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010 一線を越える時

 月日は流れ半年後、第104囮艦隊の本隊が現場宙域に到着した。

 この間、遠隔調査・遠隔作業を続け新たな情報の取得と各準備が行われていた。


 御遺体の回収作業についてみてみると、破壊された輸送船に積んであったコールドスリープ装置は無事な物を回収していったらしく、ここで見つかった物は一部だけで、壊れているものばかりであった。

 また、破壊された戦闘艦も生存者が脱出する時間は十分有ったらしく、艦内から収容された遺体は少数であった。

 結果、ここで発見された御遺体は全部で287体であった。 これらは現在、地球へ向かう特別任務部隊の艦船に収容中である。


 情報収集については、コアユニットやデータベースからだけではなく、居住区内の個人の私物にまで及び、全てのデータは第104囮艦隊の旗艦のデータベースにコピーされた。 


 今回発見された7隻の遺棄艦船については、新たに推進装置などのユニットを外部に取り付けてあり、特別任務部隊からの遠隔操作で月のドックに運ばれる予定である。

 そして修理の後、旧第104囮艦隊の艦船と共に保管される事になっている。


 第22次避難船団捜索の為に付近捜索隊の配置を見直す件については、結局実施されなかった。

 各捜索隊は従来の計画通りに行動する事とされ、替わりに第104囮艦隊の本隊では半年間の移動中に90隻程の新造艦が造られ、本隊の艦船とシャッフルされる形で新たに捜索隊が編成された。(1部隊あたり15~20隻で編成され、4部隊作られた。 部隊名は第X0捜索隊群 第X1~第X4捜索隊とされた。)


 そして、十色の身の回りでも若干の変化が・・・ ふじの見た目を司令が気にするとの理由で、富士がバイオロイド端末を成長させたのだ。 但し、元の体から大きく変化させると細胞の破壊に繋がるとして、見た目20歳になるかならないかぐらいで成長が止められた。


 富士はこれで問題解決としたが、十色にとっては別の問題が・・・

「ふじ、お前も大きくなったし、そろそろベッドを別にしないか? それに大人二人だと狭いだろ?」


「わかりました。 御主人様に迷惑をかける訳にはゆきませんね。」


「さすがふじだ、分かってくれたか。」


「はい、もちろんです。 さっそく大きいベッドに変えますね。」


「「・・・」」


「分かってて言ってるな?」


「もちろんです。 私もそろそろ一線を越える時だと思っていました。」


「ちがーう。 分かってなーい・・・ わざと間違えてるな?」


「御主人様こそ現実を見て下さい。 愛し合う男女の前にベットが一つ、そして周りには誰もいない。 やることは決まっています。」


「何を言っている。 長く一緒に居るからある種の愛着は持っているが、お前の本体は船なんだぞ! 愛し合うとは違うだろ?」


「わかりました。 愛が無いのは残念ですが・・・  御主人様の性のはけ口として頑張ります。」


「だ・か・ら  そうじゃなーい」


「御主人様こそウブなネンネじゃあるまいし、何百年も女日照りでいい歳をした大人なんですから・・・ いい加減覚悟を決めて下さい。」


「だから、 そう言う事じゃ・・・」


「大丈夫大丈夫、痛くしませんから・・・ ほら御主人様、口では何だかんだ言っても体は正直ですよ~。」


・・・

・・


「今更あーだこーだ言いたくないが・・・ そこはかとなく汚された気分だ。」


「えぇ~ そこは最高だったって言って下さいよ!  今のでふじの心は大きく傷つきました。」


 いろいろ言ってはいるが、長い時を1人で過ごしていた十色にとって、この半年のふじとの生活はとても楽しい物であった。 付き合い方が変わる事でこの生活が無くなるかもしれないとの思いが心理的ブレーキとなっていた。

 もっとも、ブレーキが外れた今となっては今後どうなっていくか・・・



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