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第五怪 中庭の怪物

 

 彰:「なるほどねー」


 部長に「非常階段の無数手形」を報告すると部長は納得したような顔をして、パソコンに何かを打ち込んでいる。


 拓海:「それで、どうだ?何かしらの目処は立っているか?」


 彰:「たってはいるけど、どうだろう。一応見てみないとな、手に関する事件や事故は数年で3つはヒットしたけれど、流石に年齢とかはどうだろう。指輪とかしてたら断定できるんじゃないかな」


 拓海:「魂の形…か」


 彰:「そういう事、ともかく、他の七不思議を引き続き調べて欲しい。ここ最近で目撃情報が多い奴…「中庭の怪物」なんてどうだ?」


 拓海:「ああ、あれか、でも本当に怪物か?人間の形をしていたとしか聞いていないが」


 久美:「えっと、ともかくそのお話の事、説明をお願いします」


 ~中庭の怪物~


 この学校の中庭にはとても大きい樹が植えられている。その樹はこの学校ができる前からあったものらしい。

 学校を立てるに当たって切り落とすって話になったんだけど、当時は御神木的な扱いをされていたから、地元の人たちによって猛反対されて、最大限の譲渡として、中庭に設置する形でその樹は切り落とされずにそのままにされた。

 だが、学園ではその木の辺りで怪物を見たという人が何人かいる。

 目撃証言では人型だった、虫のような触角があった、足先が三本の木の根みたいになってた。と、言うもので中庭に近付く者はあまりいない。



 彰:「七不思議というよりかは、祟り神のような話に聞こえるがな」


 拓海:「信仰されていた物が急に信仰されなくなったことによって、神罰が下るんじゃないかって噂だったんだが…実際、不幸になったとか聞かないしな」


 彰:「ただ、共通点が一つだけ、雨が降っていたというだけで、水があたることで祟り神様がパリピになっているんじゃないかとも言われてる」


 もう、そんな話の時点で怖くもなんともない。


 彰:「先程、天気予報を見てみたが、あと少しで雨が降るらしいぞ」


 部長がそう言うと窓からサァァと雨粒の音がする。


 拓海:「噂をすれば影ってやつかちょうどいいな」


 彰:「俺はさっきの七不思議の事を詳しく調べてみる。引き続きで悪いが、中庭の調査をお願いしていいか?」


 拓海:「…まぁ、弓道部も雨天ではできないし、そうする」


 久美:「やりますよ。私は部活を兼任してないので」


 中庭に移動する。話の通り大きな大木がそこにはあった。やたらと大きな大木で3階を越える程の大きさだ。


 大木をぐるっと囲むように花壇が並べてある。


 久美:「…で、つい隠れちゃってるけど、いいんですか?」


 拓海:「あぁ、オカルトっていうのは誰かに見られている間は見えない物だけど、見たい時に見れる時が一番オカルトを実感できる。これが俺が持つオカルティック哲学だよ」


 久美:「そうですか…ん?」


 雨が降っているのに影が…?太陽じゃないとしたらどこかの教室からかな…影が大木の方へ、まるで大木の近くに人がいる様な…


 久美:「あぁっ!!ブロッケン!!」


 拓海:「うおっ、なんだいきなり」


 久美:「ブロッケンですよ!」


 拓海:「はぁ?なんだそれ」


 ブロッケン


 雲や霧をスクリーンにして光が当たる際に物質や植物の影が揺れることで人のシルエットにも見える事があり昔は妖怪の一種として考えられていた。


 拓海:「なるほど…でも教室の灯りだけでそんな現象が起きるか?」


 久美:「障害物の影を中心に光が散乱するので、太陽自体がブロッケン現象を起こすことがあるのでそれもあるのでしょう。今日は半日授業のため、太陽が丁度真上に来ているので、その影響でしょう」


 拓海:「そうか…でも、いいのか?」


 久美:「えっなにが?」


 拓海:「確かにその解釈で行くと、お前が期待していた奴は無くなったことになるが…」


 久美:「…あ」


 何で私は自分で自分の期待をうちけしてしまったのだろう…

次回8月4日

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