表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/136

134 航宙パーティー旅行

「それは?」


「私も知らされておりません。 国連軍の徴兵通知や第104囮艦隊司令への人事発令通知はあるのですが・・・ 私の手持ちの書類にも階級については何処にも記載が無いのです。」


「そんな事が? 俄かには信じられんが・・・ 」


「第104囮艦隊には軍関係者は予備役の私のみ、他は全て民間人です。 三桁艦隊は何処も同じ様な物で、いちいち階級を決める様な余裕は無く手間を省いたものと考えています。」


「当時の現場は随分と乱暴な仕事をしていたのだな・・・ いや、混乱していたのか? 想像以上にいい加減な様だ・・・ よく勝てたものだ。」


「そうですね・・・ ある意味、地球が壊滅したおかげかもしれません。 地球に居た何十億もの人が死に、各艦隊は武器弾薬の補給拠点を失いました。 当時の艦隊の人達は精神的にも追い込まれていた事もあり、一隻一殺の特攻作戦に出たのです。 我が104囮艦隊が生き残ったのは、偶々敵から一番遠くに居たからでしかありません。 敵の近くに居た艦隊から順に突撃して行きましたから・・・」


「それは・・・ 」


「「・・・」」


「よくぞその様な状態から持ち直す事が・・・ 地球に残った人達の努力と献身には幾ら感謝してもし足りない思いだ。 ありがとう。」


「くっ・・・ いえ、感謝など・・・ 国連軍の兵士として当たり前の・・・」 あふれて来る思いに言葉を詰まらせ、思わず嗚咽を漏らす十色であった。


「・・・」


「・・・何千年も前の出来事、気持ちの整理なんてとっくに・・・ 何でこんな気持ちに・・・」


「余人には計り知れんが・・・  貴公には、自身で思っていた以上の思いが有ったのだろう・・・ 」


 暫くして十色は持ち直したものの、その日の会談はそこでおひらきとなった。

 今後は、今回十色が持ち込んで渡した。 ポータブル空間圧縮通信機を介してのやり取りを中心に行われる事になった。



 そうこうしているうち、『三笠』就役記念と言う事で各王家、貴族家からの参加者が集まり、盛大なパーティーが開かれた。

 当初は、旧地球についての真実を知った者のみを集める予定だったが・・・ 

 貴族連合は躍進の時を迎へ、その力を見せつけるかのように1ヶ月に渡る豪華な航宙パーティー旅行と言う表向きの理由を付けた事で、その他大勢の人達がぜひとも参加したいと集まってしまい断れない事態となった。


 結局、参加希望者の乗船を認めたが、『三笠』に乗り込んだその他大勢には真実を知らせないで、秘密裏に地球に行く事に決まった。

 途中で『富士』とのランデブーや空間圧縮航宙ユニットの取付け、超光速航行等が行われたが・・・

 艦内から外を見る窓は全てモニターであり、偽装した映像を映していた為、パーティー客は誰一人真実に気づく者はいなかった。

 また、真実を知る一部の者は、本当の宇宙を見に艦橋に来ていたが、『富士』が見えるぐらいで普段と変わり映えしないとの事で、早々に艦橋に上がって来る事が無くなった。


 貴族達よりも、艦橋などで勤務する『三笠』のクルーの方が各種データーを確認できる分、驚きが大きいものとなっていた。


 そして、いざ地球に到着しても真実を知る者以外には入植を始めたばかりの地球型惑星とだけ伝えられた。

 『三笠』は新月面基地に着陸、スペースポート札幌との定期シャトルを運航する事で、観光地として発展中の北海道を開放し人々を楽しませた。


 そんな中、選ばれた王族のみダーウィン宇宙軍港や同盟各国派遣艦隊の居留地を始め、地球各地の現状を見て回っていた。

 そんなこんなで10日程留まり、『三笠』は予定通りに新地球への帰路につき、就役記念パーティーを問題無く終える事が出来た。


 だが、一部の人達にとっては人類発祥の地である地球への帰還についての検討会が・・・ 当初、永遠に続くかと思われていたのだが、貴族による各正統王家の血統を地球へとの思いがことのほか強く、早々に地球帰還が決められた。


 問題は、企業共同体と一般市民の扱いで、いつまで経っても答えが出せなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