135 十色のひきこもり準備?
そして、『三笠』による地球訪問から5年の月日が流れ、遂に貴族派に動きが・・・
早々に地球への帰還が決まったものの、その規模について迷走していたのだが、やっと先行偵察部隊と言うか、先遣隊が地球へ向け出発した。
肝心の移住本隊の規模は未だ未定のままだが、今は超光速航行が可能な船の数も少ないため大規模な移住が難しいのが現実だ。
この先遣隊は、宇宙船の整備補給の事もあり本部をダーウィン宇宙軍港内に設置した。 今後は小型機及び無人偵察機を使い、各入植予定地の状況確認と継続観測が実施される。
さて、何故5年もかかったのか・・・
貴族連合の地球への移住計画と宇宙の現状暴露、そして企業共同体による情報封鎖と思考の誘導による悪事の隠蔽の露見・・・
政治及び統治機構の立て直しに時間を要した為である。 (陰で十色の潜入アンドロイド達の支援が在った為、この程度で済んだ。)
因みに十色は、この5年で火星への拠点設置と移動、そして地下秘密基地の建設を終えていた。 数億の火星人の協力のお陰で、この短期間で地下巨大基地を作る事が出来たのだ。
現在、火星軌道基地に『第1護衛隊群』10万隻が駐留、火星地表基地に開発隊群や基地隊の艦船約2万隻が配備されている。 又、第104囮艦隊の本隊が戻ってきた場合この地表基地が母港となる。
さらに地下の秘密基地には、任務を解かれた40個護衛隊群 (10万隻×40=400万隻)と5個捜索隊群 (20万隻×5=100万隻)が出番を待ちつつ待機中となっている。 但し、今現在も艦隊の戦力増強計画は進行中であり、計画通りに全てが建造されればトータル1000万隻を越える事から更なる基地の建設が計画されている。 因みに、火星人の元母星も基地建設候補地の一つである。 (過去にゲートが造られた事実があるので、再度のゲート出現を警戒している。)
又、同盟各国における空間圧縮航宙ユニットの製造や空間圧縮航宙装置を組み込んだ新型の民間船が増産体制に入った。
これにより、従来型の宇宙船が使用している安全航宙路は将来的に空間圧縮航宙装置を組み込んだ新型船の長距離超光速航行専用の航宙路に変更される事となったが、現状では新型船の数が少なく変更時期については未定である。 が、各国の建造能力をかんがみれば、それはそう遠くはない話だろう。
そうなれば、新地球から地球への移住も加速するだろうし、コールドスリープを使用しての長距離航行をしなくて済む事から、同盟各国内での人々の行き来も活発化し増えるだろうと予測されている。
実際、今まで一つの惑星に籠りがちだった同盟各国では早速とばかりに星系内の他の星へコロニーの建造が始まっていた。
惑星国家から星系国家へと変化したのだが・・・ 今後は、近隣の他星系への進出と領有が進み、星間国家となる事が確実視されている。
ちなみに、今のままだと地球には貴族派を中心とし、新地球には企業体を中心とした新統合政府と新統合軍をもつ星間国家が早々に誕生しそうである。
既に同盟各国では各国家の主星から見て中間に暫定境界線が引かれているが、この先他の避難船団の子孫や、『ファースト』や『セカンド』と言った異星人との出会いも予想されていて、活動範囲の拡大、活発化を危険視する声も上がっている。 (領域の拡大は政府の管理体制を難しくし、末端まで目が届きにくくなる。 犯罪の増加に繋がる可能性が高い。)
特にテラⅡの人々は慎重論を重視し拡大戦略には消極的である。 (管理体制の強化を優先、拡大は二の次と第18次避難船団旗艦『バルミィ』搭載の合議制行政システムが判断、圧倒的多数のテラⅡ国民の支持を得ている。)
だが人類は、確実に新たな第一歩を踏み出した・・・ 人類の躍進が始まった。




