
「はい。 ご用意が整ったらお知らせください。 先導させて頂きます。」
そうこうしているうちに装甲車の準備が終わり、約15分後車列が動き出した。 しかし、もう少しで管制塔ビルに到着というところで、戦闘用アシストロイド達に囲まれて動きを封じられた。
先導車から行政局長達が降ろされ、アシストロイド達の後ろに居る人達と・・・
「議長、何の真似ですか! いくら枢密院でも許されない事ですよ。」
「局長は黙っていろ。 我らは偉大なる指導者の代弁者なり。」
圧倒的武力を背景に大きく出る枢密院に局長達が取り押さえられる。 そして、そんな状況を眺めながら装甲車の中では十色が同乗者と会話をしていた。
「もしかして、偉大なる指導者ってあなたの事では?」
(十色は第18次避難船団の団長が、船団旗艦のコールドスリープ装置で眠っていたのを見つけ覚醒させた後、一緒に星に降りて来ていたのだ。)
「おそらくは・・・ だが、決して枢密院に代弁者たる資格など与えていない。 私が作ったのは各専門分野の助言を行い、人々の生活をサポートするためのものだ。」
「そうですか・・・ さて、目的は私でしょうから、ちょっと行ってきます。」
十色がそう言うと円柱が床に吸い込まれて装甲車の外へと・・・
「あなた方は私に用があるのでしょう? 話を聞きましょうか。」
「ほう、なかなかに話の分かる御仁の様だ。 なに難しい話ではない、そちらの艦隊の指揮権を我々に引き渡して貰いたい。」
「理由をお伺いしても?」
「もちろんよいですとも、我々は移民初期と比べ人口が何百倍にも増えました。 しかし船団の艦船数は昔のままです。 宇宙から送られて来る資源や物資だけでは不十分なのです。
あなた方もここまで来られたということは、それなりに資源の収集や加工をする為の船を持っているはず。 それらを有効に活用することで人々の暮らしをより良くしたいのです。」
すると後ろの方から小声で、「何が人々だ、自分達がより贅沢する為だろうが・・・ 」批判が聞こえてくる。
「なるほど、理由は分かりましたが・・・ それで私がハイと言うとでも?」
「フフフ、そういきがるものでは無い。 こんな所まで来たんだ。 そちらも地球から逃げて来たのだろう? それに、この緑豊かな星を見たまえ、宇宙では味わえない素晴らしいものだ。
そうだ! 司令を我々枢密院の一員として迎え入れよう。 十分贅沢な暮らしを約束しよう、それでも断るというのなら・・・ 」
周りの戦闘用アシストロイド達が銃口を向けてくる。
「力づくはおすすめできませんな・・・」十色がそう言うと、今度は装甲車の機銃や大型艦の艦砲がアシストロイド達に照準を定める。 更には大型艦から追加の装甲車と戦闘用のドローンが出てきてにらみ合いに・・・




