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017 死ねば皆仏様

「何だこれは、誰も居ない?」


「はい。 一部のカメラしか作動していませんが、確認出来る範囲での動体反応はありません。」 


「 ・・・艦載艇で戦闘ボットとプローブドローンを送り込め。 戦闘ボットは1隻あたり2個中隊とする。」


「了解しました。 順次部隊を送り込みます。」


 そして1時間後、各艦に送ったドローンからのデータが集まりだした。


「司令。 見ての通りなのですが・・・ 乗員はコールドスリープ装置内での死亡が確認できました。」


「これは・・・ ミイラ化しているのか?」


「はい。 体内の水分が失われています。 状況から見て亡くなったのは100年以上前になると思われます。」


「他に何か分かったことは?」


「はい。 業務日誌や航宙日誌などの内容から状況が見えてきました。

 第5囮艦隊は補給物資を使い切り身動きが取れなくなったようです。 そして最後の賭けで、センティネル級の罠を仕掛け近づいた獲物から補給物資を奪うつもりだったようですが・・・ 

 結局長きに亘り罠には何もかからず、艦隊のエネルギーも無くなり乗員のコールドスリープが維持できなくなったようです。 データから確認したところ、コアがセーフモードにはいったのが約120年前と判明しており、状況と一致している事から間違いないかと・・・」


「そうか・・・ 結局答えは聞けずじまいか・・・ 」


「この後は如何しましょう?」


「そうだな・・・ 情報を取れるだけ取ったら各艦にエネルギーを供給、起動させろ。 第5囮艦隊は月面基地に回航させる。」


「よろしいのですか? 司令。」


「 ・・・第5囮艦隊には思うところもあるが、死ねば皆仏だからな・・・ 故郷に帰してやろう。」


「はい。」


 十色は、優しく微笑むふじから思わず顔をそむけてしまいながら、

「それより、『ARB-0001、0002』の状況は?」


「はい。 両船ともコアユニットまで被害が及んでいましたが、コアの中枢であるバイオコンピューターは無傷でしたのでご安心下さい。 損傷した各ユニットの予備も揃っていますので24時間頂ければ新品同様にして見せます。」


「そうか、それは朗報だな。」


「はい。 私も仲間が無事で嬉しいです。」


「さてと・・・ どうやら私は皆との楽しい生活に気が緩んでいたようだからな。 今回の一件は教訓として今後に生かしていこうと思う。」


「はい。 私も教訓とします。」


 その後も艦内調査や情報の収集、セーフモード状態の各艦船の状態復旧などの作業に1週間の時がかかった。


「さて、今回の一件もやっと終わりか・・・ 」


「はい。 残念ながら避難船団に関係する資料は見つかりませんでしたが・・・ 」


「まぁそれは仕方が無い。 元の航宙路に戻り捜索を再開する。」


「はい、了解しました。 元の航宙路に向け発進します。」


 こうして第104囮艦隊は避難船団の捜索という日常に戻って行った。

 そしてそれは、十色とバイオロイド達とのいちゃラブの日々でもあった。


 そんなこんなで、いちゃいちゃを続けること数百年、やっとつぎの手がかりが・・・

「司令。 1捜群116捜隊が稼働状態の艦隊を発見しました。 識別信号有り、第18次避難船団です。」


「なに! でかした。 直ぐに向かってくれ。」


「はい。 艦隊進路116捜隊に向けます。 会合点まで約13年です。」


「少し遠いな。 入手した情報は全て回してくれ、特に避難民関連を優先してほしい。」


「了解しました。 指揮官卓へ回します。」


 十色は希望に胸ときめかせ送られてきた情報に目を通しはじめた。 更には現地部隊を通して第18次避難船団とのやり取りをしていたが、彼らの現状を知りどうするべきなのか、どうするのが正解か・・・

 非常に判断が難しい問題にあたった。 


「想定外だ・・・」


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