018 第18次避難船団
知らされた内容は、当時の避難民は居ないという事実だった。 しかし、彼らの子孫は地球型惑星に根を張り繁栄していた。
そして彼等の生活様式は独特だった。 生活の技術レベルが2極化していたのだ。
第18次避難船団が避難民を惑星に降ろした後、船団自体は自動で星系内の資源採取と精製、製造を行う事で地上への支援を続けていた。 又、自身で集めた資源の一部を使い、船団自体の整備補給もこなし、何百年もの間、船団の維持を続けた。
当初、船団からの物資で地上の人々は優雅に暮らしていたが、人口が増加するにつれて物資の必要量の確保が難しくなって行った。
資源を集める船の数が変わらないのだから当然だが、人口が増えれば増えるほどに一人当たりの割り当て量が減って行った。
船団の船を増やすなり、惑星開発用の器材を増やせれば良かったのだが、世代交代を重ねるうちに必要な知識と技術は失われてしまっていた。
正確には、船団には知識が保管されていたのだが見方を知る者がおらず失ったのと変わらなかった。
地上の町は、物資の集積と配布のための宇宙港を中心に広がって行ったが、力ある者は中心に、力なき弱き者は外へ外へと追いやられていった。
そして、現在では追いやられていた人達が集まり自らの力で農業を行い、資源を掘り出し、文明を一から築き直していた。
その結果として、この星には宇宙港の有る大陸に住み、面倒事はアシストロイド任せの優雅な生活を送る人達と、別の大陸に渡り低い文明レベルからやり直す人々の2つの集団が出来ていた。
「なかなかに歪んだ生活システムだな・・・」
「はい。 船団のAIが従来型のコンピューターでは仕方が無いかと・・・ 我々の様なバイオコンピューターなら実情に沿って色々出来たでしょうが・・・ 人類が滅びずに続いているだけでも大したものだと思います。」
「そうだな・・・ さて、第18次避難船団のAI相手ではこれ以上の情報を入手出来そうに無いが、艦隊が惑星に到着するのにまだ13年掛かるからな、じっくりと人類の末裔を観測しようじゃないか。 116捜隊の器材をフル活用して全てを調べ上げるとしよう。」
「はい。」
その日、惑星テラⅡの物資供給センター内のモニター室ではちょっとした騒ぎが起きていた。
「室長、定期飛行の予定にない飛行物体が都市上空を飛んでいます。」
「何?、情報表示盤には何と出てる? 21年前の予定外飛行事件の時には『故障発生、緊急着陸する。』と表示されていただろう。」
「はい、表示はされているのですが・・・ 『管轄外』とだけしか・・・」
「何だそれは・・・ おい!過去に何か似た事例が無いか資料を漁れ、行政局と警察署にも状況を説明して協力を仰げ。」
「「はっ」」
「偉大な先祖が残してくれた生活支援システムに何かあったのか?」
「それは大丈夫なようです。 情報表示盤には何ら異常を示すようなものは表示されていません。」
これ以降、時々謎の飛行物体が現れる様になるが、普段の生活に支障をきたす訳でもなく、皆の関心が薄れていった。 そして・・・
「室長、定期飛行の予定にない飛行物体が都市上空を飛んでいます。」
「またか、この飛行物体が現れてから既に10年以上経つが何の問題も起きてない。 ほおっておけ。」
「それが・・・ 『管轄外機、着陸する。』と情報表示盤に表示が・・・」
「着陸だと? 他に情報は何も無しか?」
「はい。 ありません。」
「仕方ない、行政局と警察署に連絡して監視の為の人員を回してもらえ、我々の手には負えない。
「了解しました。」
「いったい何が起きようとしている・・・」




