019 第1捜索隊群 第106捜索隊
そこには各省庁から派遣されてきた人員が集まっていた。
「いいか皆、監視だけに留め絶対に手を出すな。 相手は我々の偉大なる先祖と何かしらの関係がある者と推測される。」
「了解です。 ・・・しかし、あれはどうします?」
そこには戦闘用にカスタマイズしたアシストロイド1個小隊がいた。
「枢密院の犬か・・・ 命令系統も違うしどうしょうもないな、そもそもアシストロイド任せで何もしない連中が何故だ?」
「さぁ? でも奴らが勝手に戦闘をおっぱじめたらどうします?」
「あぁ、頭が痛えなおい! 大型の装甲車を用意しとけ、いざとなったら割って入るぞ。」
「了解。」
こうして人々の見守る中、件の航空機は滑走路ではなく格納庫前の駐機スペースに垂直着陸した。
「署長、あの機体です。 物資供給センターからの情報と一致します。」
「よし、総員警戒態勢。 いいかもう一度だけ言うぞ絶対に手を出すな!」
振り返り皆に指示を出した後、正面に向き直りながら機体側面に描かれた文字に目が吸い寄せられた。
『国際連合宇宙軍 第104囮艦隊 第1捜索隊群 第106捜索隊 CV-0115 C-01』
「おいおい、やっぱり違う所属かよ・・・ いつもなら『国際連合移民局 第18次避難船団 CVL-XXXX C-XX』とか書かれているよな?」
「はい、いつもとは別物ですね。 しかし、宇宙軍とか囮艦隊という言葉は伝説として語られているお話の中に出てきます。」
「となると、やはりご先祖様のお仲間なのかな・・・ 」
すると、周りに居る人々が緊張に顔色を悪くする中、機体後部のハッチが開き中から直径40cm程の球が複数、転がり出てきた。 出て来た球は艶消しの真っ黒で、人々があっけに取られているうちに四方八方へ転がって行ってしまった。 一部の人々が慌てて後を追いかけたが後の祭りであった。
「おい! 何だよ今のは!」
「私にも判りませんよ!」
残った人達は恐る恐る機体の中を覗み込むが、そこには何もなかった。 そして次々と謎の機体が降りてきては黒い球を吐き出していった。
結局飛来した航空機は120機にも及び、球を下ろしたらさっさと飛んで行ってしまった。 そして転がり出た3000程の球があちこちで転がっていた。
当初は路上に転がり出た球により事故や渋滞が懸念されたが、都市の交通管制システムとリンクしているのか、信号や制限速度を守っており、その手の心配事は杞憂に終わった。 又、枢密院の戦闘用アシストロイドもあちらこちらで見かけるものの何かしらの騒ぎを起こす訳でもなく、一応の平穏は保たれていた。
「あの黒い球はどうしてる? 」
「転がり続けています。 一応、呼びかけもしてみたんですが反応ありませんでした。 今は人員を増やして監視を続けています。」
「署長、もう一つ情報があります。 別大陸にも黒い球が出現しています。」
「この国を出ていった連中が住み着いた西の大陸か?」
「はい。 あちらの国では黒い球を我々が送り込んだと思ったらしく、大使館経由で抗議が来ているそうです。」
「はぁ~ 本当に何なんだろうな・・・ 」
そして、そんな状況が1年以上も続き日常の風景と化したある日、宇宙港に音もなく1隻の大型艦が着陸した。
何の前触れも無く突然現れた大型艦に周辺住民は半ばパニック状態になり、少しでも離れようと都市郊外へ逃げ出す。 そんな中、流れに逆らうようにして複数の車が宇宙港に集まりつつあった。
「署長、状況は?」後から来た人物が、先に来ていた警察署長に尋ねる。
「お疲れ様です局長。 今の所、動きは有りませんね。 行政局としてはどう対応するつもりですか?」
「正直お手上げです。 相手の出方次第と言った所でしょうか。」
更に関係者たちが集まる中、大型艦の艦底部の一部が斜めに下がり坂道が出来上がった。 そして中からは・・・




