12話 スタンピード終了?
ナユートが空に放った黒い粒が破裂して消え去っていた。
(もしかして......)
そう思ったがあたり一面、先程と変わりがなかった。
(どうなっているんだ?)
戦った感じと同じ魔法だと思う。だとしたらここら辺一面は腐食し始めてもいいはずだ。それなのに現状、何も変化がない。俺の考えすぎならいい。このまま今まで通りの環境に戻ってくれれば。でもナユートのことだ、そんなはずはないだろう。それはロイドも同じだったようで
「さっき使われた魔法、何だったんだ?」
「わからない」
するとロイドが真剣そうな顔でこちらを向いてきて、俺に話しかけてくる。
「レ、レオン......」
「なんだ?」
そう言った瞬間、ソフィーやシャーロットたちがこちらに走ってきた。
(無事でよかった。でもモンスターは?)
まずは無事でよかった。でも一つ疑問に思う。俺とロイドはソフィーたちから離れてナユートの討伐に入ったが、シャーロットたちは違う。先ほどまでモンスターたちと戦っていたはずだ。それなのにこちらに来たってことはモンスターを討伐し終えたってことか? でも俺たちがあの場から離れた時ですら、数えきれないほどのモンスターがいた。それを倒したとは思えない。少し待ったところでソフィーたちが到着して、話しかけてくる。
「レオ大丈夫だった?」
「まあね......。そっちは?」
「なんかわからないけど、モンスターたちが引いていったんだよね」
モンスターが引いていっただって? そんなことがあり得るのか? 書物を読む限り、モンスターに意思はないと書いてあった。それなのにあの数が一斉に引いていくなんて......。そこで一つ頭によぎる。
(もしかしてナユートが消えたからか?)
このスタンピードはナユートが計画して起こしたもの。でもそんなことができるのか? 七魔将であろうとあの数を統一するなんて。でももしできるなら、スタンピードは自然にではなく、計画をもって起こせるのかもしれない。そう思った時、ゾッとした。
「そうなんだ......。でもまずはみんな無事でよかった」
「うん! それでそっちは何があったの?」
「それは後で話すよ。まずは拠点に戻ってみんなの安否を確認しよう」
俺がそう言うと、全員が頷いて拠点に戻り始めた。行きの道中と違い、帰りはモンスターが一匹も出てこなかった。目の前にあるのはモンスターの死体が多くあるだけ。
(本当に終わったんだよな?)
そして特にみんな話すことなく拠点に帰ったところで、冒険者たちを目の当たりにする。
(!!!)
こんなに減っていたのか.......。数時間前までの数分の一ほどになっていた。
(クソ......。考えが甘かった)
死なないように戦ってほしいと言ったのは、ただの希望的観測だったというのが今になって実感してくる。それほどスタンピードに対して考えが甘かった。一呼吸おいてみんなに言う。
「まずは戦闘お疲れさまでした。前衛でのモンスターが撤退していったので、全員が動けるようになったら、中衛部隊に合流しましょう」
そう言ったら、冒険者たちが歓声を上げた。
「俺たち勝ったんだよな?」
「そうだろ。スタンピードを潜り抜けたんだ」
「でもあいつは.......。クソが」
いろいろな声が聞こえてきながらも、比較的明るい声が聞こえてきた。そして俺たちも休憩を挟んでいる時、シャーロットが話し始める。
「これからどうするの?」
「さっきも言ったように中衛部隊に合流するよ」
「それはわかってるわ。その後のこと」
「.......。一旦は情報を共有しなくちゃ今後どのように行動していいかわからないから」
本当ならこの場所でモンスターの動きがあるか警備しなくてはいけない。でも現状、冒険者たちの体力状況や心理的状況を見る限り、そんなことできない。それにもともと後退していくのは決めていたことなので、ここに絶対いなくてはいけないわけでもない。
(後、あの魔法に関しても報告しなくちゃだし)
七魔将がいたこと。そして空に魔法を使われたこと。それを報告するのが現状の最優先だ。
全員で一日程休憩を入れた後、この場所から後退を始めて中衛部隊に到着した。すると血相を変えて戦闘態勢に入っていた。
「大丈夫なのか?」
「あぁ。それよりも情報共有したいから中に入れてくれ」
そう言って門を開けてもらった。そこからモンスターが撤退して言ったことなど、先日起こったことの説明を始めた。
「じゃあスタンピードは終わったってことか?」
「わからない。それよりも他のところがどうなっているのか教えてくれないか?」
「それが、昨日から情報が回ってこなくてな」
「じゃあ俺たち銀色の風が一旦街に戻って情報を聞いてくる」
一旦、中衛部隊の人たちと話しを終えて、一足先に街に戻っていった。
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