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第四怪 非常階段の無数手形

 久美:「…はぁ~」


 どうしよう、もう部室に入る前から、気が滅入る。オカルトを求めて入学したのにこんながっかりするものばかりで、どうも部室に入る事自体が嫌になりそう。


 ???:「おい、一年坊入るなら入らねぇか」


 久美:「えっ」


 背後の声に振り返るとそこには、部長と同じネクタイの学生がいた。すぐに謝り、やむを得ず部室に入る。


 彰:「やあ、今日も来たね…って、タクも来たのか」


 ???:「ああ、少し耳に入れたことがあってな、てか何?こいつが新入部員のやつ?」


 彰:「あぁ、そうだ、互いに自己紹介した方がいいだろう」


 ???:「そうだな、オーソドックスに自己紹介からってやつだ。俺は澱橋 拓海 一応、このオカルト研究会の副部長をやってるが、弓道部にも所属している」


 久美:「初めまして、私は矢藤 久美です。この前この部活に入りました。よろしくお願いします」


 拓海:「ああ、よろしく、それでアキ、新しい七不思議、見つけてきたぞ」


 彰:「そうか、ありがとう、聞かせてくれ、君も聞いてよ」


 部長に促されるまま席に着き、拓海副部長は語り始める。


 ~非常階段の無数手形~


 三年生の教室からの災害からの避難用の非常階段は西と東の両方に駆け込みマークがあるにも関わらず、東の階段しか使わない。何故なのか?

 ある三年生が教室で放課後、眠気に抗えずうたた寝すると、夢の中で自分一人で非常階段のしかも行ったことのない西の階段を下っていたらしい。

 すると、下の方からペタリペタリと汗ばんだ手を這わせているような音が聞こえる。夢の中だからかその生徒は歩みを止められず、その音の方向へ歩いてしまう。

 その時に見回りの先生に起こされた。

 すぐに生徒は見回りの先生に謝り、一緒に昇降口まで行くことになったんだが、急いで帰る為に普段使わない西階段を使ったんだ。

 夢が正夢になるかもしれないと思った、そして、運悪くその夢は正夢になってしまった。ペタリペタリと夢で見た音が聞こえる。

 先生はまだ他にも生徒がいるのかと声をかけたが音は止まず、次の瞬間、その階段は一瞬にして無数の手形が張り付いた。

 


 拓海:「…って話だ」


 彰:「それ、実話だよな。その後、二人はどうしたんだ?」


 拓海:「驚いて、すぐに引き返して東階段から逃げたらしい。それでオカルト研究会のおれに話してきたわけだ」


 久美:「それで、その真相は…」


 拓海:「知らねえ、だから、今日は弓道部に休部届け出してここに来たんだし」


 彰:「うん、確かにそれは新しい七不思議になりそうだな、丁度いい。その七不思議の調査タクと久美の二人に任せよう。岸谷先生には話を通して見回りの先生にも都合を話しておく。久美、君にとって初めての本格的な活動だ。君の期待している展開があるかもしれない、頑張れよ」


 部長はそう言って背中をバシバシ叩くと副部長と私の背中を押して廊下へと出されてしまった。


 拓海:「…ああいうやつなんだよ。自分から行くのは安全だと分かれば行く。誰かが収穫ありで危害を加える類じゃないならバックアップとして仕上げる。何とも虫のいい奴だ」


 久美:「でも、行くしかないんですよね」


 拓海:「そうだな。取りあえず下調べという形でその場所に行ってみるか、昼に起きる現象というのもあり得ない話じゃない」


 三年生教室西廊下


 拓海:「この廊下を通って、男子トイレの手前の階段…ここだな」


 久美:「…見たところ東の階段とあまり大差ないですね。鏡みたいに反転している以外には」


 拓海:「怪談とはそう言うものが多い。特定の場所にしか現れず、そこから動けない。七不思議というのは特定の場所で、同じ現象、同じ霊と決まっている。だから、目撃証言が同じなんだ」


 久美:「あれ?そういえば…」


 ふと気になってこの前に貰った調査場所の一つにこの階段の場所にマークがあったことを思い出す。生徒手帳と見比べてこの場所が調査場所として記録されている事に気付く。


 拓海:「やはり、ここもチェックが付いていたか」


 副部長はやれやれと首を振って、階段を降りる。一段一段じっくり手すりや足元を見ながら。


 不意にピタリと止まり辺りを見渡す。


 拓海:「…ここか」


 久美:「何かありましたか?」


 拓海:「ここ、足跡が途切れている、いやターンして逃げた現場だ。つまり、ここで目撃者はマ〇ターハンドとク〇イジーハンドの黒い奴に驚かされたってわけだ」


 久美:「そんな具体的な…」


 その時、下の方からペタリペタリと音が聞こえた。


 拓海:「へぇ…昼間から、随分陽気な奴だ事」


 音は段々と近づいてきて副部長の一段前のところで止まると辺りが一面黒い手形で染まった。


 拓海:「ほう…どれどれ」


 副部長は特に動じずに、手形が付いた手すりや床を触ったり、匂いを嗅いでいる。


 拓海:「心霊現象に間違いはないけど、これは血じゃないし墨のようなものでもない…なっ!」


 副部長はそう言うと何処に隠し持っていたのか、矢をタイルに突き刺した。その後、懐からペイントを取り出して地面にひびを入れた矢にかけると重力に逆らうように両手がペイントによって姿を現す。


 副部長はその手を見ながらブツブツと呟く。


 拓海:「手のひらサイズとゴツゴツした感じから、恐らく男性の手…俺のと比べるとやや大きいし指が太い…目算からして40~50前後の歳だな」


 少し、呟いた後に頷き、振り向いて


 拓海:「よし、後はアキに任せるか」


 久美:「えっ!?いいんですか!?ここまで来て」


 拓海:「写メも撮ったし後はバックアップだけだよ。それに…あれは新参者だと言うことが分かった」


 久美:「新参者?」


 拓海:「ああ、一応その事も話しておくか、そうだな…「トイレの花子さん」知ってるよな。それには色んな説がある。例は省くがそのような有名な怪談は複数の学校で同じ様な怪談がある。その正体は外、つまり、屋外での霊がたまたま学校に入ってしまった霊だ。

 今回の奴はそれと同じ、学校に入り込んで怪異に魅入られて、手形を残せる能力と引き換えにその場所意外だと何もできなくなった、愚かな霊、生者に干渉できないどころか、服にも、存在を証明できないなんてな」


 副部長はハンカチを取り出して手形に押しつけるが、手形はハンカチに付着することはなかった。


 久美:「…ということは」


 拓海:「お前が期待しているような実際のところ無害な怪談だったわけだ」


 久美:「…ソウデスカ…ソウデスカ…」


 もう、オカルト研究会止めたいけど、ここまで来てやめられない、せめて一つだけでいいから本格的な事故物件的な奴をください。

次回7月28日

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