120 第110護衛隊の敗北
110護隊のコンピュータから報告が・・・
「司令、敵艦隊との距離開きません。 加速力は向こうが上です。」
「向こうはこのまま勝負を決めるつもりか・・・ よし、全艦機関最大出力のまま右180度回頭。 逆加速でファースト艦隊をやり過ごす。」 (全艦がシステムリンクによりバイオコンピューターで制御されているからできる事であって、人の手で制御されていた場合は少なからず混乱が生じ被害が増す。)
それに対し、ファースト艦隊は110護隊の逆加速に付き合わずにそのまま前進、大きく左回りし110護隊の側面を突く動きを見せる。
「やはりファーストの進化は驚異だな。 此方の重戦艦の砲撃にも耐えている・・・
それに対してこちらの損耗率は既に3割を超えた。 ここまでだな・・・
撤退するぞ! レーザー攪乱粒子、及び機雷の散布を開始せよ。 デコイも全部出せ! 何とか振り切るぞ。」
「了解しました。 敵艦隊への進路妨害を開始、当艦隊は撤退戦に移行します。」
さて、時を同じくして遠く離れた元火星人の母星近傍に有るゲート周辺では第12護衛隊群から分派された3個護衛隊3万隻とゲートの守備に就いているファーストの2個艦隊2万隻の戦いが行なわれていた。
戦いは、ゲートの左右に配備されていたファースト艦隊に対して、その外側からそれぞれ1万の地球艦隊が攻撃を仕掛けたのが始まりだ。 (残り1万は予備兵力として索敵範囲の外で待機中。)
この戦いにおいて十色は、ファーストへの技術情報流出を警戒し1000年前の技術で造られた旧式艦を投入していたが、ゲート守備のファースト艦隊はそれぞれ地球戦役頃の3000年前の超旧式艦とその戦訓が取り入れられただけの2000年前のかなりの旧式艦・・・ 問題無いと判断された。
実際、地球艦隊は危なげなく戦闘に勝利し、早々にゲート破壊と残敵掃討を行っていた。
最終的に十色の指揮する110護隊の撤退戦は失敗し、全滅した事を考えると・・・ 2ヶ所で行われた戦闘は真逆の結果に・・・
しかし、VRシステムにより艦隊の壊滅と乗艦していた戦艦の爆散を体験した各派遣艦隊の人達は顔色こそ良くなかったが、焦っている様子は無く、十色については顔色を悪くする事すら無かった。 (今回十色が指揮した110護隊は、月面基地で改装作業待ちの旧式艦によって編成替えされており、最初から負ける予定の艦隊だった。 派遣艦隊参加者は全員そのことを知っており、誰も焦る事は無かった。)
「やはり1000年の技術格差は大きいな。 旧式艦ではファーストの最新鋭艦と勝負にならん・・・ 」
「はい。 しかし、あの程度なら此方も新型を出せば十分渡り合えるかと思われます。」
「ふむ、とりあえず作戦通りだな・・・ 次は101護隊の出番だVRを接続せよ。 ゲート攻略部隊からの報告が届き次第、仕掛けるぞ!」
「はい、了解しました。」
---作戦計画についての説明---
当初の予定では、第一段階としてファーストの通信を遮断する為ゲートを破壊することになっていた。 そして此方の情報を敵に渡さない為、既に知られている旧式艦で攻撃する事になっていた。 (ゲートの守備に就いているファーストの艦隊は更なる旧式艦と判明していたため問題無いと判断された。)
そして第二段階としてファーストの新型艦隊と戦う事になっていたが、このゲート及び守備艦隊との戦闘でファーストの新型艦隊が引き返したりしない様に110護隊で足止めする事が作戦に追加された。 (ゲートに対する攻撃を知って全速力で帰投されると、会敵のタイミングを失う可能性が出る。)
その際、ゲートの通信系がまだ機能しているので、足止めを行う110護隊は此方の最新情報を渡さない為、すでに性能が知られている旧式艦を使用する事決まった。
(因みに、ファーストの通信方法は不明で、ゲートが通信の中継システムと言うのはあくまでも推測である。 それでもその可能性が0でないなら、少しでも自軍の将来にプラスになるならばと実行された。)
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