016 第5囮艦隊
「バカだな私は・・・ こんな事を見逃すとは・・・」
「司令、どういう事でしょうか?」
「センティネル級だ・・・ あのタイプの巡洋艦は1隻も避難船団には組み込まれていなかったはずだ。 それがあんな所を漂流とは、怪しさしかない。」
「すいませんでした司令。 私こそ当時の艦隊編成のデータが有りながら、漂流艦と結び付けて考える事に気がつけませんでした・・・ 」
「なに、今後は同じ過ちを犯さなければいいさ。 それで現場の状況は?」
「はい。 偵察機との回線が繋がっていますが、3機のみです。 残りの3機については反応ありません。 完全にロストしています。」
「漂流艦と作業船はどうか?」
「はい。 作業船とのデータリンクが切れていますので詳細は不明ですが、偵察機からの映像から見るに、漂流艦はほぼ融解して消滅。 作業船2隻については大破漂流中の様です。」
「動力を完全に消失しているようだな。 コアユニット付近にも被害が出ているみたいだ・・・
よし、支援艦船群分離、この場で待機。
戦闘艦艇は、全艦全速前進、現場に近づくぞ! 作業船のコアの保護を最優先とする。」
「司令、お待ち下さい。 おそらく先ほどの巡洋艦は・・・」
「分かっている。 罠だとでも言いたいのだろう? 巡洋艦は餌だったのかもしれないと・・・ それでも行く! いいな?」
「はい。 御命令に従います。」
「すまんな・・・ 」
「よし、全艦警戒態勢から戦闘態勢へ移行、武器使用自由。 繰り返す武器使用自由。 向かって来る物は全て吹き飛ばせ。」
艦隊は危険を覚悟して現場へ・・・ すると十色が、
「各空母は全ての偵察機を発進、隠れている敵を見つけ出せ。 おそらくは小惑星帯の中に紛れているはずだ。 また、敵艦はエネルギーレベルが低いと思われる。 見落とさないよう気を付けて捜索せよ。」
「司令?」
「こんな何もない宇宙で獲物が罠に掛かる確率は幾つぐらいだ? 獲物が掛かるまで10年か?100年か? ・・・おそらく敵艦隊の乗員はコールドスリープ装置に入っている。 罠の発動信号を受信してからコンピューターが乗員の覚醒作業をしているはずだが、敵がセンティネル級と同世代の艦船なら乗員の覚醒に5時間程度かかる。 敵艦のエネルギーレベルが上がるのはそれからだ。」
「さすがです司令。 今なら先手を取れる可能性があるのですね?」
「そうだ。 誰にケンカを売ったか教えてやらねばな・・・」
それから30分後、偵察機から艦隊発見の報告が・・・ そしてその内容を見た十色は・・・
「こんな所にいたのか・・・ お前らの事を忘れたことは無かったぞ・・・」
発見されたのは第5囮艦隊であった。 地球圏担当のシングルナンバー艦隊が雲隠れしたせいで多大な迷惑を被った第104囮艦隊としては絶対に許す事の出来ない相手だ。
「奴らはまだ覚醒作業中のようだ。 全艦、第5囮艦隊をロックオン。 その場で待機せよ。」
「司令。 今なら一方的に敵を攻撃出来ますが?」
「 ・・・私はどうしても奴らに聞きたい事が有る。 何故地球を見捨てたのか? とな・・・」
しかし、事態は思ってもみなかった方向へ・・・
「センティネル級巡洋艦が爆散してから何時間経った?」
「はい。 7時間程経過しています。」
「もう覚醒しているはずだが・・・ 敵に動きは?」
「ありません。」
「「・・・」」
「おかしいな・・・ 読みを外したか? 国際共通チャンネルで呼びかけろ。 戦術リンクにもアクセスしてみろ。」
「了解しました。 ・・・呼出しに応答なし。 戦術リンク入れましたロックされていません。」
「よし、艦内ネットワークにアクセス。 カメラの映像をモニター映せ!」
「はい。 一部のカメラしか動いてないようですが・・・ 映像出します。」
そこには何一つ動くものの無い世界が・・・




