001 過去の出来事
新作の投稿を始めました。
よろしくお願いします。
モニターに幾つもの輝きが現れては消えていく・・・
そしてその輝きの中、数えきれない人々の命も・・・
「状況を知らせろ! 敵は此方に食いついたのか!」
「お待ちください・・・ 残念ながらこちらに向かってくるのは約8割といった所です。 残りの2割は第24次避難船団に向かっています。 船団は初期加速段階ですので振り切るのは難しいかと・・・」
確かにモニターには惑星軌道上から離脱を開始した船団が映っているが、推進器の輝きの割にその歩みは遅かった。
「近くに助けに行ける友軍艦隊はいるか?」
「防衛艦隊は既に全滅・・・ 第36囮艦隊が一番近いですが、到着まで1時間以上はかかるかと・・・」
「くそっ・・・ そもそもシングルナンバーはどうした! ここは奴らの担当宙域だろうが!」
「分かりません。 索敵圏内にそれらしき反応無し。 通信による呼び出しにも応答ありません。」
ーーシングルナンバーの説明-ー
一桁の艦隊を言い、第1~第9囮艦隊を示す。 最新の装備と優れた人材を集めた一線級の部隊。
ちなみに第10囮艦隊以降の二桁の艦隊は、旧式艦や地方軍の軍人達により構成された二線級の部隊である。
更には第100囮艦隊以降の三桁の艦隊がいるが、ほとんどが接収した民間船で構成されており、人員も訳アリが多い。
ーーーーーー----
「避難船団には自力で何とかしてもらう他無いな。 ほとんどが民間船で編成された三桁艦隊の我々に出来る事は囮位しかない・・・」
無力感に苛められながらもモニターを眺めていると、避難船団に近づく為に惑星軌道上に侵入した敵艦隊の前方部分に爆発の光が・・・
「何が起きた! ズームだ。 画像を拡大しろ!」
限界まで拡大すると、辛うじて戦闘機らしいと分かる影が何機も映っていた。
「何処かの空軍か海軍航空隊のようだな・・・ ロケットブースターを付けて無理やり軌道まで上がって来たのだろうが・・・ 気圏外では機体のコントロールはできないし、打ち出したミサイルも誘導装置が機能しまい、まっすぐ飛ぶかも怪しいものだ・・・ 良く敵艦に当てられたな、凄腕のパイロット達だな。」
「そうですね。 それに・・・ 彼らは英雄ですね。」
「ああ、本当にそうだな・・・」
それを見ていた者達は一瞬で理解した。 あの戦闘機達に自力で惑星に戻る力はない。 避難船団が出発する為の時間を少しでも稼ぐ為に、死ぬのを覚悟で上がって来たのだろう。
そしてその思いは報われた。 敵艦隊の目が戦闘機群に向いたのだ。
一機、又一機と身動きのとれない戦闘機が破壊されていく中、避難船団は無事に出発して行った。
だが、その場に残った第104囮艦隊にとっての地獄はまだ始まったばかりだ。 防衛艦隊や戦闘機群が全滅し、避難船団が居なくなった今、全ての敵が向かってくる。
「よし、全艦増速。 進路070度。 俯角005度。 少しでも敵を惑星から引き離すぞ。」
・・・
・・
・
「また、あの時の夢か・・・」十色はコールドスリープ装置内で覚醒しながら思わず口に出す。 あれから既に100年以上の時が過ぎたのだが未だ記憶が色あせる事がない。 もっとも、ほとんどの時をコールドスリープ状態で過ごしていた為、覚醒していた時間は1年にも満たないが・・・
「コンピューター、緊急事態か?」コールドスリープ装置から出ながら問いかける。
「いいえ、定期覚醒です。」
「そうか、1年経ったか・・・ 何か特異事項は有るか?」
「いいえ有りません。」
「わかった。 報告は明日艦橋で聞く事とする。」 十色はコールドスリープから目覚めたばかりで体調が万全ではない為、体を休めることを優先した。
「了解しました。 現在の艦内時刻は0911。 明日艦橋へは何時ごろお越しでしょうか?」
「0800に行く。」
「了解しました。」
昔は目覚めれば体調なんか後回しで、直ぐに艦橋に上がり状況確認をしていたものだが・・・
長い年月何も無い状況が続き、無理して直ぐに艦橋に上がる事もいつしか止めていた。
十色は、今回も手掛かりは何も無さそうだ。 と、あきらめに似た思いを持ちながらも、休む前に少し何か腹に入れようと食堂に向かった。