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第一怪 屋上の飛び降り霊


 今、私はオカルト研究会の部室の前にいる。胸が高鳴り、心臓の鼓動が聞こえる。


 緊張、期待色んな感情が身体を動かして、私はこの部活に入る。意を決して扉を開く。


 久美:「すみませーん!入部希望ですっ!」


 ???:「…おや、入部希望者か ようこそ、オカルト研究会へ歓迎しよう。まずは自己紹介をして貰いたいけれど、入部届けは持ってきてるよね。取りあえず提出してもらえる?」


 その人は出した入部届けをジッと見て軽くうなずくと、こちらに向き直り、ぺこりとお辞儀をする。


 九十九:「改めてようこそ、オカルト研究会へ、俺はオカルト研究会部長の「九十九 彰」だ。えーっと…悪いな、前任者から、無理矢理部長に任命されたから、新入部員の対応とか初めてでね。取りあえず席は…あぁ、椅子を用意するところからか…」


 彰と名乗った部長は、近くの机と椅子を円状に並べてある机の中に含めて座るように指示する。


 部室の中にはアニメで見るように髑髏の模型や魔法陣は無く、薄暗いわけでもない。そして、部長以外に部員と思われる人がいない。


 久美:「あの…他に部員はいなかったり…?」


 彰:「いや、いやいやいや、いるよ。俺含めて後、7人、だけど、他の奴らは違う部活と兼任しているから、この部活に顔を出すことはあまりないかな」


 久美:「そ、そうですか」


 彰:「それよりも、部活動についての説明をするか…この部活の内容は単純なもの、この学園には多くの怪奇現象が目撃されている。我々はその実態を徹底的に隅々まで、一滴の情報すら漏らさずに、記録する。ただそれだけだ。分かりやすいだろう?」


 そういう部長の顔は怪しく、無意識に鳥肌が立つ。


 彰:「まぁ、他の部員もその怪奇現象の情報収集をしている。この部室にいるだけじゃ情報なんて入ってこないし、そういう事から部活を兼任している奴らはとても優秀と言えるからね」


 久美:「あぁ、なるほど、部長は何か兼任とかしないんですか?」


 彰:「部長というのはこう見えて多忙でね。今回みたいに入部希望者の対応に顧問に活動報告、他にも活動内容の変更とかかな。デスクワークや深夜の部活動の為に許可をとったりも

…まぁ、色々」


 久美:「…今さらっと言ったんですけど、活動内容の変更って?サッカー部がいきなり野球をやったりするんですか」


 彰:「そんなわけあるか、若干の変更だ。オカルト研究会ではそういうのがよくある。今までの例だと「この区域」のオカルトや、「学園外」の怪異とか主に活動範囲を広げたり縮めたりするのが主だった。先輩たちが卒業した後、殆どの人が部活兼任したから、範囲更に縮小して、今は「学園内」に収まったわけだ」


 久美:「じゃあ、私も何か兼任した方がいいんでしょうか?」


 彰:「いや、もし、他にやりたい事とかなかったら、これらの場所を調べて欲しい」


 部長が渡してきたのはこの学校の見取り図、生徒手帳に書いてある見取り図よりかなり簡略化されており、所々に?マークと!マークが記載されている。


 彰:「今渡したやつの!マークの所には実際に確認したもの、バックアップ済み、情報を完璧に記せたものだ。そして、?マーク、それは目撃証言があるが、確認や、情報の取りこぼし、そもそもデマの可能性がある」


 久美:「つまり、?マークのところに行ってその、オカルティズムを調査して来いと?」


 彰:「察しが良いな、俺が説明する手間が省ける。それらの総称「羽根墨学園七不思議」を全部その眼で調べてきてほしい」


 その言葉を聞いて矛盾を感じた。渡された地図上のマークは全部合わせて7個以上!マークは5個しかない。


 久美:「七不思議って、これら7個以上じゃないですか、デマがあるとはいえオカルト現象がそんなホイホイあるなんて…」


 彰:「ん、あぁ、そうか、その説明がまだだったな…今日は初日という事もあるし、その事も言っておこう」


 部長は一つ咳払いをして、話し始める。


 彰:「知っているかもしれないがこの学園、いや、この地域は平安時代から、怪現象が絶えない町だった。その最も怪現象があった跡地にこの学園が建てられた。なんでそんな事をしたのか、それ自体が七不思議の一つ目、なのかもしれない。だけどなこの学園はやや規模が広い。怪談なんて日に日に増えていくばかりだ。

