6話 国王との対話
俺やソフィーたちは茫然としているのに対して、竜人族の方々は平然としていた。
(事前に決まっていたことなのか?)
「レオンくんは嫌かい?」
「えっと......。誠に申し訳ございません。驚いていて何を言えばいいのか分かりません」
嫌かいと聞かれたが、状況理解が追い付いていないのに答えられるわけがない。
「そうか。じゃあ質問を変えよう。シャーロットのことはどう思っている? 可愛いと思うかい? 一緒に居て楽しいと思うかな?」
一緒に居て楽しいか......。そんなのわからないだろ。一緒に居たのなんて精々前回の護衛任務を含めても1ヶ月ほど。でもシャーロット様と一緒にいた1ヶ月間がつまらなかったわけじゃない。むしろ楽しかったと思う。
「もちろんシャーロット様は可愛いですよ。それに一緒にいた期間は楽しかったと思います」
「そうか。ならもう決まっているのではないか?」
「え?」
すでに決まっている? そんなわけない。なんせ結婚なんて考えたことがなかったんだから。
「生涯一緒に居る人を決める際、君は何を基準に考えるんだい? 私なら愛せるという気持ちとこの人となら一生暮らせると思う気持ちだ。それが先程聞いた可愛いという気持ちと一緒にいて楽しいかだと思う」
「でも可愛いとかなら他にも......」
「そりゃあいろいろ可愛いはあるさ。でも君が今持っている感情はそのような感情なのか? 私は違うと思う」
国王の言う通りだ。シャーロット様に対して思っている可愛いは、動物などに感じる可愛いとかではなくて、一人の女性としての可愛いだ。
「質問よろしいですか?」
「あぁ」
「なぜ竜人族の中からではなく、人族である私なのですか?」
まず聞きたかったことはこれだ。一般的に同種族と結婚するのがセオリーだ。ましてやシャーロット様はお姫様。そんなたいそうな存在が俺を選ぶ理由が分からない。
シャーロット様の方を向くと両手を顔に当てていた。
「本当ならシャーロットから言ってもらいたいが、今の状態を見ると無理そうだから私から言わせてもらう。まず君を選んだ理由はシャーロットからの推薦だ」
「......」
(シャーロット様が俺を推薦した?)
「君もわかっているとは思うが、シャーロットはこの国の王女だ。だから本当は他国との政略結婚もしくはこの国の貴族と結婚するのがセオリーだ」
「はい」
「でもシャーロットは第四王女であり、昔から制約をつけて生活させてしまった。だから男性のことを好きになることはおろか、苦手意識すら持っていた。それをレオンくんのおかげで解消することができたんだ。そしてその時、シャーロットから結婚したい人が居ると相談を受けた。親として子供が結婚しないのは選択にない。だからシャーロットからこう言ってくれて本当に嬉しく思っている。これがここまであった話だ」
「でも私は人族であり、貴族でもありません」
そうだ。もし俺が貴族だったら話は変わっていたかもしれない。でも俺は平民である。
「それもわかっている。でもレオンくんはエクセスト王国から推薦を出したSランク冒険者だ。見ず知らずな人物ならともかく、レオンくんにならシャーロットを任せてもよいと私は思っている」
「......」
「まあ今すぐに決めてくれなんて言わない。一つの選択肢として考えてくれ」
「はい。分かりました」
話が終わり王室を後にする。そして来客用の部屋に案内されて考える。
(婚約......)
考えたこともなかった。今まで彼女すらできたことの無い俺が結婚だなんて......。そう思っているところで部屋にノックされた。
「レオ今いい?」
「ソフィーか」
少し暗い顔をしながら部屋に入ってきた。
「うん。それで婚約はするの?」
「わからない」
今日言われて、すぐ「はい」なんて言えるはずない。
「そっか。でも結婚したら見返し方は違えど元パーティメンバーを見返せるんじゃない?」
「そんなことで結婚なんてしたくない」
「ごめん。でも私はいいと思うよ? シャーロット様は可愛いし、性格も悪くない。良い人じゃない」
なぜか泣きそうな顔で言っていた。
「今すぐには決められないから、ちょっと考えるよ」
「うん」
そう言ってソフィーは部屋を出ていった。そこから数日、シャーロット様と話した。あの時助けたから好きになったこともわかったし、好意も感じられた。それでも答えが出なかった。
でも時間は待ってくれなく、もう一度王室に呼ばれたので王室に向かう。するとソフィーを含め、全員が王室にいた。
(どう言うことだ?)
婚約に関しては俺の問題だ。それなのになんでみんなが呼ばれているんだ? すると国王とシャーロット様が話し始めた。
「まだレオンくんは答えが出ていないんだよな?」
「はい。申し訳ございません」
シャーロット様と話す時間までいただいたのに答えが出ていなくて、申し訳なく感じた。
「レオンにソフィアさん、ミルシェさん、ジャックさん。一つお願いをしてもよろしいでしょうか?」
「はい。なんでしょうか?」
「私も銀色の風に入れてはもらえませんか?」
その発言に、銀色の風全員が驚いた。
(シャーロット様が同じパーティに?)
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