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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
それぞれの新たな出会い

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第987話 トロール族のもう一つの特技

 闘技場もどきの更地から、トロール達の家々のある居住地区にシンラとともに移動したライト達。

 その道中で、様々な話をしていた。


「ところでシンラよ、お前のところでも武器を作ってたよな?」

「おう、あまり凝ったものは作ってねぇがな」

「今度我らの里でも、金属製の武器を購入する計画があるのだが。お前のところの武器も、購入先の候補に入れていいか?」

「お、そうなの? もし俺んところのを買ってくれるなら、いくらか値引きするぜ!」

「それは助かる」


 ラキとシンラの話は、オーガの里の防衛に関することだった。

 これはあまり知られていないことだが、一部のトロール族は金属加工に秀でていて巧みな鍛冶技術を持っているという。

 この里に住むトロール族も、金属加工はお手の物らしい。

 そして、武器の話を聞けばレオニスも黙ってはいられない。

 武器コレクターとしての血が騒ぐのか、早速ラキ達の話に参戦する。


「シンラ、ここではどんな武器を作っているんだ?」

「うちは主に棍棒と斧だな。他のも作れるっちゃ作れるんだが、俺達が日頃使うのは棍棒か斧ばっかだから、それ以外のものはあまり作らないんだ」

「そうなんか……そしたら、俺が使える大きさの武器ってのは作れるか?」

「ン? ……まぁ、作れんこともないとは思うが……棍棒とかでもいいんか?」

「そうだなぁ……とりあえず、トロール達の言う棍棒や斧がどんなものか、先に見せてもらってもいいか?」

「ああ、そしたら俺んちに来て見ていってくれ、両方ともあるからよ」


 トロール製の武器に興味を示したレオニスに、シンラも嬉しそうにニカッ!と笑いながら応じた。

 そして話は自然と武器の対価に移る。


「そしたら対価は何をもらえるんだ? ラキ兄んとこは、いつものように織物か?」

「そうだな。織物以外の品も行商で出せるよう、様々な品を開発中なのだが……おお、そうだ、さっきシンラが食したキュウリやトマトも近いうちに行商に持たせるつもりだぞ」

「えッ、そうなんか!? さっきのアレ、初めて食べる味ですんげー美味かったから、他のヤツらにも食わせてやりたい!」

「承知した。ならば先程の生食用以外にも、キュウリは漬けたものを、トマトは乾燥させたものを持たせるようにしよう。生食用はあまり日持ちしないが、漬けたり乾燥させれば長期保存が可能なのだ」

「マジ!? ラキ兄、ありがとう!」


 ラキの提案に、シンラが破顔しつつ大喜びしている。

 武器の対価がキュウリとトマトというのは不思議に思えるが、これも立派な物々交換である。

 そう、お金という貨幣で様々な品物を購入するのは、人族と人族の街に住む者達だけ。他の種族は物々交換が大前提なのだ。


 そして、先程までシンラは『メシなんてのは食えりゃいい』『ウマいマズいなんてどーでもいい』と言っていたが、ラウルが差し出した生食用キュウリとトマトを食べて本当に感動していた。

 きっと彼もラキ同様、美味しい食事というものの重要性を理解していくことだろう。


 ちなみにラキが物々交換で提案した、キュウリの酢漬けやドライトマト。これもまたラウルが伝授したものだが、キュウリとトマトの栽培自体は既にオーガの里でも行われている。

 今は季節的にもう厳しいが、夏の終わり頃にオーガの里内の畑の開墾が完了し、栽培を始めていた。

 ライト達のようにポーション・エーテルブレンド水こそ与えていないが、それでもカタポレンの森の魔力を吸い取るようにしてぐんぐんと育つ野菜は十分に巨大化し、オーガの里の食卓を彩っていた。


