第981話 兄貴分と舎弟
昨日一昨日と作者のコロナワクチン接種のお話をしていましたが、残念なことに副作用の発熱が出てしまいました。
なので、今日は文字数3000字弱とかなり少なめとなっています。
申し訳ございませんが、ご了承の程よろしくお願いいたします。
トロールの若者に案内され、里の中心部に向かうライト達。
その途中、他のトロールとすれ違う度にラキに声がかけられる。
「おお、ラキさん!久しぶりだな!」
「族長に会いに来たんか?」
「うちにも寄っていってくれよ!」
皆ラキに向けて親しげに話しかけてくる。
もちろんラキも、その都度「久しいな」「ああ、たまにはあいつの顔も見ておかないとな」「また今度寄らせてもらおう」等々丁寧に返している。
その中の一人が「俺がひとっ走りして族長んとこに知らせてくるわ!」と言いながら、バビューン!と駆け出していく。
そして程なくして、その者とともにシンラが走ってきた。
「おおおおッ!ホントにラキ兄だーーーッ!」
花咲くような満面の笑みで、ラキ目がけて突進してくるシンラ。
そして右手を思いっきり振り上げたかと思うと、ラキに向けて勢いよく振り下ろすではないか。
え!? まさか出会い頭にぶん殴るの!? あまりにも突拍子もないシンラの行動に、思わずライトはヒョエッ!と小さな悲鳴を漏らし目を瞑ってしまう。
だが、当のラキは全く動じることなく、斜め上を見上げながら左腕でシンラが振り下ろした腕を受け止めた。
ガシンッ!という激しい衝撃音の後、二者の動きがしばし停止する。
目線は互いの目をじっ……と見据えつつ、眉を顰めて睨みつける。
こ、これは、ラキとも戦闘になるのか!?と思ったその時。
両者がニヤリ……と不敵な笑みを浮かべた。
「……ラキ兄、相変わらず腕っぷしが強ぇな!」
「当たり前だ。まだまだお前に負けてなどおれんからな」
歯を見せ合いながらニカッと笑うラキとシンラ。
後で聞いた話によると、この『互いの腕を交差させるようにぶつけ合う』というのが、トロール族ならではの挨拶らしい。
そんなの、普通の人族が食らったら普通に吹っ飛ばされて死んじゃうじゃん?とか思わなくもないのだが、そもそもこのカタポレンの森の中に人族がいるという前提自体が普通は成り立たない。
故に、そこら辺の考慮は一切なされていなかったりする。
そして、久しぶりに会えたことでシンラはもちろんラキもとても嬉しそうだ。
自分より背の低いラキの背中に手を回し、肩を組むようにして話しかける。
「つーか、ラキ兄に会うのなんて、ホンットに久しぶりだよなぁ」
「ああ、二十年か三十年ぶりくらいか?」
「それくらいなるかなぁ……ラキ兄が族長になってからは、あまり遠くに出かけなくなったもんなー」
「まぁな。我とて守るものが増えたのだ、昔の独り身の頃のように好き勝手することは許されぬ」
「ラキ兄、そこら辺ホンット真面目だよなー!……てゆか、その履物、随分カッコいいな? ラキ兄、今日は気合い入れて洒落てきたんか?」
ラキとシンラは、五十年以上前からの知り合いにして兄貴分と舎弟という間柄。
双方とも昔を忍びつつ再会を喜び合う。
そんな中で、シンラの方がいつものラキと着るものが違うことに気づいたようだ。
実際外套は走る時に脱いでいて、今は着用していない。だが外套以外の部分、前垂付きのズボンやロングブーツはそのままなので、確かに普段のラキの格好よりも格段に高貴な出で立ちなのだ。
「ン? ああ、これはオーガ族族長の正式な衣装の一部だ。今日は大神樹ユグドラシアにお目通りしたのでな」
「え"!? ラキ兄、大神樹に会ったのか!? いいなー、羨ましいー!俺なんて、遠くから頭の葉っぱ部分を見るだけしかできねぇってのに!」
「シンラもそのうち大神樹にお目通りが叶うさ。八咫烏族との交流が順調に進んでいけばな」
「あー、それな!ラキ兄のおかげで、八咫烏達とダチになれたんだったよな!ラキ兄、ホンットありがとう!」
