8話 初の戦闘
馬車を降りると、全員少しこわばった顔をしていた。まあそうだよな。俺だって初めてここに来た時は不安だったし、今ですら少し不安がある。それに加えて今回はAランク昇格のクエスト。失敗することができない。
(当然か......)
でもすぐソフィーだけが顔色を変えて話し始めた。
「私たちはギルドにクリアできると思われてこのクエストを受けたんだよ? だから前向きに行こ? それに今回からレオがいるんだからいつもより安全に戦えるって」
その言葉でミルシェとジャックの顔が先程より良くなった。
「そうだよな。少し気負いすぎてたわ」
「えぇそうね」
全員の雰囲気が良くなり始めて少し安心した。さっきの状況のまま森に進んでいたら多分いつも通りの実力の半分もだせない可能性があった。
(それにしてもすごいな)
ソフィーも緊張していたのに、一言でパーティの士気が上がった。きちんとリーダーをしているんだなと実感する。
「じゃあこの前のフォーメーションで戦うってことでいいよね?」
「あぁ。でも入る前に一つ言ってもいいか?」
すると全員が疑問そうな顔で俺を見てきた。
「一応、この森での決め事を話しておこうかなって思ってさ」
「了解。もし何か言いたいことがあったらレオが言ったことの後にみんなで言おう!」
ソフィーがそう言うと、みんな頷いた。そこから俺は漆黒の森でどのように立ち回るのかを話し始めた。【誰も死なないこと。もし強敵に会ったら真っ先に逃げる事。そしてできるだけ戦わないこと】。これが俺にとって最重要だったから伝えた。それを言い終えるとソフィーが少し怒った顔で言った。
「強敵って?」
「俺も話しか聞いたことがないけど、漆黒の森にはSランクモンスターがいるらしい」
すると全員が驚いていた。
「まあ漆黒の森自体がでかいから会うことは無いかもだけど、一応頭の中に入れておいてほしい」
「了解! それと私からも一つ。できるだけ戦わないってどう言うこと? 普通見つけたら戦わない? 先手を取られるのは戦闘においてやってはいけないことだと思うのだけど」
「一般的にはな。でも今回は俺はみんなを、みんなは俺の実力を知らないだろ? そんな中で毎回戦ったら体力的にきつい。それに加えて今回戦うのはAランクモンスターだ。俺は戦ったことがあるけど、みんなは無いと思う。そんな状況で戦ったら勝てる戦いも勝てなくなってしまう」
そう。体力がない状態で戦う事態で厳しい。それはこの前戦った時に全員が身に染みてわかっているはずだ。それに加えてみんなは戦ったことのない相手だ。それは情報がほとんどないってこと。人から聞いた時の情報より、自分が戦った時の情報の方が戦いやすいし、経験にもなる。だから今回は極力戦わない方針にした。
「そっか。わかったわ!」
「俺は何もないぜ」
「じゃあレオ! 道案内よろしくね?」
全員から了承を得てからソフィーに道案内を頼まれた。まあ頼まれなくても俺がやる予定だったし、言ってもらえると助かる。
「了解。一応はキメラがいそうな場所に向かうよ」
そう言って漆黒の森に入った。あたり一面濃い霧でおおわれている。
(前もこんな霧濃かったか?)
そう思いながらキメラがいそうな方に向かう。するとオーガ3体と接敵する。まあわかってはいた。戦わないように歩いていても見つかるのは時間の問題だったから。
「では話したフォーメーションで戦いましょう!」
「「「了解」」」
オーガとの戦闘が始まった。まずミルシェが1体のオーガの足を潰した。その一瞬緩んだすきを逃さずソフィーがオーガの首を斬り落とす。その時、オーガ2体がソフィーに殴りかかった。それを俺とジャックでカバーする。ソフィーの体勢が整うまで一旦防衛に徹する。そして一旦オーガと距離をとる。
するとオーガが身体強化魔法を使おうとしていたので、俺が魔法無効化する。そこにソフィーとジャックが息を合わせてオーガ1体を倒す。そしてミルシェが放った矢がもう一体の方の目を潰す。怯んでいるのを見逃さず、俺がオーガの脛を切ってから首を斬り落とす。
(すごい。うまく連携できている)
漆黒の森と言う場所であり、Bランクモンスターであるオーガ3体に対してスムーズに戦闘が行えていた。すると全員が安堵したような表情になりながら笑顔になり、ジャックが言う。
「やれるじゃん!」
「ね!」
「そうだね!」
「あぁ。一旦休憩して進もっか」
俺の提案にみんなが頷き、軽い反省会と雑談が始まった。
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