 そんな話をしているうちに、シンラの家に着いた。

 シンラが「ささ、皆入ってくれ!」と言いながら家の中に入っていき、ライト達も「お邪魔しまーす」と挨拶しつつ中に入る。

 客間と思しき部屋で待っていると、奥に消えていったシンラが遅れて客間に入ってきた。シンラの腕には何かが抱えられている。


「お待たせー!これがうちで作ってる棍棒と斧だぜ!」

「うおッ……こりゃすげーな」


 地べたに座りながら、腕に抱えていた武器類をドサドサと置き広げる。

 シンラが言う棍棒とは、見た目はほぼバットのような棒状の棍棒に、無数の棘がまるで剣山のようについている。

 それは紛うことなき『鬼に金棒』の金棒で、見た目の厳つさはもとより無数の鋭い棘の凶悪性が半端ない。


「こ、これはちょっと……振り回すには危な過ぎるな……」

「まぁなー、これが敵に当たるとほぼ挽肉になっちまうし」

「なら、これはどういう時に使うんだ?」

「ンー……見た目だけで敵をビビらせるのと、後は熊の肉を挽肉にする時用?」

「そ、そうか……」


 シンラが持ってきた金棒、そのあまりの極悪な絵面にレオニスがかなりドン引きしている。

 その大きさはトロールサイズなので、大きさによる圧の増大は否めない。だが、もしこれが人族サイズになったとしても、凶悪さをマシマシにした釘バットにしかならない。

 こんな物騒なもんを表に出して持ち歩いた日には、いくら俺でも警備隊にとっ捕まるわ…………レオニスは心の中で震え上がる。


 一方、金棒の横に転がっている斧の方はまだマシに見える。

 それは人族が使う斧とほぼ同じ形状をしていて、金棒のようやトゲトゲももちろんついていない。

 これを人族サイズにしてもらえるなら、レオニスでも普通に使えそうだ。


「ンー……そしたら今度、人族の俺が使える大きさの斧を一本作ってもらえるか?」

「いいぞー。人族用の斧なんて作ったことねぇが、身体の大きさを変えりゃ作れんこたねぇだろうし」

「よし、交渉成立だな。そしたら斧の対価というか、報酬は何がいい? 俺で出せるもんなら何でも出すが」

「そうだなぁ……つーか、俺、人族がどんなもんを持ってるか知らねぇんだよな。番人は何を出せるんだ?」


 斧を作ってもらう承諾を得たレオニス、パァッ!と明るい顔になりながらシンラの求める対価が何かを尋ねる。

 しかし、シンラを始めとしてここのトロール族は人族と交流したことなど全くない。故に人族が何を持っているのか、何を対価として差し出せるのかを全く知らなかった。

 シンラの尤もな返しに、レオニスが呻りながら考え込む。


「ンーーー……そしたら、武器のもとである金属を多めに渡す、ってのはどうだ?」

「え? 番人、金属持ってんの?」

「おう、鉄はもちろん金銀銅に真鍮、アルミニウム、ミスリル、オリハルコンもあるぞ」

「え、え、何その聞いたことのない名前。俺、鉄と金銀銅くらいしか知らんよ!?」


 レオニスが提案した金属提供に、シンラがポカーンとしたような顔でレオニスの顔を見つめる。

 この近辺には鉱山や鉱床はなく、金属の調達は何気に難易度が高い。

 シンラ達トロール族も、武器や装飾品、実用品などで金属加工品を作る際には、他の種族との物々交換で得た金属塊を使うくらいだ。

 そのため、シンラが知る金属とは、鉄と金銀銅の四種類しか知らない。


 そして、この辺で金属が採れないことはレオニスも承知している。

 だからこそ、武器の材料提供兼報酬として『金属を多めに渡す』とこを提案したのだ。

 シンラの驚愕の反応を見て、レオニスがさらに畳みかける。


「何だ、真鍮やアルミニウムを見たことがないのか。そしたら、鉄と金銀銅以外の金属もいくつか出そう」

「そんな珍しいものをもらってもいいのか!?」

「ああ、いいとも。シンラ達にとっても初めて見て触る金属なら、弄るだけでも楽しいだろうし勉強にもなるだろう」

「そりゃありがたい!是非とも頼む!」


 未知の金属を譲ってもらえることに喜びするシンラに、レオニスは早速空間魔法陣を開いて金属塊をザラザラザラ……と出していく。

 シンラの前に、鉄、金、銀、銅、真鍮、アルミニウム、ミスリル、オリハルコンの塊がそれぞれ積み上げられた。

 もちろんそれらは全て、ライトとともに採掘した幻の鉱山産の金属類である。


 レオニスが幻の鉱山で採りたいのは主に水晶であり、他の宝石なども時折利用してはいるが、金属類に関してはヒヒイロカネやオリハルコン以外はほぼ手付かずのまま。

 なので、ここで大量にトロールに譲渡しても全く問題ないのである。