 つまり、この学園の「七不思議」はあくまで複数存在するという表現であり、七つ以上あったり、今渡した5つだけしかなく、?マークは見間違えか、デマという可能性があるって事だ」


 久美:「た、たしかに、アニメとかでも七不思議の最後の一つは知らないって語られてることが多いですよね。現実ではそもそも無いってことですか」


 彰:「その通り。せっかくだ。俺が体験したこの学園の七不思議の一つ「屋上の飛び降り霊」の話をしよう」


 ~屋上の飛び降り霊~


 この学校が出来て数年の時、高等部の三年生の生徒の中に可愛らしくて美人な娘がいたらしい。


 彼女の家は随分といい所の娘らしくて、品行方正だけでなく礼儀正しく、誰にでも優しい。そんな人だったらしい。


 しかし、そんな彼女に苛立ちを覚える人は少なくなかった。


 この学校は一般の人でも入れる様な普通の学校で平均点を取れれば確実に入れる偏差値だ。なぜか彼女はこの学校に入った。今思えば、それは彼女がこの学校に自分から入ったのではなく、この学園の幽霊に誘われたと考えている。


 話を戻そう。彼女は学校に入った時から、みんなから優しいなどの褒め言葉が多く送られていた。そんなある時、そんな彼女を羨んだのか、同じ学年の女生徒が何人かの生徒を募らせて、いじめを始めた。


 それは、今までの彼女の人生の中で初めてだった。初めての痛み、苦しみ、今まで恐れたことなない。それを彼女は体験してしまった。


 そして、今まで生きてきた中でこの様な事を知らなかった彼女は耐えきれなくなり、いじめの事を誰にも話せずに…夜中に屋上から飛び降りた。


 それ以降、夜に屋上を見ると高校生の女性が虚ろな目で、飛び降りる姿を見たという噂が学園中に広がった。


 もし、それを止めようと、屋上へ足を踏み入れたら…肉体に憑かれて自殺する事になってしまう。


 



 彰:「…という話だ。どうだ?それが学園七不思議の一つ「屋上の飛び降り霊」の話だ。ありきたりな話だが、俺も実際にこの目で見たんだ」


 その話しを聞いた私は、自分の鳥肌が立つのを感じながら、喜びに満ち溢れた。今まで心霊スポットなどに行ったことはあったが、収穫などなく、ハズレばかりだった。


 もしかしたら、私もそのような出来事を体験できるかもしれない。


 彰:「…まぁ、もうその霊は飛び降りることは出来ないがな」


 久美:「へっ?」


 彰:「これは実際に見てもらった方がいいか、ついてきな」


 そう言うと部長は壁にかかっている鍵を持って廊下に出る。


 久美:「あの…どこへ?」


 彰:「屋上だ。霊のいたところへ行こう。まだギリギリ太陽が出ているから、霊は現れない。最も先程の通り、飛び降りることは出来ないがな」


 久美:「よ、よくわからないのですが…飛び降りることが出来ないって?それになんで鍵を持っているんですか?」


 彰:「飛び降りの件は実際に見てもらうとして、鍵は部活で使うからだ。部長は仕事以外に権利を持っていてな、深夜に許可さえとれば見回りの先生に見られても咎められないとか、部活動に必要な物を持つことが出来る。この合鍵がそのひとつだ」