ラキが大神樹ユグドラシアに会ったという話を聞き、シンラがものすごく羨ましがっている。
シンラがいるトロールの里も、ユグドラシアが見える範囲内のご近所さん。できることならば、大神樹に直接会って話をしてみたい!と思うのは当然のことだ。
だが、その願いはこれまで叶わなかった。今まで八咫烏の里は完全鎖国状態で、他者が大神樹のもとを訪ねる余地など全くなかったから。
しかしそれも、今は状況がかなり変化した。
八咫烏達は外の世界を見る決心をし、その第一歩として近所のトロール族との交流を始めた。
トロール族と八咫烏族の交流が円滑に進めば、いずれはシンラ達トロール族も大神樹に会える日が来るだろう。
その喜びに、シンラがラキの手を取りブンブンブブブン!と上下に激しく振っている。
喜怒哀楽の表現がド直球の弟分の喜びように、ラキが苦笑しつつ応える。
「……ま、お前も八咫烏族との外交頑張れよ」
「ン? ガイコウって、何だソレ? 美味しいのか?」
「…………ダチとして、八咫烏族とも仲良く付き合っていけるように頑張れよ、ということだ」
「あー、そゆことね!それなら俺にも分かるわ!うん、俺もラキ兄を見習って、族長としてこれからも頑張るぜ!」
ラキが発した『外交』という言葉が理解できなかったシンラ。相変わらず食べ物と勘違いする癖は健在のようだ。
がっくりと項垂れたラキが、噛み砕いた言い方に直してようやくその真意が伝わると、シンラは満足そうな笑顔で張り切っている。
「そもそも八咫烏族との交流は、我がその仲を取り持ったのだからな? 紹介した我に恥をかかせるような真似だけは、絶対にするなよ?」
「おう!俺だって、数いるラキ兄の弟分の中でも最強を誇る一番の弟分だ!ラキ兄に恥じない族長になってみせるぜ!」
「「「……(数いる)……?」」」
シンラの成長を願うラキの激励に、シンラも己の胸を拳で叩きながらエッヘン☆とばかりにふんぞり返ってその期待に応える姿勢を見せる。
だが、ライト達の耳にこびりついて離れないのが『数いる』というシンラの言葉。これは、シンラ以外にもラキの弟分が複数いることの証左である。
トロール族族長のシンラがラキの弟分と知った時も、皆かなりの衝撃を受けていたというのに。果たしてラキには一体、何人の舎弟がいるのだろうか?
そんなライト達の視線に気づいたラキ。
ギクッ!と慌てたように小さく飛び上がった後、これまた慌てたシンラの方に向き直る。
「と、とりあえずだな……今日は大神樹にお目通りする際に、ここに連れてきてくれた我の大恩人達とともにシンラを訪ねたのだ。できればシンラも、我の恩人を見知っておいてもらいたくてな」
「ン? ラキ兄の大恩人? どこどこ、どこよ?」
ラキの言葉に、シンラが懸命に周囲をキョロキョロと見回している。
そしてシンラの目に留まったのは、赤いロングジャケットを着たちっこい人族と、同じく黒い燕尾服風ジャケットを着たちっこい人族もどき、そしてその二人よりももっともっとちっこい人族の子供だった。
トロールの里でのシンラとラキの邂逅です。
いつもなら、もうちょい先まで話を進めるところなのですが。作者のTwitterや前書きにも書きました通り、残念なことにコロナワクチン接種の副作用で発熱してしまいました。
くッそー、四回目の時はなーも副作用出なかったのに……朝に37.1度、今現在は38.3度とそこそこHOTに煮えております><
……でもまぁね、発熱なんて言ってもね、40度越さなきゃいいのよ!ㄟ( ̄∀ ̄)ㄏ
実際作者は40度を超えた発熱を経験したことがありますが、あれはマジキツかった……身体の芯どころか、表面の皮膚を触られただけで激痛走りましたからねー(゜ω゜)
まぁ、何はともあれ今回は副作用出てしまいましたので、明日までおとなしく布団で寝ることにします。明日には熱が下がっていますように!




