「名探偵コナン」のTVシリーズを見返したら、いつの間にか「少年探偵団」に戦慄する自分がいた
「名探偵コナン」と言えば誰もが知る大人気作品で、劇場版の興行収入は毎回数十億円を叩き出し、原作コミックスももうすぐ100巻に到達しようとしている。
個人的にも大好きな作品なので原作も全巻買っていて、劇場版も毎回観に行っているくらいだ。
さて先日、Amazonプライム・ビデオで今期のアニメをチェックしていると、コナンのTVアニメシリーズが観れると知り、懐かしくなって試しに一話を観てみた所……面白い!
今見返してみると「強引だな〜これは無理があるな〜」というトリックが散見されたり、中でも突然挟まれたアニメオリジナル回で「◯ー◯ーに毒を仕込み◯ー◯で解毒する」という凄まじいトリックに仰天したりもしたが、それもまあご愛嬌ということで楽しんでいた。
そしてアニメ12話に、「歩美ちゃん誘拐事件」という話がある。
これはコナンが小学校の同級生たちとかくれんぼをしている最中、友達の「誘拐されないか心配なほどの美少女」である歩美ちゃんが、どこかへさらわれてしまうという話なのだが……。
この回のコナンたちの暴れっぷりを観ていたら、それまで多少の矛盾や強引さも受け入れて楽しんでいたのに、いつの間にかコナンが同級生たちと組む「少年探偵団」の傍若無人ぶりに戦慄する自分がいた。
創作物なのだから、「これが現実なら……」などと難癖をつけるのはご法度だと重々承知しているし、コナンたちは小学生なんだから、子供らしく伸び伸びと過ごしてほしい。
のだが……。
そういった「純粋に物語を楽しむ気持ち」とは別に、自分の中では損害賠償の見積もりが始まるなど、ケチ臭いツッコミが次々浮かんで止まらなくなってしまった。
お恥ずかしながら、今回はそのツッコミを披露してみようかと思う。
きっと心の広い皆様であれば、「子供のしたことだから」と許容できる……はずだ……。
まずそもそも、「歩美ちゃん誘拐事件」というタイトルなのだが、実は歩美ちゃんはさらわれたのではなく、「かくれんぼで逃げるために自分から勝手に他人の車のトランクに忍び込んだ」のだ。
忍び込む前に、ピースをして「ラッキー!」とまで言っている。
申し訳ないが、この時点で大迷惑である……。
考えて欲しい、もし自分の車のトランクに勝手に子供が入り込んでいて、気づかずに餓死でもさせてしまったら、そしてそれがこちらの過失になってしまったら……。
たまったものではない。
でもまあ、子供のしたことだし、ねえ……。
また、冒頭で元太という少年が公園のゴミ箱に隠れているが、中に入っていた空き缶を派手に撒き散らしている。
お調子者の元太がちゃんと片付けたのか心配になる……。
ちなみにコナンも、新聞を読みながら居眠りをするお爺さんの膝上に隠れるが、お爺さんの新聞に指で遠慮なく穴を開けている。
穴を開けたそこ、お爺さんが読みたかった連載小説でも載っていたらどうするんだ?
自分だったら泣く。
でもまあ、子供のしたことだし……新聞くらい、まあ……。
そして、歩美ちゃんが忍び込んだ車がどこかへ出発してしまい、コナンたちはターボエンジン搭載のスケボーで追いかけるのだが……。
ここから先は多数の惨劇……もといアクシデントが起こるため、順番にご紹介したいと思う。
1. 歩道を高速で駆け抜ける
カッコよく爽快なシーンなのだが、車並みの速度で歩道を走行するのは危なすぎる。
万が一追突でもしたら、歩行者は少々の怪我では済まないと思う。
でもまあ、無邪気な子供たちですから……。
2. 米花大橋に向かう途中でゴミ袋を跳ね飛ばし撒き散らす
ちょっとでも分別ができていないとゴミを持って行ってくれない、手厳しい集積所にゴミを出す自分からすると、あのぶちまけられたゴミをもう一度きちんと詰め直さねばという気になり、ため息をついてしまった。
でもまあ、子供のしたことだから、ゴミくらい……。
3. 堤防を散歩中のおばちゃんと犬を轢きかける
ぶつからなかったからいいものの、激突していたら大惨事間違いない。
なにせ、直前のシーンであのスケボーは、川の水面を水切りのように滑り渡っているのだ、とんでもないスピードだ。
でもまあ、お互い怪我もなかったことだし……。
4 走行中の車に空き缶を投げつける
コナンが「アッハッハ! やっと見つけたぜ!」と笑い出し、空き缶を車に投げつける。
おいおい、もしこれを見た子供達が「怪しい車には空き缶をぶつけていい」と思ってしまったら大変なことになる。
というか車の運転手さん、車のスピードについてこれるスケボー、おかしいと思わないんですかね……?
