6話 パーティの方針
ソフィ―のところで泊る? いやいや、幼馴染とは言え無理だろ! 2人を見ると俺と同じく驚いた顔をしていた。
「あれ? なんか変な事言った?」
「ソフィ? 幼馴染だからって異性と一緒に泊まるって言うのはね。彼氏とかならまだわかるけど......」
すると顔が一気に赤くなる。
「違う違う! そうじゃないの。一緒の宿で泊まらない?って意味なの! 同じ部屋って意味じゃなくて......」
(あ~。そう言えばそうだったな)
前からソフィーは言葉が少し足らない時があった。だから昔から勘違いされる時がちょくちょくあって大変だったな。ここ最近一緒に居なかったから忘れてた。
「あぁ。じゃあその宿を教えてもらおうかな」
「うん! でも.......」
「ん? なんか言った?」
ごにょごにょ言っているが聞き取れなかった。
「何でもないよ! じゃあ行こっか!」
そう言って宿に向かった。すると全員が同じ方面に向かい始めた。
(あれ? みんな同じ宿なのか。まあ考えてみれば普通か)
パーティなら一緒の宿に泊まるのは当たり前のことだ。クエストの話をするときや、ギルドに向かう時に同じ宿なら行動しやすいからな。でもそれならもうちょっと言葉を選んでほしかったな。
宿に着いてすぐ部屋を取り、みんなと食堂に向かい食事をとる。
「改めて銀色の風にようこそ! レオ!」
ソフィーが突然言ったことに驚くが、二人も拍手で向かい入れてくれた。
「あ、ありがとな」
「うん! 明日、レオがきて初のクエストだけど頑張ろうね。一応はAランク昇格のテストで大変だとは思うけど」
「あぁ。まあ何とかなると思うよ」
俺がそう言うとみんな驚いた顔をした。
「え? なんで? まだ私たちはBランクだよ? どこからそんな自信が来るの? やっぱりSランクパーティにいた経験?」
「まあそうだな。それに後でキメラの話をするって言ったけど、キメラ自体は俺と相性がいいからね」
「そうなの! なんで?」
3人が興味深々で俺を見始めた。
「俺の職業ってわかる?」
「うん! 魔剣士だよね?」
「俺の固有魔法---魔法無効化で魔法をすべて無効化することができるんだ」
そう言うと全員が驚いた顔をした。俺ですらこの魔法を目覚めた時驚いたさ。でもロイドたちは俺が魔法無効化が使えると言っても信じてもらえず、あまつさえ使っていても使っていないと言われた。
(嫌なことを思い出したな)
「すごいじゃない! 私も一応魔法は使えるけど、分野が違うもんね」
「確かソフィーは聖騎士だよな?」
「うん! ちなみにミルシェが弓使いでジャックが戦士なの! 勧誘するときも言ったけど、銀色の風に魔法が使える人が私しかいなくて困っててさ」
まあ今の話を聞く限りそうだよな。戦士なんて魔法を使うことができないし、弓使いは後衛職かつ弓専門の魔法が使えるだけだ。聖騎士は一応は回復魔法が使えるが攻撃魔法があまり使えない。
「そっか。今後俺がカバーできるところはするよ」
「うん!」
「それで話を戻すけど、キメラは火、風属性の魔法が主な攻撃方法なんだ。だから攻撃魔法を魔法無効化で無効化しつつ4人で戦えば勝てると思う」
もう元パーティみたいな過ちは犯さない。勝てると思った戦闘には参加しない。そんなことはもうしない。みんなが俺を見捨てることがないとは思う。でも俺が戦うことで勝つ可能性が上がるなら戦うのが一番だ。俺がどれだけ負担を背負っても。
「そっか! じゃあ一応どのフォーメーションで戦う?」
「いつもはどんな感じなんだ?」
「いつもは私が後衛でサポートしつつ、ソフィとジャックが敵を倒すってフォーメーションです。なので私の意見としてはレオンには中衛に入ってもらいたいと考えています」
「あぁそうだな。レオンが中衛にいるだけで、前衛、後衛のサポートができる。それだけで安心感が違うからな」
俺も二人の言葉に納得する。俺が中衛をやればみんな安心して戦うことができる。前の銀色の風ならミルシェが危険な状況になりそうになったらソフィーかジャックがサポートしに行っていたと思う。でもサポートしに行ったら逆に前衛が手薄になる。だから俺がこのパーティに足りない部分を補うことができるってことだ。
「了解!」
「え? 私の意見はなし?」
少し笑いながら言ってきた。
(あ、そう言えばソフィーの意見を聞くの忘れてた)
「ごめんごめん。ソフィーは何か意見ある?」
「まあないけどさ!」
「「「ないんかい!」」」
「あはは~」
まあソフィーは前からこういう所があったからな。本当にかまってちゃんだな!
「じゃあ明日の朝出発でいい?」
「「「了解!!!」」」
全員が頷いて食堂を後にした。部屋に戻って明日のことを少し考える。さっき戦う方針が決まったが、まだみんなの実力を俺は知らない。それは向こうも同じだ。それにこのメンバーで初めてのクエスト。うまく連携できるか不安であった。
一応は覚悟を決める。俺を知らなくても仲間として迎え入れてくれたみんな。危機的状況になった時、そんな人たちを見捨てたりなんてできない。
(もしそんな場合になったら俺が......)
そう思いながら就寝した。この時はまだ俺の真なる実力に誰も気付いていなかった。
読んでいただきありがとうございました。