一日目
俺はなんのとりえも無い三十代のサラリーマン。
仕事では万年平社員。出世競争では同期に完全に後れを取っている。安月給で、家族からの視線も冷たい。
ではスポーツや音楽ができるかというと、そういった特技も全く持っていない。
思えば子供の頃の夢は漫画家だった。
実を言うと今でもなりたいと思っている。
漫画家はスポーツ選手やミュージシャンと違い、努力すれば三十代でもなれなくはない。
事実、中高年でデビューした漫画家もいる。
だから、頑張れば今からでも遅くはないかもしれない。
しかし、俺には漫画家になれない決定的な欠点があった。
それは、絵が描けないことだ。
何度か練習を試みたことはあったが、小学生レベルの自分の絵に絶望し、その度にペンを投げ捨ててしまった。
ふいに、新たなアイディアがひらめいた。
そうだ!絵は描けなくても文字なら書けるぞ。小説家だ!
さてどうやって小説家になろうかな。そう考えたとき、真っ先に浮かんだのが文学賞へ応募することだった。
俺は様々な文学賞や新人賞について調べたが、どれも難しそうだった。
もっとハードルの低い手段を模索し、出会ったのが「小説家になろう」だった。
早速なろうに登録した。
ここである疑問が生じた。
いきなり小説を投稿して、思ったとおりに表示されるのか、という問題である。
まず投稿の練習をしてみる必要があった。
それがこの文章である。