「……おおお……」

「とりあえず、これくらいあればいいか?」

「おう!これだけありゃ十分だぜ!」

「そうか、なら良かった。これでいろいろと遊んでみてくれ」


 その後レオニスがシンラに、この黄色いのは真鍮、白っぽいのはアルミニウム……とそれぞれの金属の名称を教える。

 シンラは基本的に頭が悪いが、鍛冶に関することとなると話は別だ。

 とても真剣な表情でレオニスの解説を聞き、名前だけでも一生懸命覚えようとしている。


 そうしてレオニスが出した金属塊の一通りの解説が終わり、シンラが改めてレオニスに礼を言った。


「番人、ありがとう!こんな面白そうなもんをくれて感謝するぜ!」

「遊んでばかりじゃなくて、俺の斧もちゃんと作ってくれよ?」

「もちろん!任せとけ!」


 シンラからスッ……と大きな手が差し出される。

 レオニスもすぐに手を差し出し、その大きな手を握る。

 殴り合いの手合わせとはまた違う、文化的な交流が人族とトロール族の間で生まれた瞬間だった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 その後シンラと数人のトロール達に見送られ、トロールの里を後にしたライト達。

 今日のお出かけの予定は全て完了し、後はラキとともにオーガの里に帰るばかりだ。


 ウィカの水中移動のために、ライト達は巌流滝に向かう。

 まだ空は青色が強いが、程なくすれば茜色に染まっていくだろう。


「さ、後はオーガの里に戻って皆でいっしょに飯を食うだけだ」

「もう宴の用意はできてるかな?」

「リーネが率先して指揮を取っているだろうから、それなりに準備は整っているだろう」

「リーネさんも何気に料理上手だからな、リーネさんに任せておけば安心だろう」


 巌流滝に向かう道すがら、早くもオーガの里で催される宴に思いを馳せるライト達。

 途中でライトが預かっていたラキの外套を返却し、ラキも改めて外套をまとって正装に戻る。

 正装で出かけたのだから、帰還する時も正装で帰らなくちゃね!という訳である。


 そうこうしていくうちに、巌流滝に辿り着いたライト達一行。

 ウィカがいつものように水面の上をトトト……と歩き、ライト、レオニス、ラウル、ラキの順で手を繋いでいく。

 ちなみにラキ以外は全員巌流滝の滝壺の上に立っている。


「ウィカ、オーガの里の溜池までよろしくね!」

『任せてー☆』

「ウィカもいつもありがとうな」

『大丈夫大丈夫、皆のためだもん!』

「またお礼のご馳走するからな」

『楽しみにしてるねー♪』

「もしよければ、ウィカも我らとともに今宵の宴に来てくれ」

『えッ!? ボクも皆といっしょにご馳走になっていいの? ラキ君、ありがとー☆』


 ウィカに礼を言うライト達に、ラキからも今からオーガの里で催される宴に誘われたウィカ。一瞬だけ糸目を大きく見開いた後、いつも以上に目を細めてニッコニコの糸目笑顔になる。


『さ、じゃあ今から皆でオーガの里に戻るよー☆』


 ウィカは合図を出すとともに、ライトの手を握り水中移動を発動させる。

 ライト達一行は巌流滝の滝壺の中にスルッと溶け込んでいき、オーガの里に戻っていった。

 トロールの里で過ごす、この日最後の回です。

 第971話から始まった、ギッチギチの過密スケジュールの日曜日。16話で完了って、案外早くに終わったわね?と思う作者の感覚は何かしら麻痺してるような気もしますが。多分気のせいでしょう。キニシナイ!(・з・)~♪


 そして、トロールが金属加工が得意というのは、もちろんWikipedia先生からの情報です。

 トロールというのは北欧の国々に伝わる妖精の一種なので、地域によってかなり特性が違うんてすよねー(゜ω゜)

 ハイファン世界で鍛冶の名手と言えば、言わずもがなドワーフ一択なのですが。スカンジナビア半島のトロールは鍛冶に秀でているそうなので、ドワーフ未登場の拙作ではドワーフより先にトロールを鍛冶の名手にしちゃえー!と相成りました。


 何はともあれ、ライト達の日曜日のお出かけはこれにて完了です。

 シンラ他トロール族も、またそのうち出てくるでしょう。

 というか、阿呆の子系が微妙ーに増えていますが、書いている作者としては阿呆の子を書くのが楽しくて楽ちんなんですよねぇ。

 それは多分作者自身が阿呆の子系で、阿呆の子達が言いそうなこと、考えそうなことが手に取るように分かるからでしょうね(´^ω^`)

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