 屋上への階段を上がる時再び部長が口を開く。


 彰:「…うん、今日は運がいい。完全下校時間前に日が沈む、霊を見れるかもしれないな」


 久美:「えっ!」


 その言葉に目を輝かせた。霊を見れる。そのような体験を私は今、初めてできるという事に心躍らせる。


 屋上の扉の前で部長は屋上の合鍵を差し込む。扉を開けると同時にビュウッと突風が吹き込み、二人の髪を揺らす。


 屋上から見た空は既に半分、日が沈み始めていた。


 しかし、それよりも目立つものがそこにはあった。


 屋上のフェンスが他の学校とは明らかに違った。


 彰:「ここで飛び降り自殺が多いと考えた学校側はその対処として、3メートルのフェンス更に足をかけられないようにしたんだ。それで、霊が取り付いても、そもそも足をかけられないし、飛び越えられない」


 久美:「ええ…」


 正直言ってよかったというかがっかりと言うか、何とも言えない気持ちになった。


 久美:「で、でも、あれですよね?霊体だから霊自体はすり抜けて、飛び降りの目撃情報はそのままで…」


 彰:「いや、この措置が取られてから、目撃情報もパッタリ無くなった」


 久美:「な、なぜっ!?」


 彰:「これは、地縛霊や怨念が強いものだと実体を持つものが多い。ここの霊はその類いに入る。これも俺が実際に調査して分かったことだ。そして…」


 部長はそう言うと、懐から何かを取り出す。それは、円状の何かに見えたが、すぐに糸のようなものだと分かった。


 彰:「これをここに仕掛けて…と、準備オーケーだ」


 部長は私の手を取って、屋上から入ってきた扉へ小走りで向かう。


 扉を抜けるとすぐに鍵をかけて、小窓から様子をうかがう。もう日は今落ちる瞬間だった。


 その時、すぅ…と暗闇から人影のような者が浮かび上がる。中央に備え付けている弱弱しい明かりがその姿を照らす。


 それは、制服を着た女性だった。部長を見ると部長は黙って自分の足元と霊の方向を交互に指してる。


 久美:「…あっ」


 霊がいる所には影がない。実体があるとは言え、肉体がないと影もないのだろうか。


 霊はそのままフェンスに向かっている。そして、次の瞬間…


 部長が仕掛けた糸に引っ掛かり思いっきり転んだ。


 久美:「……」


 彰:「くっ…くくくっ」


 これは、普通の人間にやったのなら、笑うところなのだろうが…


 霊は、糸が張られていることに気が付き、またがってフェンスの前に立つ。


 しかし、足をかけられずに指先だけで登ろうとするが、落ちたり、その場でぴょんぴょん跳ねて、越えようとするが、3メートルのフェンスに届くはずもなく、フェンスに思いっきり体当たりをするが、すり抜けない。


 霊は辺りをキョロキョロして、私たちが見ていることに気が付いた。


 霊:「ーーー!ーーーー!ーーーーーーー!!」


 何かこちらに向かって何かを言っているが、扉は分厚い鉄の扉なので窓越し程度では、何を言っているのか分からない。


 彰:「あ、そろそろ、完全下校時間だな」


 そう言うと彰は未だにこっちに向かって叫んでいる霊に向かって、見下すゲス顔を見せて、スタスタと私の手を引いて屋上を去る。


 彰:「どうだった?あれがこの学園の七不思議の一つ「屋上の飛び降り未遂霊」だよ」


 久美:「…夢ぶち壊しな上に名前変わっているじゃないですか」


 彰:「まぁ、今回はこんなものかな、でも、まだまだ七不思議はある。次の部活動には他の七不思議を見に行こうか」


 久美:「…分かりました。それにしても、あの霊可愛かったですね。生前もあんな格好だったのでしょうか?微妙に制服違ってましたし…」


 彰:「霊の姿は魂の姿と言うから多分な、でももう死んでいる奴に身体を操らせるなんて御免だし、あそこから出られないみたいだし、見下して帰るのが、一番いい選択だよ。ともかく、今日の部活動終了、お疲れ様でした。普段は新たな七不思議を探したりするが、まずはこの学園の七不思議を紹介することにしよう。それじゃあ、お疲れ様でした」


 久美:「お、お疲れ様でした…」


 この時、私はうすうす感づいていました。


 私の学校の怪談は肩透かししかないという事に

次回7月7日予定

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