でもまあ、「ガキのイタズラ」って運転手さんが言うなら、ね……。
5. 水撒きをしている珈琲屋さんのホースをぶんどる
立派な窃盗である。
しかも、ホースをぶんどられた珈琲屋の主人はかわいそうに、蛇口から噴き出した水でびしょ濡れになっている。
でもまあ、子供のためなら……。
6. 出前中の蕎麦屋のチャリンコに激突する
これは漫画でも印象的だったシーンだ、子供の頃に原作を読んだ時も蕎麦屋さんがいたたまれなかった。
激突される前の、せいろを積んで自転車に乗る蕎麦屋さんの朗らかな表情を見てほしい。
温和で善良な一般市民であろう彼は、配達先に蕎麦を届けようと真面目に働いている。
何の罪もあるはずがない。
しかし、次の瞬間高速スケボーに激突され、画面いっぱいに蕎麦はぶちまけられた。
蕎麦だけじゃない、あのスピードで激突された蕎麦屋さんの安否が心配で仕方がない。
でもまあ、子供のしたこと……。
7. バスの側面を走行し乗客もろとも傷をつける
車にホースを巻きつけ引っ張られたスケボーが、街を走る路線バスの側面を走行するアクロバティックなシーン。
当然バスの車体には傷がつくが、なんと乗客の顔にまで傷をつけたのだ。
バスの傷は塗装で直るだろうが、あの顔の傷は下手したら一生残ると思う。
ご愁傷様では済まされない。
でもまあ、子供の……。
8. 他人のヘルメットを蹴り飛ばす
「歩美逃げろ! くらえええーーー!!」
ついに犯人?と対峙したコナンが、たまたま居合わせたバイク乗りのヘルメットをキック力増強シューズで蹴り飛ばし、犯人にぶち当てる、実にカッコいいシーンだが……。
あのあの、そのヘルメット、他人のですよ?
これまでの流れからすると、ヘルメットは犯人に当たった瞬間粉々にでもなってしまうのではと心配したが、さすがにそれはなかった。
だが、そのヘルメットに当たった方は……。
9. 何の罪もない一般人を追い回した挙句KOする
見事、コナンの蹴ったヘルメットが、犯人?をKO!
一見落着、と言いたい所なのだが……。
ネタバレになってしまうが、この犯人?は実は何の罪もない一般人であり、むしろ勝手に車に乗り込まれ追いかけ回された挙句、親の仇のごとくヘルメットをぶつけられ、犯人?たちの「目的」にも多大な影響が出てしまった、言うなれば一番の「被害者」なのだ。
完全な冤罪だ。
あんな勢いで硬いヘルメットを顔面にぶつけられて、衝撃で歯が抜けなかったことがせめてもの救いだが、打ち所が悪くないか心配でたまらない。
10. 車のバックドアを凹ませる
さらに、ヘルメットは一度トランクのバックドアに跳ね返ってから犯人?に当たっている。
そのバックドアは酷いことに、ベッコリと凹んでしまった。
あの凹みは板金では戻らないから、たぶん丸々取り替えになるだろう。
頼むから毛利探偵事務所で弁償してやってほしいが、犯人?たちの自費修理なら悲しすぎる。
そうなったら自分にできるのは、修理代がなんとか一桁万円台で済むことを祈るだけだ。
知り合いの格安板金屋を紹介したいくらいだ。
そして最後、犯人?が「責任取ってもらおうか」と言い、コナンたちは「代役」を任されるというオチなのだが……。
はっきり言って、「代役」だけで責任が取れるレベルの損害ではないと思う……。
犯人?を始め、街中で被害にあった方々が不憫で仕方がない。
とまあ野暮なツッコミをしつつも、今後も原作も買うし劇場版も観るし、作品自体は変わらず愛でていきたい。
子供の頃ならコナンたち少年探偵団の活躍にキャッキャとはしゃいだが、こんな夢が冷めるような分析やツッコミをするようになってしまって、歳をとったものだ。
だが……。
もし、あの「少年探偵団」という集団が実在したら、あまり関わり合いにはなりたくないかもしれない……。