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015 漂流中の友軍艦

 十色の眠るコールドスリープ装置を見守る複数の男女がいた。


 その中の女性の1人が唯一の男性に、

「司令、お体の調子はどうでしょうか?」


「ああ、まったく違和感を感じない・・・ すごいものだな。」


「はい。 体の方は似せてあるとはいえバイオロイドですから本来の体と比べるとかなり違うのですが、体の方の伝達信号と脳内信号が上手くコンバート装置で調整出来ているようで安心しました。 少しでも違和感を感じたら直ぐに教えて下さい。 修正は直ぐに出来ます。」


「わかった。 今は違和感を感じ無くても、長く使わなければ分からない事もあるだろうしな。」


「はい、ですが・・・ 1つだけ先に言っておきますと、本来の体に比べ持久力が有り、疲れにくい様になっていますが、わざとですのでご心配なさらないで下さい。」

「そうそう、これで私達とたくさん遊べますね。」

「もちろん、夜の方もいっぱい出来ますね。 今から楽しみです。」

「本当にそう。 司令一人に対して私達は凄く多いですからね。 これで少しでも司令とのふれ合う機会が増えればと期待しています。」


「そ、そうか・・・ すまないな。 皆には我慢させていたのだな。」


「いえいえ、私達なら大丈夫ですから。」

「そうそう。全然気にしてないからネ。 それに・・・」

「それに、早速今夜から司令には頑張ってもらうから。 寝かさないよ?」


「えっと・・・ お手柔らかにお願いします。」


「そうですねー 人間辞めた記念に1000人位相手してもらいましょうかね?」


「いやいやいや、ムリムリムリ。 絶対無理だから! ほら、この体にも慣れてないし、無理して何か有ったら困るだろう?」


「えー、司令ならきっと大丈夫ですよ。」

「そうそう、でも確かに何か有ったら困りますね。」

「しょうがないなー じゃ10人まで減らしてあげるから頑張って下さいね?」


「分かった。 ありがとう、頑張ってみるよ。」

(十色に最初から10人と言えば無理だと断るが、最初に1000人と言う無理な数を要求する事で、10人と言う数が言葉以上に少ないと錯覚させている。 バイオコンピューター達の作戦勝ちである。)



 さて、その様な日々が続いていたが、艦隊の本当の目的である避難船団の捜索は順調とは言い難かった。 だがある日、思いがけない物が・・・


「司令、センサーが艦影を捉えました。 単艦の様です。 電波の類は確認できません。」


「よし、偵察機を発艦させ目視による確認を実施せよ。」


「了解しました。  ・・・空母『CV-0007』から2個小隊がスクランブル発進、接敵まで35分です。」


「よし、他にも何かあるかもしれん。 『まち丸』を分離、全艦警戒態勢、武器使用は防御のみ許可。 艦隊陣形(デルタ)。 全周警戒を厳となせ!」


 そして緊張の中、時間が過ぎていき・・・ 報告が、

「スクランブル小隊、不明艦を目視で確認、艦型識別の結果友軍のセンティネル級巡洋艦と思われる。 しかし一部形状に違いあり。 一致率84.6%。 エネルギー反応微弱、敵味方識別信号無し。」


「司令、エネルギーが尽きて漂流中の友軍艦と思われますが、いかがいたしますか?」


「そうだな・・・ セーフモードで辛うじてコアだけ動いているといった所か? 作業船を出して回収する。 調査はそれからだ。

 スクランブル小隊は作業船到着まで付近一帯の精密捜索を実施、艦の付属物等を見つけたら全て回収とする。」


「了解しました。 『ARB-0001、0002』の2隻を現場に向かわせました。 現場到着まで約3時間です。」


「分かった。 こちらは行足を止める。 全艦減速開始! 止めるタイミングはふじに任せる。」


「了解しました。」


 そして3時間後、現場に作業船が到着し、漂流艦を両側から挟むように接舷作業を開始した。


 何か引掛りを感じた十色は、「センティネル。 センティネルか・・・」独り言を言いながらも必死に考えていた。


「司令、何か問題でも?」


「いや、問題は無いはずなのだが・・・ ふじは何か感じないか?」


「すいません。 私には何も感じられ・・・」


 すると突然モニターが閃光とともにホワイトアウトした。 


「状況確認急げ、作業船は?偵察機の方はどうなっている?」

 突然の事態に十色は指示を出しながらも、今更ながらに違和感の正体に気が付いていた。


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