136 完
さて、更なる時が流れ地球への移住が本格化、各地への入植が順調に進み・・・ これにより、地球の主権は十色の国際連合から貴族連合主体の新統合政府へ移管された。
そして、各王家が中心となっての移住では有るが、それぞれの王家が国家を樹立したりはせず、あくまでも新統合政府の一員としての立場を守っている。 よって旧来の国際連合の名前は引き継がない事となった。
また政治体制の変化に合わせ、今まで地球の管理をしていた特殊重戦艦『大地』 (合議制行政システム搭載艦)については直接的な行政の管理を止め、新統合政府のアドバイザーをしつつ地球のあらゆる記録を残すデーターベースてしての任務に就く事となった。 (同盟各国との共有データーベースの一角を担っているので無くすことは出来ない。 また、新統合政府は『大地』経由でしか他国の情報にアクセスできない事も廃止できない理由となっている。)
ちなみに、スペースポート札幌を中心とした北海道については新統合政府が特区として十色に主権を戻し、現在も旧第104囮艦隊旗艦『仮装巡洋艦 サンフロワー8』に増設されている地上施設の統括バイオコンピューターによる管理が続いている。
さて、十色としては人目に付かない様に気を使ったりしていたのだが・・・
国際連合の名と膨大な戦力の保持に対する複雑な気持ちが新政府内に広がりつつあった。 特に地球での世代交代が進むにつれ、不満の感情が・・・
他国との付き合いについても、十色の国際連合がテラⅡや星団連盟、24番国と軍事同盟を結んでいる事に対し、新地球統合政府は不可侵条約を結んでいるに過ぎない事から更なる不満の対象となり・・・
さらに、人類発祥の地である地球に住まう自分達こそが人類の盟主たるに相応しいと言う思想を持つ者が増加している事もあって、国際連合を目障りに思う者が増えて行った。
十色も地球の人々を刺激しない様にと人前に出ないようにしていた為、関係の改善がなされなかった。 (表向きの理由である。 本当は人の相手をするのが煩わしくなって引き篭もっていただけである。)
それでも大きな問題にならなかったのは、騒いでいる者のほとんどが政治家やそれに扇動された一般市民だったからで、各王家などは十色に対して友好的であり、騒ぎを抑え込んでいたからだ。
しかし、不満の声は年々大きくなる一方・・・
人口増加は喜ばしいが、それは貴族がより少数派となるのを加速させてしまう。 そして札幌でのテロ未遂事件を切っ掛けに十色は特区の主権を王家に譲渡、地球及び衛星軌道から艦隊と共に姿を消した。 (それでも同盟各国と火星には国際連合の駐留艦隊が普通に存在していた。)
更に一部の政治家が中心となって、火星は我々の物だ、国連は出て行けと騒いでいたが・・・
超光速航行によって幾らでも条件の良い惑星を手に入れられる現在、それに賛同する者は少なかった。 (地球から国連が居なくなっただけで大多数の市民は満足していたし、火星は火星人の物との認識だった。)
そして火星では、
「さて、地球の人口も億を超えたし行政からも完全に手を引いた・・・ 復興出来たと見ていいかな?」
「はい。 司令はやり遂げました。
それに宇宙の広い範囲に人類が進出した今、人と言う種が滅亡する可能性は限りなく低くなったと見てよいかと・・・ 」
「ふむ。 では、誰が聞いている訳でも無いが・・・ ここに地球の復活を宣言する。」
「はい、司令。 お疲れ様でした。」
ふじの見守る中、十色は地球の復活宣言を行い、その夜は老兵達との酒盛りに・・・
そしてその後、十色が公の場に姿を現す事は無くなり、いつしかその存在は人々の記憶から消えていった。
だが実は・・・
それは国連を過去の物とする為の・・・
これは、新地球から始まったバイオロイドによる偽装人間を使った諜報機関の拡大と活動も大きく関わっており、計画された事であった。
更には、残された国際連合の宇宙艦隊は旧世紀の遺物である様なイメージを与えられ、危険で排除する必要がある物として見られるのを回避する為の工作がなされたのだ。
未来の敵に備えると共に、人類社会の陰に潜むための十色による作戦であった。
-終わり-
此処までお読みいただき、ありがとうございました。
この回で完結です。
次回作『屯田2号の惑星開拓』をよろしくお願いします。
作者名をクリックすると作品一覧が出てきます。




